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20:祭りだからってハメを外しすぎるな



「いいか。祭りの当日は真選組総出で将軍の護衛につくことになる。将軍にかすり傷一つでもつこうものなら俺達全員の首が飛ぶぜ!そのへん心してかかれ。」


とある日。屯所の一室で隊士達が集まり、近日開催される江戸の大きな祭りのことについての会議を開いていた。
(ストーキングで)忙しい近藤の変わりに司会をしているのは土方だ。
その隣に名前が座っている。


「そんな大袈裟な。知ってた?将軍奥さんに尻にしかれてるって。」
「マジで?間違いなく攘夷派の浪士どもも動く。とにかくキナくせー野郎を見つけたら迷わずブった斬れ。俺が責任をとる。」
「マジですかィ。土方さん…俺ァどーにも鼻が利かねーんで侍見つけたらかたっぱしから叩き斬りますァ頼みますぜ。」
「オーイ、みんなさっき言ったことはナシの方向で。」
「男なら自分の言動に責任を持ちなさい。」
「うるせー。それからコイツはまだ未確認の情報なんだが、江戸にとんでもねェ野郎が来てるって情報があんだ。」
「とんでもねー奴?一体誰でェ。」
「桂の野郎は最近おとなしくしてるし。」
「以前料亭で会談をしていた幕吏十数人が皆殺しにされた事件があったろう。あらぁ奴の仕業よ。攘夷浪士の中でも最も過激で最も危険な男…高杉晋助のな。」
「!」


“高杉晋助”という名前が出た時、微かに名前の表情が変化した。
そのことに気付いたのは名前の真正面に座っている沖田だけだった。












「祭りなんて久し振り…。」


そして祭り当日。
将軍の御前だからという理由でちゃんとした着物を着せられた名前は林檎飴を片手に持って祭りを堪能していた。
普通の格好をしている名前はすっかり祭りに溶け込んでいる。
先程まで土方・近藤・沖田・山崎との5人で将軍のいるやぐらの警備についていたのだが、トイレに行くと言って離れてから、そのまま祭りを楽しんじゃっているのだ。
ちなみにその数分後に沖田も同じことを言って同じことをしていたりする。


「おねーェさーん、一人ィ?」
「うっわ、かなりの上玉じゃん?」
「俺達と遊ぼーよ。」
「………」


(黙っていれば)誰もが振り返すほど美人な名前を、祭りで浮かれている男共が見逃すわけなく、名前の周りを3人の男が取り囲んだ。
以前沖田から『遊ぶ』はエロ用語でこれはナンパというものだと教えてもらった名前は、とりあえず無視することにしたが男達は行かせまいと名前の前に立ちはだかる。


「…どいてくれない?今仕事中なの。」
「ウソはいけないなァ〜。」


着物で林檎飴を片手に持っている名前は誰がどう見ても仕事中には見えなかった。


「ちょっとだけでいいからさ、ね?」
「………」
「なッ!?」


いい加減うざくなった名前は腕を掴んできた男の腕を逆に掴み、そのまま一本背負いにもっていった。
男の体は綺麗に宙を舞い、鈍い音をたてて地面とぶつかった。


「営業妨害で逮捕しますよ。」
「げっ!!」
「逃げろッ!」


名前が手についた埃をパンパンと払ってから警察手帳を見せると、男達は顔を青くして一目散に逃げていった。


「クク……変わってねェなァ名前。」
「………」


その一部始終を見ていた男が後ろから声をかけた。
懐かしい余韻のあるその声に、名前が振り返ってみるとそこには派手な着物を肌蹴て着た高杉が3m程先に立っていた。
ひょうたんの中身を飲みながらこちらを見ている。


「晋助は……変わったね。」
「そォか?」


驚きをあまり表に出さず、名前は淡々と言った。
その言葉を聞くと、高杉はひょうたんを腰に戻し名前に近づいていく。
名前は特に構える様子もなく、高杉との距離が縮むのをじっと待つ。


