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20:誤解が広がる

「お、おおおはようナマエ。」
「よ、よく眠れたか?…って悪ぃ、眠れるわけないよな…」
「………」









先日の事件からみんなの私への態度が酷い。酷すぎる。
先日……っていうのはすごい嵐に見舞われた日のこと。
船長が海に投げ出されたのを視界の端に捉えた私は勝手に体が動いていて、船長を追って荒れ狂う波に飛び込んだ。
我ながらとんでもないことをしたもんだ。いくら泳ぎが得意でも、あの嵐の中生きて帰れたのは奇跡だよ。
そして事件っていうのは、目が覚めた時、何故か私は真っ裸で船長に抱きしめられていたことだ。
まあ、海水でびしょ濡れの服を脱がすのは当たり前。抱きしめられていたのはきっと人肌で温めるため。
だからそんなうろたえることでもないんだけど、何が最悪って、その場面をベポ、シャチ、ペンギンに見られてしまったことだ。
弁解する暇もなく彼らは消えてしまい、翌日にはあらぬ噂が船内に広まっていた。


「ナマエ、腰痛いなら休んでろよ!」
「食欲あるか?」
「………」


つまり、船長と私がそういう関係である、という感じの噂だ。
船内で会うクルーはみんなそわそわと私に接してくる。これならガン無視してくれた方が幾分マシだ。
第一船長と私が……なんてよくも想像できたもんだ。普段の様子からありえないってわからないのかな。


「だから、船長とは何も…」
「あーいーっていーって!今日は赤飯炊いてやるから、な!」
「………」


生暖かい目で私を見るコックのカイザーさん。非常に気持ち悪い。
他のクルーも大体こんな感じだ。私が抗議する暇も与えず勝手に納得してどっかに行ってしまう。
わざわざ追いかけてまで弁明する気にはなれないけど、このまま誤解されたままっていうのも癪だ。
なんか私の名誉が傷つけられている気がする。立派ないじめだ、これは。


「クククッ…」
「……船長からも何とか言ってよ!」


まるでそこが私の特等席とでも言うかのように空けられた船長の隣にドカッと座る。だってここしか空いてないんだもん!
それにしてもこの男は……自分のことだっていうのにこの余裕!船長が「違う」って一言言えば済む話なのに!
このドS野郎は絶対今の状況を楽しんでる。そうなると自分ばっかり誤解を解こうと奔走してるのがアホらしくなってきた。


「気にするな。人の噂なんてすぐ終わる。」
「………」


ぽんぽん、と子供をあやすように船長の手が私の頭に乗っかる。
その様子をそわそわと見てくるクルー達をキッと睨めば、慌てて視線をそらされる。
…こういうのも全部わかってやってるんだなドS野郎め。


「それとも……事実にしちまうか?」
「!」


くいっと顎を持ち上げられた瞬間、さっき逸らされた周りの視線が一気に集中した。
相変わらず目の前の隈男はニヤニヤしている。私をからかって遊んでるつもりか、ふん!


バシン


「「「!?」」」
「…最低!もう二度と私にあんなことしないで!!」


私がただ大人しくやられてるだけだと思うな!
私は左手で思いっきり船長の頬を引っ叩いてやった。
目の前でニヤニヤした表情を浮かべていた船長は目を見開いてポカンとしている。
その顔が見られただけで十分。私は勝ち誇った笑みを浮かべて食堂を出て行った。








「……フッ…」
「ちょっ、船長!追いかけなくていいんスか!?」
「あ?必要ねェ。」
「で、でも早く謝った方が…」
「いい加減気色悪い勘違いはやめやがれ。」





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