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オヤジに相談

「オヤジ…」
「グララララ!どうしたエース、そんな神妙な顔をして。」


翌日、思いつめた顔をしたエースが白ひげの部屋を訪れた。
白ひげは酒を片手に、まるでエースが来るのがわかっていたかのように大きなベッドに腰を下ろしていた。
そして言い出しにくそうにしているエースに、自分の隣を叩いてみせる。


「おれ…、ナマエが好きだ。」
「んなこたァ知ってる。」
「…でも覚悟がねェ。」
「……何の覚悟だ。」
「ナマエは…おれの血を知らねェ…」
「……」
「だからって今更言う気もねェし、このままの関係でいいって思ってた。」


酒を煽りながらも、白ひげは息子が一生懸命紡ぐ言葉に耳を傾けた。
エースは自分の膝の上に拳を置き、強く握り締めた。


「でも……ダメなんだ…!おれ、本気でナマエのこと…っ…」
「だったら手に入れりゃァいいじゃねェかアホンダラァ。」
「……それも、できねェ…怖ェんだ……」


長い時間を一緒に過ごしてきて、エースのナマエに対する想いはどんどん大きく、確かなものへと変わっていった。
それを痛い程実感してるのはエースで、だからこそその想いを簡単に伝えることなんてできなかった。
更にエースは自分の血…つまり、自分が海賊王の息子であるという事実を伝えるのが怖いのだ。
告白して今までの関係が崩れるどころか、その事実をナマエが知ったら二度と近づくことは許されないのではないか…そこまで考えてしまう。


「エース、お前……」


コンコン


「あのっオヤジ様!ナマエですけど…」
「!!」
「今、いいですか…?」
「……ああ、入れェ。」
「!!」


白ひげが何かを言いかけた時、ノックの音と共に聞こえてきたのはナマエの声だった。
エースがいるにも関わらず入室を許可した白ひげに驚き、咄嗟にエースは白ひげの後に身を隠した。


「お、お邪魔します…。」
「…どうした、珍しいじゃねェか。」


ナマエが船長室を訪れることは滅多にない。
そのせいか少し緊張しているようで、いつもより背筋を伸ばしている。
そんなナマエを小さく笑って、白ひげはエースと同じように自分の前へと促した。


「えっと、折り入って相談がありまして…」
「何だ、言ってみろ。」
「………昨日…、エース隊長の様子がおかしかったんです。」
「!!」
「……」


エースが同じ部屋にいるとは知らずに、ナマエの相談事とはエースのことだった。
昨日の様子というのは、エースが酒場でロジャーのことを口にする輩に会って帰ってきた時のことだ。
精神的に落ち着かなかったエースは無意識にナマエを求めて船内をさまよっていた。
そして実際にナマエを目の前にして、自分の生い立ちを自覚して唇を噛み締めたのだった。


「何か…思いつめてるようでした…。オヤジ様は何か知ってますか…?」
「…いや、知らねェなァ。」
「そうですか…。」


最後はうまく笑ったつもりだったが、ナマエにはバレてしまったらしい。
白ひげに聞いても結局原因はわからず仕舞いで、ナマエは俯いて、そのまま言葉を続けた。


「私は…ただの雑用で、弱いし、どんくさいけど……みなさんの力になりたいんです。」
「……」
「エース隊長の笑顔が…、見たいんです…。」
「!」
「オヤジ様、私、どうしたらいいんでしょう…?」
「グララララ!そいつァ自分で見つけな!」
「う……」


原因はわからなくても、エースのために何かしたい。笑ってほしい。
…それが今のナマエの願いだった。


「ただ……あいつの事、愛してやってくんねェか?」
「…!」


愛する息子のことをこれほどまで想ってくれている可愛い末っ子に、白ひげは優しい瞳を向けた。
白ひげがナマエに言った言葉に、エースの肩がピクリと動く。


「…それなら大丈夫です!私はずっと前から、エース隊長をあいしてますから!」
「!!」


「愛」……それはエースにとってあまり縁がないものだった。
それ故に愛すること、そして愛されることに戸惑いを感じ、しかし誰よりもそれを欲していた。
そんなエースに対してナマエはその言葉をあまりにもサラッと言ってのけたのだ。


「グラララ!そうか!余計な事言っちまったなァ!」
「オヤジ様もあいしてますよ!」
「…ああ、わかってる。」
「えへへ。」


白ひげの大きな指で頭を撫でられると、ナマエは嬉しそうにはにかんだ。


「……そろそろ風呂入って寝な、ナマエ。」
「…はい、そうします!ありがとうございました!!」


きっと今のナマエにとって白ひげに向けた愛とエースに向けた愛に差異はない…
わかっていても、エースにとってその言葉はずっと欲しかったもので、白ひげの大きな背中の後ろでその幸せの余韻を噛み締めていた。


「………だってよ、エース。」
「………」
「まったくナマエには敵わねェなァ。」
「……うるせェ…」


ナマエが出て行った後もエースはしばらくその場を動けなかった。







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