銀魂 | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -



05


「ハァ…。」


本日29回目のため息をついた彼………真選組観察員、山崎退は悩んでいた。
原因は先日、桂の行方を追っていたときに出会った女性にある。
彼女からもらった桐には電話番号と彼女の名前が書いてあった。
あれからというもの、脳裏に浮かぶのは彼女の顔と声と胸ばかり。仕事も手につかないほど気がかりでしょうがなかった。
桐に書かれている電話番号を見ては、携帯電話を片手に葛藤を始める。


「〜〜〜ッ」


1番始めの番号をうったかと思うと、そのまま携帯電話を放り投げて頭を抱える。
これを少なくとも10回は繰り返していた。










「あ?山崎の様子がおかしい?」


タバコに火をつけてどうでもよさそうに聞いたのは、真選組副長、土方十四郎。


「そうでさァ。」


頷いたのが真選組一番隊隊長、沖田総悟。


「知るかンなもん。つーか仕事しろテメー。」
「おかしいって具体的にどんな感じなんだ?」
「アレ何でアンタここにいんの?」


そしていつの間にか話に参加してるのが真選組局長、近藤勲である。


「携帯電話片手に項垂れてんでさァ。あ、あとピンクのハンカチ眺めてたな。」


沖田はどうもここ数日の山崎の行動がおかしいと感じていた。
仕事をサボって休憩所に行けば山崎が1人でお茶を目に入れてたし、仕事よりも好きなはずのミントンを最近は全くやってない。
そしてこの間、山崎の部屋をのぞいたときに冒頭のような光景を目にしたのだ。


「何ィィ!?そりゃお前、女の子にメールに決まってんじゃん!しかも『あっ鼻血が…どうぞ私のハンカチを使ってくださいまし』というパターンじゃねーかァ!」


それを聞いて過剰に反応したのは近藤である。
彼の言う「パターン」というのは、おそらくよくある恋愛ゲームでのことを言うのだろう。しかもあながち間違いではない。


「マジでか。邪魔してやりましょーぜ。」
「よォーーーしのった!」
「テメーら仕事しろォォ!!」


ただでさえ女に縁が無い真選組で、しかも下っ端の山崎の色恋となれば、イタズラ好きの沖田が興味を持たないはずがない。
近藤もやる気満々で2人して仕事ほったらかしで山崎の部屋に向かってしまった。









「オイ山崎何してんでィ。」
「!? お、沖田隊長!べっ別に何も…」


休憩所の隅っこでやはり携帯電話とにらめっこしていた山崎に、沖田が後ろから近づいた。
山崎は大きく肩をすくめて振り返り、慌てて持っていた携帯電話と桐とハンカチを背後に隠した。


「今後ろに何か隠したろィ。見せてみなァ。」
「ななな何も隠してませんってば!」
「いーや隠したね。俺は見ましたよ、この目で。」
「局長ォォ!?ちょ、何なんスか2人して…」
「いいからそのハンカチ見せてみろって。」
「電話はしたのか?」
「何で知ってんのォォオ!?」


結局山崎は2人から逃げることはできず、ためらいがちに両手に持っていたものを差し出した。
やはりハンカチはピンクの女物。いい匂いもする。近藤の読みは当たりだ。
ハンカチの中には少々不釣合いな桐がくるんであった。沖田がそれを手に取って見てみると、どうやらそこに連絡先が書いてあるらしい。


「名字名前……コイツァ……」
「し、知ってるんですか沖田隊長!?」


電話番号の隣に書いてあった名前を見て、沖田が意味深に呟いた。


「紅猫でィ、紅猫。」
「あかねこ…?」
「知る人ぞ知る飛脚でさァ。何でも走って届けてくれるっつー話でィ。」
「走って!?」
「評判はなかなからしいですぜ。」


飛脚としての梨子の評判は沖田の言うとおりなかなかである。
ただ自営なもので、一般には知られていないが業界や一部の人間の間では有名らしい。
沖田も以前誰かから聞いて少し興味を持ったのを覚えている。


「そんな女性といつの間に知り合ったんだ!?」
「その………池田屋の時に…」
「……ザキ……職場に恋愛を持ち込むなんて武士として恥ずかしいと思わんのか!!」
「近藤さんも持ち込みまくりでさァ。」
「俺にも紹介しなさい。あ、別に俺にはお妙さんがいるんだけどね!一応部下の相手にも挨拶ぐらいな!」
「い、嫌ですよ!ていうかまだ電話してないし…」
「なんだ、まだ電話してなかったのか?」
「これだからお前は山崎なんでィ。」
「産まれた時から山崎なんですけど。」
「貸しな。俺がかけてやるよ。」
「ちょっ、沖田隊長!」


いい加減優柔不断な山崎から携帯を奪って、沖田は軽い手つきで桐に書いてある番号を押していく。


「あーもしもし?今度の日曜暇ですかィ?」
「ちょっとォォオ!!?」


山崎が携帯を奪い返せたのはしっかり電話が繋がった後だった。
しかも沖田がいらんことまで言ってしまっている。名前も名乗らずにいきなり誘うというのはいかがなものか。


『誰?チョルさん?』


チョルさんという人物が少し気になるが、電話越しに間違いなくあの時の彼女の声を聞いて山崎は緊張のあまり姿勢を正した。
このまま切ってしまうのは失礼だし何よりもったいないので、とりあえず山崎は自己紹介をしようと思った。
携帯を奪われた沖田はいつの間にかイヤホンを繋いで近藤と片方ずつ、会話を盗み聞きしている。
緊張しまくっている山崎は気付いていない。


「あっ、あの、この間池田屋の階段でぶつかった……」
『…あの時の!本当ごめんなさい!あれから大丈夫ですか?』
「はいッ大丈夫です!」
『よかった!それから日曜、暇ですよ。』
「あ、いやそれは…」
「アホヤロー断るヤツがあるか。」
「行ってこい!ただし手を繋ぐまでだ!」


ここで2人が会話を盗み聞きしてたことに気付いて「コノヤロー」と思ったが、曲がりなりにも協力してくれてるような気がして
少しだけ、山崎は2人に感謝した。実際にこの電話だって、沖田がかけてくれなければ自分では一生かけられなかっただろう。
ごくりと息を飲み込んで、それから勇気を振り絞って声を出した。


「……一緒に、おおおお茶でも…、どうですか!?」




next≫≫
≪≪prev