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21:出会ってしまった

「おいナマエ、薬局行ってこれ買ってこい。」
「え、やだよ船長行けば。」
「残りの金は好きに使っていい。」
「しょーがないなァ任せてよ!」


ゲンキンだって?しょうがないじゃん、私お金持ってないし。
それに甘んじておつかいに行ってあげるんだから、お駄賃くらいあって当然でしょ!








「よく探せ!まだこの辺にいるはずだ!」
「ひっ……」


薬局で切れていた薬品やら包帯やらを買って、さてこれからどこへ行こうかと考えてる時。
たくさんの足音が聞こえて、何かと振り返ればたくさんの海兵、海兵、海兵。
海兵にいい思い出が無い私は反射的に路地裏に身を隠した。
いやいやいや、私今つなぎ着てないし、海賊だって判断される要素ないし、事実海賊じゃないし!
臆することはないんだけどねっ、でも、まあ、一応ねっ!
誰か追ってるみたい。…まさか船長とかじゃないでしょうね……。
まあいいや。とりあえずちょっと落ち着くまでここに隠れてようかな…


「ひいいっ!?」
「………」


身を潜めようと路地裏の奥に進んだら座り込む人。
ただの人ならここまで驚くことはない。だけどこの人……怪我してる!!


「ちょ、大丈夫ですか!?」
「……問題ない。」
「いや大有りだから!!」


水玉のシャツは所々破れ、腕や腹部の切り傷からとめどなく血が流れている。
長い髪の毛でいまいち顔は見えないけど、大問題な状態である。
私はさっき買ったばかりの消毒液やら包帯やらを広げて処置に取り掛かる。
こういうのは専門外だし血は苦手だけど、このまま放っておくことなんてできない。
私は、人を救うために医者になったんだから…!


「……医者か?」
「見習いです。」


私がテキパキと処置するのを感心したように見つめられる。
最初はしみるだろうと気遣ってそっと塗っていた消毒液だけど、相手があまりにも無反応だから遠慮なくぶっかけることにした。
それでもやっぱり痛がる様子はない。本当は処置なんて必要ないんじゃ……いやいや見てて私が痛い!


「よし、これで大丈夫!」
「……すまない。」


傷の酷かった腕と腹部に全て包帯を巻き終えて、おしまい!
小さな切り傷やら打撲やらはたくさんあったけど、全部に包帯巻いてたらミイラになっちゃうからね。


「それにしても……どうしたんですか?そんな大怪我。」
「……少しヘマをしてな。」
「どんなヘマしたらそんな大惨事に?もしかして……海賊にやられたとか?」
「………」


コレでもし船長にやられたとか言われたらどうしよう。私逃げるべき?
いやでも船長がやったことだ。私は関係ない。


「…キッド。」
「よォ、こんなところにいたか。……無事みてェだな。」


なかなか答えてくれないお兄さんの視線を辿ると、私の背後にでっかい男の人が立っていた。
上半身裸の上にもふもふのコート、逆立った赤い髪、眉無しの鋭い目……私はその男に見覚えがあった。
そしてお兄さんが呟いた「キッド」という名前にも聞き覚えがあった。しかも、ごく最近だ。


カラン


「お前のマスクを拾った時は何事かと思ったぜ、キラー。」
「すまない……。」


お兄さんの足元に投げられた鉄の仮面は、穴が何個か開いてるだけのシンプルなものだった。
あれ、なんかこれも見たことがある。それから「キラー」って名前も聞いたことがある。
お兄さんはその仮面を拾うと自分の顔にすっぽりと………


「ああああああ!?」


あまりの衝撃に指をさして大声をあげてしまった。
だって、怪我したお兄さんも大きな男の人も、手配書で見た顔と同じ…!
“殺戮武人”と、3億越えの賞金首ユースタス・“キャプテン”キッド…!!


「…で、その女は何だ?」
「……助けてくれた。恩人だ。」
「ほォ…。」


ああもう終わった私死ぬ。
背後には殺戮武人、前には3億越え。そしてここは路地裏。逃げ道など無いのだ。
もっと早く気付いていれば…!だって手配書には仮面つけた顔しか載ってなかったもん!
仮面外してるなんて反則、わかるわけないじゃん!


「おい女。ンな怯えんな。クルーの恩人を殺すようなことしねェよ。」
「ひっ…」


むりむりむり、顔がそう言ってないもん!誰これ構わず殺しそうな顔だもん!
笑った顔でさえ怖いってどういうことおおお!


「宴に招待してやるよ。」


それは私にとって死刑宣告の他何でもない。ついて行ったら間違いなく私の人生が幕を下ろす。


「おおおお断りしますーーー!!」
「うおっ」


必死に生にしがみつく私はなりふりかまわず目の前の男の人にタックルをかまし、その脇を全速力で走りぬけた。







「ク……ハッハッハッハ!!」
「キッド……」
「…心配すんなって。言ったろ?お前の恩人は殺さねェ。」
「………」
「ただ……興味が沸いた。」







■■
キッドさんにはシャボンディの前に一度会わせとくべきだと思いまして。
グランドラインの7つの航路のうちいくつかは後半で合流してるようなので、まあそこら辺ということで。




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