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24:彼女の一日 前


えー、本日は真選組の紅一点、謎多き名字名前さんのことが皆さんに少しでもわかってもらえるように、真選組監察の山崎退が命をかけてお送りします、名前さんの1日。









「(何で俺がこんなことを……)」


文頭ではなんか爽やかに言ったけどさ、俺本当はこんなことしたくないんだよね。いくらネタが無いからってこんな…。
もう忍装束を来て天井裏にまで上っちゃってて、後戻りはできないんだけどさァ…。
俺が今いるのはもちろん名前さんの部屋の天井裏だ。
名前さんは休暇以外の時は大体屯所の一室で睡眠をとっている。
部屋の中はさっぱりしていて、名前さんの隣にはいつ襲われても対応できるように護身用の大きなハサミに、また逆の隣では最近飼い始めた猫の紅が気持ち良さそうに寝ていた。
現在朝の8時。そろそろ起きても良い頃なんだけど………っていうか勤務時間は6時からですよ?2時間も過ぎてんじゃないですか。
綺麗な顔を崩さずに、寝息も聞こえない程静かに寝ている。
寝ているのが俺だったら必ず副長がボディブローをくらわせてくるのに…。なんだかんだ言って副長は名前さんに口答えができないみたいなんだよなァ。


「……!」
「(ひぃぃいッ)」


すると、いきなりバッと、名前さんが起きた。
その手にはいつの間にか護身用のハサミが握られていて、名前さんは目だけを動かして周りを探った。
もしかしてもう感づかれたのか………流石名前さんだ…!


「………」
「ニャー」


緊迫した空気の中、紅が鳴いて名前さんの膝の上に乗ると、名前さんはハサミを手放して紅の頭をおはようと言いながら撫でた。
助かった……。俺はほっとしたと同時に、名前さんの微かな笑顔に見入ってしまった。
やっぱり名前さんって綺麗だよなァ…。っといけない!俺は今名前さんを尾行中なんだ。(決してストーカーではない)


「……」


シュルシュル……と、布の擦れる音が聞こえる。天井の隙間から覗いてみると……


「!!」


着替えてるーーーーーー!!
いや、そりゃ、普通の事だけど!見るべきか?!見るべきなのか山崎退!!
いやでもこれじゃあ只の覗きじゃん!局長と同じじゃん!あ、局長も覗きはしないか。
とにかく俺、一応これでも警察だし………いや、でもぶっちゃけ見たいという気もしないではなくて……ほら、俺も男だしさァ。
あーーーーでも見つかったらコレ絶対殺されるな…。
だって名前さんだし………下手したら成仏さえできないかも……。


ガラ


「……?」


アレ?なんか襖の開く音が…。ってぇえええ、もう着替えたんですかァ?!早ッ!!
今にしてみるとちょっと残念だ……いやいや、何でもありません!
さて、引き続き名前さんの行動を観察しようと思います。
名前さんはすれ違う隊士達に挨拶を返しながら、スタスタと廊下を歩いていく。
あ、歩くの速いなぁ……俺天井裏に四つんばいなんですけど…!どんどん距離が離されていく……このままじゃ見失っちゃうよ!


「………沖田…」


…と焦り始めたとき、名前さんの足が止まった。
行く先に障害物………つまり、昼寝している沖田隊長がいたのだ。
またこの人はサボって……。俺だってミントンしたいのに…。


「その声は名前さんですねィ。」


沖田隊長はアイマスクをずらして名前さんの方を見た。


「……土方は?」
「巡回に行ってまさァ。」
「よっしゃ朝風呂行こ。跨ぐよ、沖田。」


ぇえええ朝風呂ォォォ?!勤務時間に…朝風呂ォォォ?!


「お、今日は青ですかィ。」
「うん、ボーダー。」


ええええ何この会話?!何普通にこんな会話してんのォ?!
沖田隊長、普通見ないでしょ!ただでさえ名前さんの着物は際どいんだから…。名前さんも名前さんで柄まで言っちゃってるし…。
………青のボーダーか…。ちょっと以外だな。俺としては黒とか赤の……って違うからァァァ!!!
山崎退、尾行を真剣に続けようと思います。


名前さんが次に向かう場所は、宣言通りお風呂。
………………。
いや、流石にお風呂は……ねえ。山崎退は男ですがここまでする変態ではないんで。
お風呂は一方通行だし。手前で名前さんが出るのを待っていようと思いますよ。
…にしても寝坊の上朝風呂まで入るとは………。
名前さんは相当図太い。…今に始まったことじゃないけど。
でも不思議と憎めないんだよなぁ…。っていうか憎んだ日には命無いな…。










