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1月1日


「おまえら今年も一年ありがとー!」
「おいサッチが脱いだぞ!」
「よーし踊れ踊れ!」


今日は12月31日。あと少しで1年が終わろうとしている。
こんな日に白ひげ海賊団がおとなしく眠っているわけもなく、今夜は船上で夜通しの宴。酒なら3日程前に寄った町でこれでもかというほど買い込んだ。
今日だけはいつもの軽いノリの宴とはわけが違う。時計の針が12時を過ぎたと同時に新しい年と、それに加えてエースの誕生日を迎えることになるのだ。こんなめでたい日を騒がずには過ごせない。


「野郎共、集まれェェーー!!」


サッチの合図とともに、クルーたちがいっせいに集まりだした。その中心にいるのはエース。
肉を頬張りながらその様子を不思議そうに眺めたが、どうせカウントダウンでもするのだろうとそのまま肉を食べ続けた。


「「「10!!」」」


エースの予想通り始まったカウントダウン。あと10秒で1月1日になる。
ナマエは輪にうもれながら、ドキドキと鳴る心臓を落ち着かせようと深呼吸をしていた。


「いいかナマエ、言われた通りにやれよ。」
「はっ、はい!」


ジョズに言われて、元気よく返事をしたが、その声は緊張のせいで震えている。
これから10秒後、年が変わると同時にエースの誕生日をみんなで盛大に祝っちゃおう大作戦が行われていようとした。
このことはエース以外のクルー全員に伝えてある。いわゆる、ドッキリというやつだ。
ナマエが緊張している間も、刻一刻とカウントダウンが刻まれていく。


「「「3!!」」」
「エース。」
「ん?」


輪の中心にいるエースにマルコが近づいた。


「「「2!!」」」
「おれたちからのプレゼントだ。ありがたく受け取れよい。」
「は?」
「「「1!!」」」


マルコはしゃがんでいたエースを立たせて、背中を押す。その反対側ではジョズによってナマエが集団から前に出された。


「エースっ、誕生日おめでとう!!!」
「!!」


モビーディック号の甲板にナマエの声が響いた。その後数秒間、静寂が訪れる。
エースはナマエを凝視したまま固まっている。その手に持たれていた肉が床に落ちたと同時に、一気にエースの顔が赤く染まった。
それに呼応するようにナマエの顔も真っ赤になって、周りをキョロキョロ見回した。


「……ほっ!?え、あの…え!?」


周りのクルーたちは一様にエースとをナマエ見てニヤニヤしている。
ナマエが聞いていた話と大分違う。サッチに言われたのは、カウントダウンの後の合図でみんな一斉に「おめでとう」と言って、そのままどんちゃん騒ぎ。
しかし今の状況はどうだろう。「おめでとう」を言ったのはナマエだけだし、どんちゃん騒ぎとはかけ離れた静けさだ。


(こいつら…)


ナマエの驚いた反応に、ニヤニヤとしたクルー達。エースはなんとなく状況を理解した。


「ほら、早くいってきな!」
「ほっ!?」


ジョズに背中を押されてまた一歩エースに近づく。
ナマエの腕にはいつのまにはぶかぶかの腕輪が。エースにプレゼントしようと、前の島でナマエが用意していたものだ。
驚いてジョズを見ると親指をたてて笑顔を向けられた。周りのクルーたちを見渡しても同様に親指と笑顔。
ナマエは覚悟を決めてエースに近づいた。


「えええエース隊長…!」
「な、なんだ?ナマエ…」
「わ、私…」


緊張の所為でどもりまくるナマエにつられて、エースまで緊張してきた。ナマエはバクバクと鳴る鼓動を聞きながら震える唇を一生懸命開く。


「…この船のみなさんが、好きです…」


ナマエの一言に、クルー一同が「違うだろ!!」と心の中で突っ込んだ。
エースに誕生日プレゼントを渡すのに「皆が好き」は、ないだろう。しかしナマエの言葉はまだ終わっていない。


「でもっ…」
「……」
「…エース隊長が、一番好きです…!!」
「!」


一生懸命振り絞った声は細くて震えていたが、しっかりとエースの耳に届いた。
普段ナマエからストレートな言葉なんて聞けない。聞き慣れないナマエの「好き」にエースの心音が加速する。


「私、この船に乗せてもらえて…エース隊長に出会えて、本当によかったです。」


緊張のピークは超えたのか、ナマエは幾分落ち着いて言葉を紡いでいった。それでも顔は真っ赤だ。そして小さな手でエースの右腕をとって、自分がしていたぶかぶかの腕輪をそこにはめた。


「ナマエ…」
「……エース隊長!」


ナマエが手を離した後もエースの腕はそこから動かなかった。
はめてもらった腕輪を見つめていると、何かあたたかい感情がこみ上げてきてどうしようもなくなる。
ナマエは一回俯いて、それから勢いよく顔を上げた。


「生まれてきてくれて、ありがとうございます。」
「!!」


その言葉を聞いた瞬間、エースはナマエを力強く抱きしめた。熱くなる目をぎゅっと閉じてナマエの腰を引き寄せ、髪を優しく撫でる。


「え、エース隊長っ…」
「ナマエ…」


周りの視線を気にしてナマエがエースの名前を呼ぶと、エースは愛おしそうにナマエの名前を呼んだ。腰にまわされた腕の力が緩んだのでエースの胸板を軽く押すと、額に暖かい感触。


「…ありがとう。」
「どっ、どういたしまして…!」


それがエースの唇だとわかる頃にはもう離されていて、ニカッといつもの笑顔を浮かべたエースが視界に入った。
最初は顔を真っ赤にして視線を泳がせたが、数秒後、ナマエもへらっといつもの笑顔で返した。


「ヒュー!」
「見せつけてくれるぜ!」
「悪ィが今夜はおれ達に付き合ってもらうぜ!!」
「エース、おめでとうのチュウしてやろうか!?」
「…てめェら少しは空気読めよ…。」


1月1日……宴は始まったばかりだ。




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