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私からのキス


エース隊長の様子がおかしい。
いや、いつも通り洗濯の合間とかにお話はするんだけど、その話の最中でも気付いたらぼーっとしてる。しかも私を見ながら。
「どうしたんですか?」って聞くと「悪ィ」と言って目をそらす。そのやりとりをもう何回繰り返したことか。
エース隊長がこんな感じになったのは……確か昨日からだ。私、何かしちゃったのかなあ…。でも怒ってる感じじゃないよなあ…。別にケンカをしたわけでもないのに、なんとなく寂しいのは何でだろう。


「………」


考えたってわかるわけない!こうなったら思い切って本人に聞くべきだ!










コンコン


「エース隊長ー!」
「!!」


というわけで、エース隊長のお部屋に来ました。
ノックするとドタバタと音がして、すぐに扉をあけて中に入れてくれた。


「ど、どうしたんだ、ナマエ。」


私を見つめるエース隊長は、心なしかそわそわしている気がする。視線が右にいったり左にいったり。
………やっぱりおかしい…!


「エース隊長、昨日から変です。」
「……え?」
「あの……言いたいことがあったら、遠慮せずに言ってください…!」


きっとあの様子だと、何かを言いたいけど私に気を遣ってくれて言えないんだ。
何だろう……「お前最近太ったよな」とか?うわあ、ショックだ。それとも「やっぱりお前のこと好きじゃない」……ああああこっちの方がショックすぎる…!!


「……ナマエ…」
「は、い…」


エース隊長が真剣な表情で私の両肩に手を置いた。
あの、自分で聞いといて何ですが、ものすごく待ってほしいです…!だってそんな、私まだ心の準備が…!今「好きじゃない」とか言われたら間違いなく私泣く!


「キスしてェ。」
「……ほっ!?」


覚悟してぎゅっと目を瞑ったら、エース隊長からは意外な一言。
「キスしたい」
今、確かにそう言った…。
目を開けてエース隊長を見ると、やっぱり真剣な表情で私を見つめている。ほんのりと頬が赤くなってて、私もエース隊長以上に顔が赤くなった気がした。


「キス…、したいんだ。」
「………」


もう一回エース隊長が言った。そういえば……昨日、キス……してない。


「……私、も…したいです…。」
「!」


言ってから更に顔が熱くなった。
もしかして「キスしたい」ってずっと言いたかったのかな…?で、でもキスだったらいつも聞かずにしてくれるのに……何で?


「………ナマエ…」


エース隊長が大きな手で私の頬を包み込んで小さい私に合わせて身をかがめた。私は目を閉じてキスの準備をする。


「…………?」


けど、なかなか唇が触れてこない。
目を開けてみると、エース隊長の顔がすぐ目の前にあって吃驚した。な、なんで人のキスを待ってる顔を見つめるんですか!ものすごく恥ずかしいんですけど…!そう言う前に、エース隊長はニッと笑って目を閉じた。


「!」


エース隊長の顔はその場所を動かない。目も瞑ったままだ。これじゃまるで、キスを待ってるみたい……も、もしかして……私、から…!?そそそそんな大それたこと…!
でも…思い返してみれば、私からキスしたことって……無いんだよね…。エース隊長は私からキスしてほしかったのかな…?


「………」


だったら応えないと。
私はエース隊長がキスしてくれるとすごく幸せになる。エース隊長も…そうだったら嬉しいな。
私は右手をエース隊長の頬に、左手を私より少し上にある肩に置いた。至近距離にあるエース隊長の顔、右手に感じるそばかすの感触……エース隊長の全てが、私をドキドキさせる。


「………」


心臓がうるさく脈打つ傍らで、目を瞑っててもかっこいいななんてどこか冷静に考えてる自分がいた。
そしてそっと、自分の唇をエース隊長のそれを合わせる。柔らかくて、暖かい感触。自分からするといつもとは違うように感じた。唇のとても小さな血管の動きさえ伝わってくるほど、私の感覚は研ぎ澄まされていた。


「………」
「………」


ゆっくりと唇を離してエース隊長を見上げると、丁度エース隊長も瞼を開くところだった。エース隊長に触れていた手もぎこちなく離して、エース隊長と見つめあう。
エース隊長の頬がさっきより赤くなったのは気のせいじゃないと思う。きっと私の顔はもう真っ赤だ。


「…ど、どうでした…?」
「……プハハ!」


しばらくの沈黙の後、私がそう聞くとエース隊長は小さく噴き出した。
え、私笑われるようなことを言ったつもりはないんですけど……むしろ笑われると、ショックなんですけど…!


「いや、まさか感想を求められるとは思わなくてよ。」


……確かに、キスの感想を求めるなんてこと普通はしないのか。
だ、だって自分からキスしたのなんて初めてだったし、エース隊長みたいにうまくできたか心配で……


「すげェ、最高だった。」
「!」


ニカッと笑ってくれるエース隊長に、私の胸が高鳴る。


「でも…」
「!」


そしてまたエース隊長の大きな手が私の頬を包んだかと思うと、


「練習が必要だな。」


キスされた。







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