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17:尊敬はしてる

「おいナマエ、書庫の掃除しとけ。」
「は?」
「掃除すりゃーそこにある本は好きにしていい。」
「任せて船長!」








いつまで経っても反抗的なナマエだが、もともとの性格が単純なため頭の良いローに利用されることはよくあった。
今回も書庫の掃除という面倒くさい仕事を二つ返事で引き受けてしまった。
実際に書庫に行ってみればどれ程掃除していなかったのか、見るも無残な姿になっていた。
ここにある本は全てローが読んだもので、医学書から航海日記、小説まで幅広いものが揃っている。
それらを読みたいという一心でナマエは朝から掃除に明け暮れた。


「おいナマエ、頭にすげー埃ついてんぞ。」
「まじで?取ってー。」
「えー手が汚れるじゃんか。」
「器が小さいよシャチ。」
「ウソウソ。取ってやるって。」
「ありがとー。」


掃除が半分ほど終わったところで思い出したように昼食を取りに行くと、他のクルーは食べ終わる頃だった。
シャチは埃だらけのナマエの姿に驚きながらもその埃を払って、おしぼりを渡してやった。


「何で埃なんてつけてたんだ?」
「書庫の掃除してたの。まだ終わってないけど。」
「書庫って……グッチャグチャじゃね?」
「うん。まったく、床に本は散らばってるわゴキブリの巣になってるわ、大変だったんだから!まだ終わってないけど。」
「そりゃ大変だなー。でもまあ、ナマエならできる!自信持て!」
「ありがと、私もそんな気がしてきた!まだ終わってないけど。」
「このスープ旨いなー。」
「……ベポなら手伝うって言ってくれるんだろうな。」
「おれは忙しいの。」
「ウソだー。どーせエロ本見てんだろ。」
「お前口悪いよな。」
「ふーん。」


まだ終わっていないということをひっきりなしに主張してみても、シャチの口から「手伝う」という言葉は出てこなかった。
正直あれだけ頑張ってまだ半分しか終わってないという状況にナマエはへこたれそうだったのだ。
残りあと半分もあると思うと腰が重くなるのは当然で。


「でもまあ、いいや。」
「何だよ、ゴキブリ退治くらいならしてやるけど?」
「ゴキブリごとき私の敵じゃないし。」
「可愛げねェー。」
「うるせー。」
「冗談抜きで手伝ってやるよ。シャレになんねーだろ、あの汚さ。」
「…ううん。手伝ってもらったらもらったで船長にグチグチ言われるだろうし。」
「……そりゃ否定できねェな。」
「でしょ?」


最終的にシャチは「手伝う」と言ってくれたが、気持ちだけもらっておくことにした。
ローはナマエに直接「掃除しろ」と指示したのだ。対象には他の誰も含まれていない。
手伝ってもらったことが原因でグチグチ言われるのは心外だし、書庫を掃除するメリットはナマエにしかない。
いくら暇人なシャチでもナマエの私欲に付き合わせるのは悪いと思ったのだ。


「なんだかんだ言いつつもお前って船長に忠実だよな。」
「…忠実じゃないよ、逆らえないだけ。」
「その割には命知らずな暴言吐いてるぜ、お前。」
「言葉ぐらいでしか対抗できないからね。」
「はは、そりゃそーだ。」


最終的にしっかりローの言いつけを守るナマエは意外と忠実なのかもしれない。…口は悪いが。


「それに……一応、師匠だから…」
「外科医なのに?」
「まあ、医者には変わりないし、弟を助けてもらったのも事実だし……」
「……」


そうやって口をもごもごさせたナマエを見て、自然と笑みが零れた。
憎まれ口を叩きながらもローのことは医者として、ちゃんと尊敬しているようだ。


「…ごちそうさまっ!掃除キバってくる!」
「おう、頑張れ!」


食器も片付けずに行ってしまった可愛い妹分を、シャチは笑顔で見送った。








「キャプテンどうしたの?嬉しそう。」
「……何でもねェ。」




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