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07:部屋をもらった

「ううーん……もふもふ……」


段々と覚醒していく意識の中で頬に感じる柔らかな毛触り。何これものすごく気持ちいい。
私ってばいつこんな高級ベッドに潜りこんだんだろう…それとも夢?
…まあどっちでもいいや。後3分……後3分たてば清清しく起きられる気がす……


ガツンッ


「いったーーー!!」
「うっ…」


夢と現実の間にふわふわしてたら強制的に目を覚まさせられた。
ひりひりする額をさすりながら目を開ければ私はベポのお腹の上に居て、横にはデッキブラシが転がっていた。


「いつまで寝てやがる、新入り。」
「……うげぇ…」


上から降ってきたのはドスのきいた低い声。
見上げてみれば凄まじく目つきの悪い瞳が私を見下ろしていた。……トラファルガー・ロー…海賊。
夢オチなんて期待してなかった。昨日のことだってけっこうちゃんと覚えてるし。
確か3杯目くらいで気持ちよくなってきて…ベポをわしゃわしゃしたりシャチのグラサンとったりペンギンの帽子とったりしてた気がする。
そんでそのままベポのお腹の上で寝ちゃったんだ。


べちっ


「ぶふっ!?」
「…さっさと掃除しろ。」


昨日のことを思い出していた私の顔面に湿った雑巾が投げられた。
これが女の子に対する扱いですか。ちょ、これ臭いんだけど!
命令するだけして、トラファルガーはあくびを浮かべながら行ってしまった。
……お前はやんないのか!!まあ、そうだろうと思うけど!船長様なんだしな!
ふと周りを見たら、額やら頭やらにタンコブを作ったクルーの人達がひたすらに床を磨いていた。
……この人達も犠牲者か…可哀想に。でもなんかあれだね、この船に乗ってまだ1日だけど親近感っていうか仲間意識が芽生えるよね。


「おはようベポ。お腹借りちゃってごめんね。」
「おはよー。いいよ、ナマエ温かくて気持ちよかった。」


うーん、やっぱりベポってば癒しだ。ただもう少し声が高ければ言う事無しなんだけどね。


「シャチおはよー。」
「おーー…」


シャチのやつめ、昨日はあんだけ飲んでうざいくらいに騒いでたのに、何だこのテンションの下がり様は。
……間違いなく二日酔いだろうけど!


「シャチって馬鹿だよね。」
「うるせー…何でお前平気なんだよ…」
「私3杯しか飲んでないし。」


お酒はねえ、「なんか愉快」状態が一番丁度良いんだよ!その後のテンションは自分次第だ。
無理にハメ外して飲んでも自爆するだけだもん。ふふ、私ってば大人!


「いつかぜってー潰してやる…」
「ナマエ!…ついでにシャチ!」
「ん?」
「おれついでかよ!」


ペンギンだ。私(とついでにシャチ)に何の用だろう。
ていうか何でペンギン掃除してないのずるい!


「ここの掃除はいいから、こっちに来てくれ。」
「? わかった。」
「おれも?」
「ついでだ。」
「ついでかよ!」


あくまでもシャチはついでらしい。









「最低限の片づけはしたけど…」
「……ペンギン、神。」


ペンギンに案内されたのは一つの小さな個室。
何でもここは空き部屋で軽く物置と化していたんだけど、ペンギンが掃除して私の個室にしてくれたらしい。
こういうところがシャチとペンギンの大きな違いだよね!たとえベッドの下にドエロ本があってもペンギンはいい男だ!


「おれとシャチでベッド運んでくるから、ナマエは掃除しててくれ。」
「はーい!」
「え、まじで?」


ここが、これから私が生活する部屋…。
決して広くもないし綺麗でもないけれど、なんだか物凄く嬉しい。
小さい窓からは甲板を通して広い海が覗ける。いい場所だ。
部屋の中にあるのは机と本棚、そして引き出しが4つついた家具だけ。うん、充分!
となると、ベッドはあそこの隅に置いてもらおう。


「…ん?」


ベッドを置く予定の場所に、袋が何個か置いてあるのが見える。
とりあえずこの部屋にあるということは私が使っていいだろうから、断りなしに開けてみる。


「なッ…!?」


するとそこから出てきたのは何枚かの下着。もちろん女物の。
船の上で数日も生活するんだから、そりゃあ下着があるのは嬉しい。何日も同じ下着とか、ましてやノーパンとか無理だから。
でもね、この下着全部見覚えがあるの。ほら、このオレンジのやつとか私のお気に入りだし。
そう、問題はただ一つ。何でここに私に下着があるのか、だ!
嫌な予感がして他の袋を開けてみると、そこには私の服。また別の袋には私の調合セット。
…間違いない。これは全部私の私物だ。


「………」


そして私は思い出した。
トラファルガーが私を拉致しに来た時、ペンギンは大きな袋を持って私の部屋へ行った事を。
つまり、これは全部ペンギンが詰めて持ってきたものだ。
………前言撤回!やっぱりペンギンは女の敵だ!ベッド持ってきたら何か硬いものをぶつけてやる…!


「……あ…」


硬いもの硬いもの、と袋の中から候補を出してみる。
その中に見つけたのは、私が最近大事に育てていたサボテン。
これも、持ってきてくれたんだ……


「おーいナマエ、ベッド持って来たぞ!どこに置く?」
「早くしろよナマエ!これ重い!」
「………ここ!」


こ、今回はサボテンに免じて許してあげよう。





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