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34:いい人と天使(仮)

てとてと。
すっかり戻るタイミングを逃した私は虎の小さな歩幅で街を歩いている。
だってそこらじゅうに賞金稼ぎがいるんだもん。


「わー、ねこさんかわいー!」


前にペンギンが言っていたように、虎の姿になった私は周りに猫だと認識されている。
本当、コントロールできるようになってよかった。
それにしても今まで誰一人虎として見てくれないのは何故だろう。小さいからかな。まあいいけど。


「ばいばーい!」
「にゃー」


小さな女の子は私の頭を存分に撫でて手を振った。
…うん、悪い気はしない。可愛がられるなら暑苦しい海賊より、この子みたいな可愛い女の子がいいな。
そんなことを考えながら街中を歩いた。











「にゃふっ」
「………猫?」


しばらく歩いていると人の足にぶつかってしまった。


「いや……もしかして、スノウタイガー…!?」
「!」


初めて虎扱いをされたことに驚いた。しかもきっちり名前まで当てられた。
見上げてみると、いかつい顔の男の人だった。
大きな帽子に顎に大きな傷……あれ、この人なんかどこかで見たことがあるような気がする…


「船長、何ですか?スノウタイガーとは……」
「…おれの故郷にいる珍しい虎だ。」


……「船長」…ってことは…もしかしてこの人海賊!?
名前とか全然わからないけど、確かに言われてみれば手配書の中にこんな顔があったような…ないような…
とりあえずやばいことには間違いない。海賊ってことは、つまり敵ってことだ。


「どうしますか?オークションにでも売れば相当な値段が…」
「にゃ!?」
「スノウタイガーは神聖な生き物だ。」
「す、すいません!」


物騒なことを提案した男が船長らしき人に怒られた。ふん、いいザマだ。
そういえばペンギンもシャチも、北の海ではスノウタイガーは神聖な生き物だと言っていた。この人も同じことを言っている…ということは、この人は北の海出身なのかな。
とりあえず大丈夫みたいだ。よし、このままやり過ごそう。


「しかし何故こんなところに……ん?お前、飼われてるのか?」


私の首についている、ペンギンから貰ったネックレスを見て聞かれたから頷いた。


「……お前が望むならおれが自由にしてやる……どうする?」
「…にゃー」
「……そうか。」


ありがたいお言葉だけど首を振っておいた。










うーん、しかしいい人だった。
見た目は海賊っぽくて怖かったけど、あんないい人もいるんだな。どこぞのキッドさんとは大違いだ。


ズン


「!?」


そんなことを考えながらてとてと歩いていたら急に地面が揺れた。
地震?と思ったら隣に巨木…いや、人の足があった。え、でかくね?


「ん?何か白いものが……ああ、猫か。」
「………」


その足を辿って見上げてみたら、首が疲れる程大きなおっさんがいた。


「そんなに小さいと踏まれてしまう……気をつけなされ。」


ただのおっさんであればよかったんだけど……おっさんの背中には羽が生えていた。
背中に羽なんてまるで天使みたい……いやいや嘘だ。私は認めない。こんなおっさんが天使だなんて。
きっとアレだ。天使コスプレのおっさんだ。








■■
人魚に夢見るのと同様、天使にも夢見たいじゃないですか。





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