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まずい果物

「サブさん!これ食べられますか?」
「んー…こりゃ食えねェな。毒キノコだ。」
「おいナマエ、お前それさっきも拾ってきたぞ。」
「えっマジですか!」
「ははは、そんなに食いてェのか?」
「そりゃ体からキノコが生える茸っつってな、体からキノコが生えちまうぞ!」
「えええ!!」


なんて危険なキノコなんだ!って思う前にまず、なんて安直な名前なんだ!って思って、引っこ抜いたキノコをぽい、と茂みの中に捨てた。
…はい!ただいまジャングルの中です!
どうやらこの島は無人島だそうで、私はコックさんたちと一緒に食材探しをしています。
本当はナースさんたちを誘ったんだけど、「こんな虫だらけのところ行きたくない」だそうで…。
こんな楽しそうなジャングル、行かないなんてもったいない!
土のにおいがいい香り。海のにおいも好きだけど、やっぱりたまには地面が恋しくなるよね、人間だもの。


「あ!」
「ん?」
「今度はどんな毒キノコ見つけたんだ?」
「えへへ、木の枝です!」
「枝ァ?」
「そんなもんどうするんだよ?」
「持つんです!」
「「「?」」」


だって、ジャングルの冒険には木の枝はつき物なんですよ!必需品です、必需品。
それにしてもいい感じの木の枝だ!今までで一番いい感じかもしれない!
船に持って帰って花瓶に挿しとこう。ちゃんとみんなに捨てないでって言わないと。


ガサッ


「ほ?」
「ひっ…」
「な…」
「う…」


ふんふんと鼻を鳴らしていい感じの木の枝を振り回しながら歩いていると、前方の茂みが動いた。
葉っぱをかきわけて出てきたのは、細長くて、緑色の……


「「「ぎゃーーーー!!!」」」


蛇……なんだけどあれ、みなさんちょっとどこに行ってしまうんですか!
そんなことを言う間もなく、みんなの姿がジャングルの中に消えていってしまった。


「行っちゃった…。」


取り残された私と蛇。
うーーーん、どうしよう…。










「ハァ…ハァ…」
「お、追ってこないよな…?」
「あ、ああ…。」
「…いや、ちょっと待て…」
「どうした?」
「ナマエがいねェ…!!」
「「なにーーー!?」」










「蛇さん、これ食べられる?」
「シャーッ」
「そっかーありがとう!」


しばらく待ってみても3人は戻ってこなかったから、船に帰っちゃったのかな。
でも出航時間までまだあるし、まだ冒険は始まったばかりなので私は更にジャングルを突き進むことにしました!
目利きがきかない私の代わりに蛇さんが品定めをしてくれるから食材探しも順調だ。
片手にいい感じの枝を持って、もう片方の腕には蛇さんが巻きついていて、なんかすごく冒険してる感じ!


「あ!」


前方の木の枝に、なんか見たことない果物が生ってる!
不思議なことに果実が生ってるのはその枝だけで、木は同じなのに他の枝には葉っぱだけで何もできていなかった。
…ラス1だ!これは取るしかないでしょ!


「よっ…」


私は持っていたいい感じの枝で、果実の根元を何回かつつく。
5回目くらいでその果実はぼとっと地面に落ちてきた。
拾い上げてみると、それは桃みたいな形をしていて、なにやらグルグル模様がある…見たこともない果物だ。
でも形は桃だからなあ…桃なのかな…だったら私、桃大好物なんですけど!


「蛇さん、これは食べられる?」
「シャーッ」


聞くと、蛇さんは一回首を上下に動かして頷いた。蛇さんが言うなら間違いないよね!


「……蛇さん、これ食べていいかな?」
「シャーッ」


だ、だって初めて見る果物だし、私桃好きだし……どんな味がするのかなって…。
蛇さんに聞いてみたら元気良く頷いてくれた。……蛇さんが言うならいいよね!


「いただきます!」


ぱくっと一口め。
うーん、食感は桃と同じだ。いい感じの柔らかさで、味は………


「ん?」


よくわからなかったから、もう一口。


「まず!!」


ものすごくまずかった。
あれ、一口めは別にまずいなんて思わなかったのにおかしいな…。
気のせいかと思ってもう一回食べてみるけど、やっぱりまずい。


「うえ…」


で、でも一口かじったからには全部食べなきゃ…!証拠隠滅をしなければ!









「ナマエ!!」
「ひゃっはい!!」


最後の一口を口に含んだところで、大声で名前を呼ばれた。声ですぐにエース隊長だってわかった。
吃驚して大して噛まずに喉に通してしまった…あー後味悪い…元々味自体が悪いんだけれども…
それより何でこんなところにエース隊長が?確かエース隊長は食事中すなわちお昼寝中だったはず。


「どうしたんですか?こんなところで。」
「そりゃこっちのセリフだ!」


す、すごい剣幕でつっこまれてしまった!
なんだなんだ、私何かエース隊長に怒られるようなことしたかな…?


「コックたちが、ナマエとはぐれたっつって……ってお前腕に蛇ついてるぞ!!」
「はい、蛇さんです!材料探しを手伝ってくれたんです。」
「……は?」
「それより見てくださいこれ!よくないですかこれ!」
「……」


私はエース隊長にいい感じの枝をぶんぶん振り回して見せる。
だけどエース隊長は無反応だ。というか、ぽかんとしてる。
あれ、エース隊長ならこの枝の良さわかってくれると思ったのにな。


「エース隊長?」
「………いや…まあ、無事ならいいんだ…。」
「!」


もしかして、心配して探してくれてたのかな…?……だとしたら、すごく嬉しいな。
思わず顔がにやけてしまうけどダメだ私!平然を装うんだ私!エース隊長に気持ち悪いって思われてしまう!


「…で、食材は見つかったのか?」
「はい!大漁です!」







■■
能力者にします。





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