「幕府の狗になったんだってなァ?」
「あちこちで斬りまくってるらしいね。」


2人の距離が30cm程までに縮まった。
互いに答えのわかりきっている質問には答えず、互いの目を見て確認する。
名前は高杉から肯定を受け取ると同時に、その視界に沖田の姿を捉えた。
沖田は名前と同じように警備を抜けてきて祭りを堪能しているようだった。まだこちらには気付いていない。
名前は反射的に高杉の左手を取り、近くの木陰に入った。
間もなくしてどこかに消えていった沖田を見て、ほっと胸を撫で下ろす。


「…やっぱり変わってねェな。」
「……」
「表向きは変わっても肝心な中身は何一つ変わっちゃいねェ。」
「……」
「今、何を恐れた?アイツが俺に斬られる事か………俺がアイツに斬られる事か。」
「………両方よ…。」
「……クク…相当気に入ってるようだなァ…。テメーの親も兄貴も奪った将軍のお膝元がよォ。」
「!!」


高杉の言葉に過剰に反応する名前。
いつも表情をあまり変えない名前がここまで動揺する姿を見せるのは初めてだ。


「……おじを殺したのは晋助じゃない…」
「あれはお前らを助けてやったんだぜ?感謝されるべきだと思うがなァ。」
「感謝は全くしてない。けど……恨みもしてない…。」
「………」


ガッ


「………」


今まで何も構えていなかった高杉がいきなり剣を抜いてきた。
常人ではとらえきれない速さで向けられた刃は、名前の喉元すぐ隣の木の幹を貫いた。
剣が向けられたとわかっていても、名前は避けようとはしなかった。否、する必要が無いという事がわかっていたのだ。


「名前……俺と一緒に来るか?」


高杉は剣を名前の喉元に傾けて、もう片方の腕を幹において名前の逃げ道をなくした。
その状態で発せられた言葉の裏には、いつでも斬れるという脅しも読み取れる。
しかし名前は真っ直ぐ高杉の目を見て一言、こう言う。


「嫌。」


高杉は少し驚いたような表情をし、やがて口の端を上げて笑った。
刀が名前の喉に触れることはなかった。


「ククク……やっぱお前も変わったな…。」
「………」


幹から抜いた刀を鞘に納めて、高杉は名前に背を向けた。


「嫌っつーならもう用はねェ。じゃァな。」
「………晋助!」


離れていく高杉を名前が呼び止めた。
高杉は後ろを振り向かずに足だけ止める。


「……今度会ったら、迷わず抜く。」


何を、というのは言わずとも知れている。


「…………俺もだ。」


最後に高杉はそう言って、人混みの中に消えていった。












「………」
「こんな所で何してんですかィ?」
「!」


高杉が消えた後、しばらくそこを動かなかった名前に誰かの声がかかった。
口調ですぐにわかる。沖田だ。


「せっかくの祭りだ。楽しまなきゃ損ですぜ。」


沖田はそう言いながら、名前に冷えたジュースを渡して人混みの方へ手を引いていく。
名前は大人しく沖田に引かれるがままに足をすすめた。


「沖田。」
「…何ですかィ?」
「ごめん。」


ふいに足を止めたかと思うと、名前は沖田に一言謝り出した。
沖田は名前の方は見ずに、こう言う。


「…何で謝るんでィ。意味わかりやせんぜ。」


間違いない。沖田は先程の高杉とのやり取りを見ていた。
それは名前にもわかっていて、そのことも沖田にはわかっていた。
しかし口に出さないのは沖田なりの優しさなんだろう。
2人は再び人混みの中を歩いた。


「沖田、イカ焼き奢ってあげる。」
「マジで?じゃあビッグで。」
「もちろん。」







■■
2人の関係としては、親も殺されておじも殺されて身寄りが無くなったところを高杉さんち鬼兵隊に拾われた、みたいな感じで。
そんで兄貴は鬼兵隊に入って最終的に政府に殺されてしまった、みたいな。





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