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06

「マールーコーーー」
「はーなーれーろーーー…!!」


甲板の上。今日もマルコとナマエの攻防戦が繰り広げられていた。
船の縁に寄りかかって海を眺めていたマルコに、背後から抱きついたのはもちろんナマエ。
すぐに犯人がわかったマルコは上体を少しねじってナマエの頭を掴んで離そうとするが、マルコの腹部にまわるナマエの腕の力は半端なく、なかなか離れない。さすが、戦闘員なだけはある。マルコもこの体勢では力が入れにくいみたいだ。


「はぁはぁ、マルコのにおい……」
「お前ほんといい加減にしろよい…。」


マルコのシャツに顔を埋めて、空気と一緒に思いっきりマルコのにおいを堪能するナマエに正直マルコはゾッとした。


「マルコーーー」
「離れろよい。」
「私カゼ引いちゃったかも。」
「…無視か。」


マルコの「離れろ」という言葉は綺麗に無視して、ナマエはより一層マルコのシャツに顔を押し付けた。


「なんかね、寒気がするの。」
「そーかい。じゃあ今すぐ布団に入れ。」
「だからマルコで温まろうと思って。」
「布団で温まれ。」
「ずずっ…」
「おい、今絶対鼻水つけたろい。」
「だ、唾液です…!」
「どっちも気持ち悪いよい!」


いつもなら「もーマルコってば本当は嬉しいくせにっ」ぐらい返ってくるはずだが、ナマエはただただマルコにしがみつくだけだった。代わりにもう一度鼻をすする音が聞こえた。どうやらカゼというのは本当らしい。


「……ナマエ、本当布団に入れ。おれに抱きついてても温まらねェし治るもんも治んねェぞ。」
「ん……」


マルコが言い聞かせるように言うと、ナマエは大人しくマルコから離れた。
そこでマルコが初めてナマエの顔を見ると、いつもより顔色が悪いし、明らかに辛そうだ。カゼを引いたかもじゃなくて、完璧引いてる。これは。


「ごめんね。マルコに移しちゃったら悪いもんね…。」
「……」
「…いや、それはそれで何か興奮するけど……」
「早く行け!!」


ナマエの寂しげな表情に少し心撃たれたマルコだったが、二言目にはもう変態発言だ。
カゼは引いても根本的なところは変わらないらしい。


「はぁ…。エースに温めてもらお…。」
「!?」


肩を落としてとぼとぼと船内へと歩いていくナマエ。
その時に零した言葉に、思わずマルコは#name2#の肩を掴んで引き止めた。


「……どうしたの?あ、鼻水と唾液つけたシャツなら喜んで洗濯するけど…」
「違ェ。お前、今何て……」


ナマエに洗濯されたマルコのシャツが持ち主のところにちゃんと返ってくるかは怪しいところだが、今のマルコはそんな事気にする余裕がなかった。


「エースに温めてもらお…って…」
「バカか!布団で温まれ!!」
「だって布団だと温まるまで時間かかるんだもん。エースはいつでも温かいんだよ。」
「ダメだ!!」


断固として許さないマルコ。
エースとナマエはスペード海賊団の時からの仲間であり、2人の間に恋愛感情なんてこれっぽっちもない。
それでもマルコにとっては、ナマエがエースのところに行って温めてもらうなんて言語道断。すごい形相で止めてくる。


「マルコはエースの温かさを知らないからそんな事言うんだよ。一回エースに抱きついてみればいいよ。よし一緒に行こう。」
「アアアアホか!おれにそんな趣味はねェよい!!そうじゃなくてお前…!」
「…?」
「……エースにカゼ移しちまったら、どーすんだよい…!」


止める本当の理由なんて言えるわけがない。そして咄嗟に出た言い訳が、これだ。


「プププ!マルコ、エースはね、バカだからカゼとか引かないんだよ!」
「実際お前が引いてんだろい。」
「え?それって私がバカって事?」
「ああ。お前がやられるなんて相当強力なウイルスに違いねェ。やっぱりナースに診てもらえ。」
「えーーー」
「薬もらって安静にしてるんだよい。」
「…そしたらマルコに会えない。」
「……見舞いに行きゃ会える。」
「毎日来てくれる?」
「……ああ。」
「よっしゃーカゼ万歳!あだっ!」
「調子にのんな。」


ナマエの手を引いて医務室に向かうマルコ。
…その光景を、サッチやらエースやらビスタやらがニヤニヤと見守っていた。




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