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ナマエがとある島で犬を拾ってきた。
どうやら右足を怪我しているみたいで、船医に診てやってほしいと頼んでいた。
別に誰もが動物愛護心を持ってるわけじゃねェ。
だがおれを始めとするクルーはみんなその犬に釘付けになった。
何故なら、その犬の鼻の下にはオヤジとお揃いのひげがあったからだ。









「おおワン公!怪我治って良かったなァ!」
「飯食うか?コックが美味いの作ってくれたぞ!」


あれから1週間。
犬の怪我は完治してきたようで、最初は引きずっていた右足も今じゃ随分動かせるようになっていた。


「ふふ、人気者ですね。」
「ん……まあ…そうだな。」


シーツを干しながらナマエが笑う。
まったく、天下の白ひげ海賊団のクルー達が一匹の犬にメロメロなんて笑っちまう。
…ま、しょうがねェか。オヤジとお揃いのひげつけられちゃあなァ…。


「ワン!」
「おわっ」


ぼんやり眺めていたら、いつの間にかその犬がおれの目の前まで来ていた。
犬は鼻先でナマエの足をつついて、頬をすり寄せる。なんだかんだ言ってナマエに一番懐いてる。
ナマエが助けてくれたからだけじゃなくて、ナマエの素質がそうさせるんだと思う。


「ナマエと一緒に飯が食いたいんだとよ!」
「いいなーナマエ、懐かれてて。」
「えへへ。もう少しで終わるから待っててね。」
「ワン!」


ナマエが腰をかがめて犬の頭を撫でると、犬は嬉しそうに一声あげた。
そしてナマエの邪魔にならないところ……おれの隣にきちんとお座りをしてナマエの仕事が終わるのを待つ。


「お前かしこいな。」
「ワン。」


おれも頭を撫でてみたが明らかにナマエの時とテンションが違った。
まあ……いいけどよ…。


「お待たせしました!ご飯食べに行きましょう!」
「おう!」
「ワン!」
「(犬が2匹…。)」










「ワン!ワン!」
「あははっ、いいこいいこ!」


メシを食い終わった後、ナマエは犬とかくれんぼをして遊んでいた。
犬は木箱の裏に隠れていたナマエを見つけて尻尾を振って駆け寄る。
ナマエも嬉しそうに犬を抱きしめて、その頭を撫でてやる。


「微笑ましいなァ…」
「ああ……なんかいいよな。」
「………」


それを遠巻きに見る大人数名(おれ含む)。
確かに、女が犬とじゃれてる様子は心を和ませるものだ。
だけどなんだ、なんつーか、おれはあんまり和んでないっつーか……いい気分じゃない。


「…犬に嫉妬するなよい、エース。」
「………してねーよ。」


一応口では否定しといたが……まったくマルコの言うとおりだ。
何犬なんかに妬いてんだよ……ガキか、おれは…。


「エース隊長!」
「うおわっ」


気付けばニコニコしたナマエの顔がおれを覗きこんでいた。
犬といい、今日は不意打ちが多いな…。


「隠してください!」
「…は?」


おれの返事は聞かずに、ナマエは甲板に座るおれの背後に回りこんでそこに腰を下ろした。
ナマエの背中の一部がTシャツ越しに触れた。
やがて後ろを向いていた犬が振り返り、耳や鼻を動かし周りを探り始めた。
……なるほど、おれの後ろが隠れ場所に選ばれたってわけか。
ナマエはおれの後ろでできる限り身を小さくして、息を押し殺してる。


「ワン!」
「わあっ」


しかしまあ…犬の嗅覚は人間の10倍はあるっつーことで、簡単に見つかってしまった。
おれの背後、つまりヒヨの正面に回りこんだ犬はナマエに飛びついたらしく、一部しか触れていなかった背中がぴったりとくっついた。
犬……よくやった…!


「エース……」
「う、うるせェ!」


マルコから呆れた視線が送られてきた。…まあ、自業自得だ。






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