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フラミンゴさん




「ほぶっ!?」
「………」
「ぺぺっ!ぎゃーー何てこった!!」
「………何だお前。」
「ほ?」


目が覚めたら何故か泥だらけて、サングラスをかけたお兄さんに見下ろされていました。










えーと、順番に思い出していこうそうしよう。
ここはグランドラインの春島。鳥さんがいっぱいいる島です。
エース隊長と一緒に上陸して、ご飯を食べてたけどエース隊長はお食事に時間がかかるから……私は一足先にお店を出て、目をつけておいたこの島の分の自分用お土産を購入した。
うん、ここまでは順調だ。泥まみれになる要素なんて何一つないよね。
えーと、その後……エース隊長はきっと寝ていてまだ時間がかかるだろうから、公園に行ったんだ!そうだここ公園だった!
公園にはいろんな鳥さん達がいて私にとってはたまらん場所です。ついついエサ売り場に3回足を運んでしまった程です。鳥さん達とたわむれるのに疲れて、私はベンチで休むことにしました。
それが私がさっきまで座っていただろうこのベンチだけど……何故私は落ちてるんだろう。そして何故知らない男の人がベンチに座ってるんだろう。
私が来た時には人の姿なんてなくて……あ、そうそう!このベンチ、ものすごく気持ち良さそうなピンクの羽毛が敷いてあったんですよ!もふもふ好きな私としては見逃せるはずもなく……ぽんぽんと触ってみたらこれが想像以上に気持ちよくて…!私はすっかりその感触の虜になってしまって、ベンチに座り込んだのです。それで多分、春のぽかぽかな天気のせいで眠くなってきてそこで寝ちゃったんだ。
よーし思い出した!これで全部だ!全部思い出したのに今の状況に全く繋がらないのは私の頭が悪いからかな?あ、でもベンチから落ちたのはわかる。
昨日は雨だったらしく、地面がぬかるんでたから今私の服や顔面が酷いことになってることもわかる。しかし、このお兄さんは何者だろう。


「おいお嬢ちゃん。」
「はっ、はい!」
「人を枕に使うたァいい度胸してんじゃねェか。」
「は……?」


よっこいしょと(言ってないけど)お兄さんがベンチから立ち上がった。
わあ、大きい人だ…。私が小さいのもあるけど、それでも大きいと思う。エース隊長よりずっと大きい。
お兄さんが立ち上がると、ベンチに敷いてあったはずのピンクの羽毛も一緒に持ち上がって……あ、あれ?何でお兄さんその素敵な羽毛を背中にしょってらっしゃるんですか。なんか、羽織ってる感じです…けど、ままままさか……!


「ごっ、ごごごめんなさい人だとは思わなくて…!そしてものすごく気持ち良くって…!!」


この羽毛はおしゃれなベンチの一部ではなくて、このお兄さんのおしゃれなファッションの一部だったのですか!!
ということは、この人はベンチに寝転がっていて、後から来た私は見ず知らずの人に思いっきり寄りかかってしまったわけですね…!な、なんてことだ…!!


「………」


オロオロしててふと見上げてみると、すぐ目の前にサングラスがあって思わず叫びそうになった。
えっと…、ガン見されてます。腰を折り曲げて、顎に手を当てて、ガン見です。サングラスで目は見えないけどこれだけ近かったら見るものは私ぐらいしかない、よね…。
そんな私なんて見ても何も面白いことは……いや、今の私はまさに罰ゲームをくらった芸人さんみたいになってるはずだから面白いのかも……。それでもやっぱり見つめられるというのは居心地が悪いもので、私は視線をあちこちに泳がせてしまう。


「……フッフッフッフ!!」


わ、笑われた…!確かに泥ついてるけど、顔見られて笑われるのってやっぱりショックだ…!


「いつまで座ってんだ?」
「へ?あ、ありがとうございます…」


す、とお兄さんの大きな手が差し出された。
私はその手を借りて立ち上がる。そ、そういうことだよね?金出せの手じゃなかったよね?


「あの…本当にごめんなさい!何てお詫びをしたらいいのやら…」


本当にどうやってお詫びをすればいいのかわからない…!お金は買い物をしちゃったから残り500ベリーしかないし……


「!」


どうしようかと思っていたら、ふわっと視界にピンク色が広がった。紛れもなくそれはお兄さんの羽織っていた超絶気持ち良い羽毛で……って何故!?


「あのっ…」
「ついてこい。」


視界を遮っていた羽毛をどけると、お兄さんの大きな背中が見えた。


「詫び、してくれんだろ?」
「!」


もちろんです!!
しかしお詫びとお兄さんについて行くことに何の関係が…?高級店に入って「これ買え」とか無理ですよ!「臓器売れ」とかも嫌ですよ!?


