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32:ペットの管理はしっかりと



「……」


今の土方の状況。白目を剥いて空いた口からタバコを落とした。
手には手錠がかけられ刀を抜くことさえできない。名前は障子に寄りかかって眠っている。
そして周りを取り囲むのが全長2メートルほどの無数のゴキブリ。
そう……、つまり絶体絶命のピンチである。


「うぉおぉおおい名前テメー起きやがれ!ホントは起きてんだろ!?んまい棒やるから起きろって!!」


両手の自由がきかない今の土方にとって、唯一の頼みの綱は名前しかいなかった。
しかし本人は昨日飲みすぎたらしく、土方の呼びかけも空しくピクリともしない。
その間もジリジリとゴキブリが迫ってくる。土方はもちろん、寝ている名前だって相当なピンチだ。


「!」


そしてついに一匹のゴキブリが名前に襲いかかろうと平たい体を持ち上げた。
咄嗟に土方は名前の前に立ち、次の衝撃に備えた。


ドサッ


「!?」


が、いつまで経っても衝撃は訪れず、何かが飛ばされる音がした。
恐る恐る目を開けてみると、すぐそこまで迫ってきていたゴキブリたちが庭の向こうに倒れているではないか。
もちろん土方は何もしていない。……となると、彼女しかいない。


「目覚め最悪なんだけど。」
「名前!」


背後で寝ていたはずの名前が刀を片手に立っていたのだ。その姿がキまっているのなんの。
よくあるドラマなどではこういう時、ピンチを救ってくれるのは男なのだろうが、今の名前は男も顔負けなくらいかっこいい。
しかし名前は眉間に皺を寄せてかなり不機嫌そうである。
ただでさえ名前は寝起きが悪いのに加えて、起きたら巨大ゴキブリの大群……清清しいわけがなかった。
確かに名前はゴキブリが苦手ではないが、かといって好きなわけでもない。
それがうじゃうじゃ自分を取り囲んでいるのだから、気分が悪くて当たり前だ。


「土方、今の状況を10字以内で説明して。」
「巨大ゴキブリが出た。」
「そんなの見りゃわかるわよ馬鹿にしてんの?」
「10字で説明できるわけねーだろ!!」
「あぎゃァァアアアア!!」
「「!」」


名前が動けない土方の代わりに次々とゴキブリをなぎ倒していると、どこからか悲痛な叫びが聞こえてきた。
屯所内であることは間違いない。そしてその声の主が誰なのか、名前と土方にはすぐにわかった。


「「近藤さん!」」


近藤とは2人とも長い付き合いだ。声を聞けばすぐにわかるし、第一こういう役回りといえば近藤である。
2人は真っ先に厠へと急いだ。…こういうときはだいたい厠だからだ。


「助けてェェェ俺食ってもうまくないし!腹壊すしィィイ!!」
「近藤さ……ッ!!」


厠につくと、一つの個室トイレにゴキブリがわらわらと集まっていた。声からもしてその中に近藤がたてこもっていると思われる。
厠全体にゴキブリが密集しているため、名前も土方も勢いよく来たはいいがそれ以上足を踏み入れることができなかった。
…というか、気持ち悪いので入りたくなかった。


「その声はトシィ!助けに来てくれたのか!?勲感激ィィイイ!!」
「………間違えました。」
「ってぇえぇええ゛!?間違えてないよ!間違えてないから名前ちゃンン!?勲はここですよぉぉ!?」


いろいろ考えた結果、名前は近藤の救助より自分の身の安全をとった。
土方も近藤を助けたいのはやまやまだが、両手の自由がきかない今、成す術もない。


「土方さん邪魔ですぜィ。」
「は…」


ピシューーー


土方が心の中で近藤に謝罪して踵を返したときだった。
沖田のテンションの低い声と同時に、土方の顔にものすごい勢いで何かが噴出された。


「ゴホッ…総悟テメッ、何しやがる…!」
「だから言ったのに。」
「思いっきり狙ったよな!?」


晴れた煙の向こうからはしれっとした沖田の顔。
名前の部屋にゴキブリを退治しに行ったまま音沙汰がなかったが、どうやら超強力の殺虫剤を買いに行っていたらしい。
沖田がトイレに群がるゴキブリにそれを噴射すると、ゴキブリはたちまち動かなくなっていった。


「近藤さーん、もう大丈夫ですぜ。」
「…ほ、ホントに?」


トイレ内のゴキブリが全滅すると、個室から近藤が恐る恐る顔を出した。
床中に転がるゴキブリに多少ビクビクしながらも、なんとか名前たちのいるところまでたどり着いた近藤。


「名前ーー怖かったよォォオ!!」
「これどーいうこと?何が起きてんの?」


いい歳して泣きながら抱きついてきた近藤には何の反応もせず、名前は沖田に聞いた。


「なんでも違う星から来た巨大ゴキブリらしいですぜ。背中に五郎って書いてあるゴキブリを退治しないと地球は終わるとのことで。」
「……」
「まるで誰かのペットみたいね。」
「……」


その後、無事に五郎ゴキブリは退治され、地球は救われた。







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