「……はッ!!」


いけないいけない!!あまりにも暇で寝てしまった!
なんせ名前さんを尾行するために早朝の4時から天井裏に張ってたからなぁ…。
それなのに名前さん起きたの8時だし……。4時間も無駄に気ィ張っちゃってたのか…。
どのくらい寝てたんだろ……名前さんもうお風呂出ちゃったかな…。


ガラ


と思ったら、丁度今出てきた。


「はー、気持ちいー。」


髪の毛まで洗ってるーーーーー!!すごいホカホカして頭にタオル巻いてるよ!
つまり風呂に浸かって、あまつ髪まで洗っていたってことじゃないですか!
暗闇の中で携帯のサブディスプレイを見てみると、時間は9時。
………1時間弱も風呂入ってたーーー!!
名前さん意外と長風呂なんだな………じゃなくて!ああ、もう嫌になってきた…。


「オイ、朝っぱらから風呂とはいいご身分だなァ。髪まで洗いやがって。」
「………誰かーー覗きよーーー」
「死んどくか?一遍死んどくか?」


名前さんが爽快気分で風呂から出ると、怒りオーラを撒き散らした副長が立っていた。
おお、なんか今日は名前さんに対する覇気が違いますね!
……頭についた小豆を見たところ、多分また万事屋の旦那と喧嘩したんですね…。それでシャワーで落そうとここにきた、と。


「土方に私が殺せるわけないじゃない。しかも何、その小豆。ニューファッション?」
「違うわァァア!!あ゛ーー、むかつく!もういい、どけ。そしてちゃんと仕事しろ。」
「そんなに私と一緒にお風呂に入りたかったのね…。ハイハイ、また今度入ってあげるから。」
「どこをどうとったらそうなるんだ?あ?いい加減にしろよお前。」
「アンタこそいい加減にしてよ。私が甘ったるいの嫌いって知ってんでしょ?早くそれ落してきて。」
「だから今そうしようとしてんじゃねェかよォォ!!」


……ああ、駄目だ。もう完全に名前さんのペース。副長は怒りながら乱暴に更衣室のドアを閉めた。


「あーー、折角気分良かったのに。」


副長の所為で気分悪くなったんですか。
というツッコミは胸に仕舞い込んで、次に名前さんが向かった先は………台所。
まあ………朝ご飯は食べなきゃですよね。1日のエネルギーですからね。


「………」


名前さんは台所に入るとまず最初にインスタント食品が保管されている棚を開けて、中を見て軽く舌打ちをした。どうやらカップラーメン諸々が切れているようだ。
今度は今日の料理担当の女中さんが書いてあるボードに目をやる。今日はみんななんらかの都合で誰もいないみたいだ。
それを確認した後、名前さんは面倒臭そうに冷蔵庫の扉を開けた。冷蔵庫の中には大量のマヨネーズと、少量の食料。
昨日俺が買出しに行ったのに…1日でこんな減ってるとは…………特にマヨネーズ。
何で監察の俺が買出しに行ったか?…そこは聞かないでください。本当もうこんな仕事やめたい。


「………はァ。」


名前さんは面倒臭そうに溜息をついた後、冷蔵庫の中から少量の食材を取り出した。
え?もしかして作るんですか?!
戸棚からフライパンを出して、油をしいて、コンロに火をつける。
ああああ作るよコレ!卵とハムだから多分ハムエッグらへんだよ!そういえば俺朝飯何も食べてないじゃん…!!


「「「「「名前さァァァんッ!!!」」」」」


いい匂いが天井裏にまで届いてお腹が鳴りそうになった時、数人の隊士達が勢い良く台所に飛び込んできた。
多分…っていうか絶対匂いをかぎつけてきたんだろう。
ぶっちゃけ名前さんの料理は最高に美味しい。俺もずっと前に1度だけ食べた事がある。大袈裟だけどほっぺたが落ちるかと思った。


「…………卵とハム。」
「ヘィ!!」


隊士達が何を望んでるかわかった名前さんは、視線はフライパンから逸らさずに冷蔵庫を指差した。
今作ってるのは自分一人分だから隊士達の為にまた作ってくれるんだろうか。
…なんだかんだ言って、名前さんって優しいよなァ…。特に平隊士に対して。
いいなァ……。俺もこんなことしてなけりゃまた名前さんの手料理が食べられたのに…。
俺は溢れるヨダレを飲み込んで皆の食事の光景を天井裏から眺めるだけだった。






え?何この終わり方。






……え?続くのォ?!







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