「こ、これは…」


そして何でこの超絶気持ち良い羽毛を私なんかに!?泥で汚れちゃったけどこれも私のせい!?


「そんなみすぼらしい格好の奴に隣を歩かれたくねェ。」
「ご、ごめんなさい…」


た、確かにそれはそうですよね…!こんな泥だらけの人が隣を歩いてたら何だ何だってなっちゃいますもんね…!


「あの…!私、何をすれば……」
「……ついてくりゃァいい。」
「は、はい…。」












「お待たせ致しました。ドンキホーテ・ドフラミンゴ様。」
「………あ、の…」


ついていったらこうなりました。
お兄さん…改めフラミンゴさんに連れてかれたのはとてつもなく高級そうな洋服屋さん。着くなりフラミンゴさんは「任せる」と一言だけ言って私を店員さんに突き出した。
そしてそれからはもう……美人の店員さんのなすがままですよ…。
まず泥のついた服を脱がされ、ななななんと下着まで脱がされ、自分で買うには勇気が足りないような下着を着せられた。
服もなんかものすごくて……いや、可愛いんだけれども、とりあえず肌の露出が多すぎやしませんか…!真っ白のふわふわのスカートは可愛いけどちょっと短めだし、お腹は出てるし……あ、でも羽毛のロングジャケットはものすごく気持ちいいです!
それからお化粧もしてくれて甘い匂いがする香水もつけてくれて……なんだか普段の自分と180度変わった気分でドキドキする。
いやしかし何でこんな状況に?


「フッフッフッフ…!!」


そんな私の姿を見て、フラミンゴさんは笑い始めた。
そ、そんな爆笑しなくても…!似合ってないのは自分でも承知の上ですけど!というか、私の意思ではないんですけど…!


「行くぞ。」
「ほっ!?」


うんうんと考えていたら急に手を引かれて、思わずフラミンゴさんの腕にしがみついてしまった。
靴も可愛いのに替えてくれたんだけど、私こんな高いヒールはいたことがないからうまく歩けませんよ…!


「ごめんなさい…!」
「フフフ……掴まっとけばいいじゃねェか。」
「!」


思いっきり体重をかけてしまったというのに笑って許してくれるなんて……フラミンゴさんはいい人だ!見た目はちょっと恐いけど…。
でも、悪い人ではないはずだ!悪い人はこんな至れり尽くせりなことしてくれないし!
だからと言っていい人もこんなことはしないと思うんだけれども……未だに意味がわかりません。何で私、こんな格好になってるんだろう。
私が着ていたTシャツに泥がついちゃったから…と言われても、その代えにこんな素敵なお召し物なんて……釣り合わなさすぎる…!!


「あの、どこに行くんですか?」
「……その腹のマーク、本物か?」


質問したのに、質問で返されてしまった…!
お腹のマーク……は、オヤジ様のマークのことだよね。とりあえず答えなきゃ。


「はい!わ、私の誇りです…!」


エース隊長がよく言っている言葉を真似してみた。このマークを誇りだと思うのは間違いないんだけど…いざ、こう…口にすると恥ずかしいなあ…!
私の口から「誇り」って、格好良すぎて逆に滑稽に見えてしまう気がする。


「フッフッフッフッフ…!!」
「……」


……でもそこまで露骨に笑われるとショックです…。


「面白くなってきやがった…」
「……フラミンゴさん?」
「…ドをつけろ。」


まだフフフと笑いをこらえながら、フラミンゴさんは私の肩に手をまわした。
ただでさえ私はフラミンゴさんの腕を掴んでるのに、その手に引き寄せられて更にフラミンゴさんとの距離が近くなる。歩きにくくなって私は立ち止まってしまった。それでもフラミンゴさんは手を離してくれない。それどころか、更に強く私の肩を引き寄せる。


「どこに行くのかと…聞いたな。」
「え…あ、はい。」


横に居たフラミンゴさんはいつの間にか私の前に来ていて、サングラス越しに私を見ていた。


「知りたいか?」
「……は、はい。」


そりゃあ、知りたい。何だかもったいぶらす様な言い方に思わず喉が鳴った。


「……おれも海賊だ。」
「!」


な、なんと!いやでもそこまで驚きはしません。一般人だとは思いませんでしたから!


「そんでおれはお前が気に入った。」
「え…」


これは…何だ?褒められてるのかな、私。


「海賊ってのは欲しいモンは手に入れねェと気がすまねェ性分だ。」
「…?」
「…それが人のモンなら…尚更な…。」
「!?」


ニヤッと笑うフラミンゴさん。えーと、つまりそれは………どういうことだ?






■■
「ドをつけろ」って言わせたかった。




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