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33:騙された

シャボンディ諸島。
グランドライン前半の最後に位置するこの島は、新世界を目指す者であれば必ず通る場所である。
ロー率いるハートの海賊団も例外ではない。
この島に到着したということは、グランドラインの航海の前半が終わることを意味する。


「わあああ…!!」


島に降り立ってすぐ、ナマエから感嘆の声があがった。


「ね、すごいすごい!シャボン玉が出てくる!割れない!」
「はは、あんなはしゃいじゃって。」
「ナマエはこういうの好きそうだもんな。」


シャボンディ諸島とは特殊なマングローブが集まってできた島であり、その名の通りシャボン玉のようなものが絶え間なく地面から生まれている。
そのシャボン玉は不思議なことに触っても割れず、ぷにぷにしている。
植物好きのナマエにとってはたまらない現象だ。


「遊園地もあるらしいぜ!」
「へー。それよりこの樹脂ベタベタしてる!どんな成分なんだろ?」
「まあ……お前はそういう奴だよな…。」
「遊園地かあ……キャプテン、行こうよ。」
「…腹減った。飯食いに行くぞ。」


普通の女子であれば普通食いつくのは遊園地の方なんだろう。
が、今のナマエにはそんな情報右から左だった。


「じゃあ私は薬草探しに…」
「ナマエ。お前はおれから離れるな。」
「えええ何で!?」
「前科持ちが随分と大きな口を叩けるもんだな。」


この島にはいったいどんな植物があるのだろうか。
膨らむ期待を抑えきれず出発しようとするナマエの首根っこをローが掴んだ。


「で、でも……」
「まーまー。大人しく言うこと聞いとけって。」
「船長の傍にいた方が安全だからな。」
「どういうこと?」
「この島は海賊とか賞金稼ぎとか海軍とかやたら多いんだよ。敵だらけってわけ。」


一見シャボン玉が浮いてのどかな島のように見えるが、ここは新世界へ向かうために必ず通らなければならない場所。
今まで別々の航路をたどってきた海賊達がこの島に集合し、それにともなって賞金首や海軍も他の島より多くいる。


「特にお前が気をつけなきゃいけねーのは人攫い。」
「人攫い?」
「人を掻っ攫ってオークションに売ろうっていう連中だ。」
「そんなこと海軍もいるのにできるの?」
「黙認されてんだよ。どっちが悪かわかんねーよなァ。」
「………」


そして、この島特有の危険が「人攫い」。
この島では定期的にヒューマンオークションが開催されている。
人間を攫い、オークションに出品することを生業としているチームが数多く存在する。


「オークションでは売り出される種族によって値段が違う。例えば人魚なら最低7000万。人間なら50万ってとこだな。」
「………」


そして出品される種族によって値段が異なる。
特に人魚の女は人気が高く、いつも高値で取引されている。
やけに相場に詳しいローを若干軽蔑しつつもナマエは説明を大人しく聞く。


「そして珍獣は時価。お前は恰好の獲物ってわけだ。」
「ちょっと待って私珍獣扱い!?」
「スノウタイガーなんて超希少種なんだぞ。」
「う……」


能力者の人間は普通よりも高値で取引される。
特に動物系は愛好家に人気がある。
その中でも希少種であるスノウタイガーは、マニアにとって喉から手が出る程欲しい商品なのだ。


「だから、船長の傍を離れるなってこと!」
「………わかった。」


危険性を理解したナマエは素直に頷いた。

















「騙された!!」
「ナマエ、テメェも少しは戦え。」
「無理ですううう!!」


ローとナマエが島を歩いてものの10分、2人は賞金首に追われていた。
ローと一緒に行動した方が安全だと言われたからそうしたのに、さっきから狙ってくる男たちのお目当ては2億の首、トラファルガー・ローだった。
遊園地に向かったシャチやベポは今頃観覧車に乗ってるのだろうか。
全力で逃げつつそんなことを考えた。


「チッ……おい、虎になって逃げろ。」
「で、でも船長…!」
「おれは大丈夫だ。」
「虎になったら余計狙われるんじゃ!?」
「……捕まらなきゃいいだけの話だ。」
「なるほど!じゃーね船長!」
「………50番GRに来い。」
「わかった!」


ローを置いて逃げることに全く抵抗のないナマエは虎の姿に変身し、その場を駆け抜けた。


「あの女、能力者か…!」
「しかも猫……こりゃあマニア受けするぜ!」
「捕まえろォ!」
「よせ。アレはうちのペットだ。」






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