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31:むやみに殺生してはいけない



「オイ名前テメー今何時だと思ってやがる。さっさと起き……………」


いつものごとく勤務時間なんておかまいなしで寝ている名前を土方が起こしにきた時だった。


バタンッ


土方は名前の部屋の中を見て数秒固まったあと、懇親の力をこめて障子を閉めた。


「落ち着け俺。アレはなんか……アレだ、幻覚的な………そう、アレだ。」


障子を閉めた後の土方はまだその前から動いていなかった。というか、動けなかった。
別に名前の身に何か起こった…というわけではない。名前は普通に仕事そっちのけで寝ていた。異変は名前の周りで起きていたのだ。


「………」


そ〜っと、もう一度、少しだけ障子を開けて中をのぞいてみた。
周りから見れば覗きをしているように見えるが、今の土方にそんなことを気にしている余裕はない。


「………」


土方は中にいるものを確認してゴクリと唾を飲み込んだ。
やっぱり、いる。そう……黒くて油ギッシュな、アレが。ぐっすり眠っている名前に今まさに襲いかかろうとしている。


「うぉぉおおおおい!!」


ヤツの触覚が名前に触れる前に、土方はものすごいスピードで布団の中の名前を担ぎ、部屋の外に出て、壊れる勢いで障子を閉めた。
その間1秒にも満たなかっただろう。とにかくすごい速さだった。


「ハァ、ハァ……。」


呼吸を整えて担いだ名前を見てみると、のんきなことにまだ寝ている。


「オイ名前、起きろ。」
「んー……やだ…」
「オォオイ!返事したってことは起きてんだろ!?」
「起きてないし……」
「いや起きてる!!」
「ちょ、うるさい昨日飲みすぎた……」
「知るかァァアア!!」


バンッ


「………」


土方と名前がもめている(というか土方が一方的に名前に怒鳴っている)と、名前の部屋の障子が外れた。
恐る恐る外れた障子の先を見てみる土方。そこにはやはり、黒くて油ギッシュなアレが立っていた。


「ああぁあぁぁああ゛ッ!!」


土方は考えるよりも先にまず逃げた。土方の気もしらないでスヤスヤと眠る名前を担いで、全力で逃げた。


『みんなァァ!土方さんが眠ってる名前さんをムリヤリィィ!!』
「ちげーーわァァアア!!」


そんなところをサボりにいく途中の沖田が発見。
確かにそう見えなくもないが、断じて違う。緊急事態というやつだ。
後ろを振り返って何も追ってこないのを確認してから、土方は名前を廊下に下ろした。


「オイ総悟、名前の部屋にゴキブリが出た。」
「言い訳ならもっと上手いの考えろよ土方。」
「言い訳じゃなくてだな……ってアレ?何この手錠?」
「ぐすっ……土方さん、ムショ行っても元気で……」
「行かねーよォォオ!?」


いつの間にか土方の両手は流れもしない涙を拭う沖田によって手錠で繋がれていた。
沖田の中ではもう土方は痴漢容疑で逮捕された、ということで出来上がってるらしい。


「だいたいゴキブリなんて、名前さんなら寝てても退治できやすぜ。」
「普通のゴキブリなら…な。」


ゴキブリなんて江戸に住んでる以上、一生付き合っていかなければならない生物だ。
そんなのでいちいち逃げ出していたらキリがない。そんなの、江戸に住んでる土方だってよく知っている。
しかしそれは普通のゴキブリの話で、土方が見たゴキブリは普通のゴキブリではないのだ。


「いいから総悟、退治してこい。」
「…わかりやした。」


沖田が土方の言うことを素直に聞くのなんて珍しい。


「ってちょっと待てこれ外してけェェエッ!!」


…と思ったら、やっぱりこういうことだ。
土方は手錠をかけられたまま置き去り。沖田は土方の叫びなんて聞こえないフリをして、軽い足取りで名前の部屋に向かっていった。


「……ったく。オイ名前テメーいい加減起きやがれ。そして仕事しろ。」
「うるせーよムッツリ土方……むにゃむにゃ。」
「起きてんだろォォ!?寝てるヤツは『むにゃむにゃ』なんてぜってー言わねーよ!!」


キシャァァアァ


「!」


土方と名前が口論(?)していると、名前の部屋から耳をふさぎたくなるような鳴き声が聞こえてきた。
おそらく沖田がゴキブリを退治したのだろう。流石は沖田、何の躊躇もせずに倒したらしい。
これで一段落ついたと思って一本タバコを吸おうとしたときだった。


「って手錠ついてんだ……」


ザザザザ


「…った……」


土方と名前を取り囲んだのは黒くて油ギッシュな、アレ。つまりゴキブリだ。
しかしただのゴキブリではない。約2メートルにもわたる巨大ゴキブリだったのだ。







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