銀魂 | ナノ
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28:コソコソすれば絶対バレる


「ねぇ土方、沖田が面白いことやってんだけど、私らも参加しない?」
「…は?」










「まぁまぁ、遠慮せずに食べなさいよ。」
「…何コレ?」


ドカッ、と銀時の目の前に置かれたのはとぐろを巻いたマヨネーズが乗った丼。原型はカツ丼である。
土方曰く、『カツ丼土方スペシャル』だそうだが、銀時にしてみれば「何コレ」としか言い様がなかった。


「こんなスペシャル誰も必要としてねーんだよ。オイ姉ちゃんチョコレートパフェ一つ!」
「お前は一生糖分とってろ。どうだ総悟、ウメーだろ?」
「スゲーや土方さん。カツ丼を犬のエサに昇華できるとは。」
「…何だコレ?おごってやったのにこの敗北感…」


銀時は目の前の土方スペシャルには目もくれずパフェを追加。沖田は一応食べてるものの犬のエサ呼ばわりだ。


「2人とも食べ物を粗末にしたら駄目よ。カツ丼が可哀想。」
「名前…」


唯一フォローをしてくれた名前に土方は少し感動を覚える。しかしこの場合名前がフォローしてるのは土方ではなくカツ丼だ。


「マヨネーズどかせば食べられるんだから。」
「……」


その証拠に自分の丼のマヨネーズを土方の丼にせっせと移している。これでカツ丼土方スペシャルからただのカツ丼に元通り。


「…まぁいい。本筋の話をしよう。」


今回土方が毛嫌いしている銀時に食事を奢ってやっているのにはワケがあった。
煉獄関という場所が、一般人が入りそうもない入り組んだ路地の奥深くに存在する。
そこでは人と人との真剣での斬り合い……つまり殺し合いが行われている。


「…テメー総悟にいろいろ吹きこまれたそうだが、アレ全部忘れてくれ。」


明らかに違法であるこの場所が存在し続けているのには理由がある。
上の人間が絡んでいるのだ。幕府に拾ってもらった身である真選組なんて簡単に消してしまえる程の権力者が。そこで沖田は銀時にこの話を持ちかけたのだった。


「大体テメーら小物が数人はむかったところでどうこうなる連中じゃねェ。下手すりゃウチも潰されかねねーんだよ。」
「土方さん、アンタひょっとしてもう全部つかんで…」
「俺……っつーか名前がな。」
「!」


沖田が驚いて名前の方を見る。銀時も鼻をほじった手をおろして横目だけで名前を見る。
名前は綺麗にマヨネーズを取り除いたカツを箸で掴んだところだった。


「……天導衆。」
「…天導衆…?」
「土方パス。」
「………将軍を傀儡にしこの国をテメー勝手に作り変えてる、この国の実権を事実上にぎってる連中だ…」


しかし名前にとって食事やテレビを邪魔される程むかつくものはない…というか、説明がめんどくさかった。自分は一言だけ言ってあとの説明は全て土方に任せた。












「それにしても名前さんもチクるなんて意地がワリーや。」
「ごめんね。」


銀時と別れたあと、土方はそのまま巡回に行き、名前と沖田は屯所に帰って休憩していた。


「…でも沖田だってズルいよ。こんな面白そうなこと一人で片付けようとして。」
「……」


もちろん面白いだなんて微動たりとも思っていない。
沖田と同じように名前も人の命を弄ぶようなことが、そしてそれに上の人間が絡んでいることが、腹立たしくてしょうがなかった。
しかし相手が相手なだけに迂闊に手を出せば土方の言うとおり真選組が危ない。そこで沖田は仕事の無い日にコソコソと嗅ぎ回っていたのだろう。
沖田の気持ちが十分に名前にはわかっていた。だからこそ、一人で背負ってほしくなかったのだ。


「名前さんこそあんな情報、相当潜り込まなきゃ手に入れられませんぜ。」
「そんなことないよ。」


確かに天導衆の情報なんてそこら辺に転がっているものではない。名前も少なからず無茶をしていたんだろう。
詳しく聞いたところで名前はきっと適当にはぐらかして答えてはくれないから、沖田は何も聞かなかった。


「……私は真選組やってるけどさ…」
「…?」


名前は畳の上にごろんと寝転がると、呟くように話し始めた。


「天人とか、幕府とか、大嫌いなの。ブン殴りたいくらい。」
「……」


幕府の下で働く警察としては問題発言なのだが、相手が沖田なので心配はいらない。
名前が天人を嫌っているのは知っていたし、沖田にも似たような感情があるからだ。


「私は幕府の下についたんじゃない………近藤さんのもとについただけ。沖田もそうでしょ?」
「……」


名前が小さく口の端を上げて、視線を沖田に向ける。沖田は一度だけ頷いた。


「…じゃあ、問題ないね。」
「そうですねィ。」


そして今度は顔を見合わせて笑った。








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