18:ペンギンのお礼
「おいナマエ、行くぞ。」
「あ、私今日はペンギンと行くから!」
「……あ?」
新しい島についた。
島についたらナマエはまずローと一緒に図書館か本屋に行くというのが当たり前になってきていたのだが、今回は違うらしい。
何でもペンギンが病気を治してもらったお礼をしたいということで、次の島で好きなものを何でも買ってあげるという約束をしていたのだ。
そういうことならと下船を許したローだが、ナマエとペンギンを見送る視線は子供一人殺せそうだった。
「わっ、コレ図鑑で見たやつ…!すごい!こんな大きかったんだー。」
「なあ、ナマエ……」
「あ、こっちのは見たこともない!…変なにおいだなー。」
「おーい……」
好きなものを何でも買ってやる……という約束だったのだが、ナマエが向かったのは町ではなくて森の中。
ペンギンはカゴを持たされて、ナマエの薬草集めを手伝う羽目になっていた。
今回の島には珍しい薬草がたくさんあるらしく、さっきからナマエはペンギンおかまいなしで森の中を動き回る。
テンションが上がった今のナマエには何を言っても無駄なようだ。ペンギンは諦めて薬草集めの助手を務めることにした。
「ペンギン見てあれ!」
「ん?」
「あれ、ミミナシ草っていってね、精神安定の効果があるの。」
「へー。」
「…船長に飲ませたら効くかな?」
「お前船長を何だと思ってんだ?」
「まあ、とりあえず取ってくる。」
「…は!?よせ、あんな崖……」
「よっ、と。」
ナマエが見つけた薬草は崖が少し出っ張ったところに生えていて、とても人が取りにいくような場所ではない。
怪我でもされたら大変だとペンギンが止めるも、ナマエは涼しい顔で木のつるを上手に使い、軽い身のこなしでそこに到達した。
「これね、睡眠薬にもなるの。船長の隈取れるかな?」
「…さーな。」
ナマエの逃げ足の速さの根源を見たペンギンだった。
「…さて。薬草はこのくらいでいいや。ペンギン!」
「ん?」
「買って欲しいものがあるの!」
買って欲しいものがあると言ってナマエが入ったのは女性向けのアクセサリーショップだった。
若干居心地が悪いペンギンを放置してナマエは真剣な表情で店内をまわっている。
「(アクセサリーが欲しいなんて……ナマエにも少しは女らしいところがあったんだな。)」
「決めた!これ買って!」
ペンギンが失礼なことを考えていると、ナマエがペンギンの前に一つのネックレスを差し出した。
ある程度高価なものを覚悟していたペンギンだったが、その値段は学生のお小遣いでも買える程度のものだった。
「こんなんでいいのか?」
「うん、これがいいの!」
ネックレス自体も至ってシンプルで、小さなハートが一つ付いてるだけだった。
ペンギンはハートに気付くと笑みを浮かべた。
「(可愛いとこあるじゃねーか。)よし、帰りにクレープでも食ってくか!」
「やったーペンギン大好き!」
ハートはローが率いる海賊団の象徴。
つなぎは着ないと決めたナマエだが、心はしっかりハートの海賊団にあるらしい。
「あ、ナマエとペンギンだ。」
「お前ら何クレープなんて食ってんだよ!おれにもよこせ!」
「やだよ、自分で買えば。」
「どーせナマエはペンギンに買ってもらったんだろ?っつーことでペンギン、おれにも奢ってください!」
「イヤだ。」
公園でクレープを食べていると紙袋を抱えたベポとシャチがやって来た。
紙袋の中身は薬品や包帯だ。おそらくローにおつかいを命じられたんだろう。
「ん?その袋、何買ったんだ?」
「これ?ペンギンが買ってくれたの。この前の病気のお礼だって。まったく律儀だよねー。」
「なっ……ナマエちょっと来い!」
「な、何?」
「おれも何か買ってやる!」
「え…」
「おれだってお前に助けられてんだ。おれが何もしなかったら器が小せェ男みたいでなんかイヤだ!」
「…あははっじゃー何買ってもらおっかなー。」
■■
シャチには髪ゴムを買ってもらいました。
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