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青キジさん


「すごいっ…!4段アイスなんて…!!」


こんにちは!私達白ひげ海賊団は今、とある夏島に停泊中です!出発は明日の朝だからまだまだ時間はあります!
そしてこれ!見てくださいすごくないですかこれ!
さすが40度越えの夏島!4段アイスとはやりおる…!3段までは私の故郷でもあったけど4段とは…。
バナナにイチゴに桃にメロン…私の好きなものがこんなにもつまってるなんて幸せすぎる!
この喜びを誰かに伝えたいけど、残念ながら私は今1人で公園を歩いています。
あ、いや、さっきまでちゃんとナースさん達と買い物をしてましたよ!
このTシャツとかナースのミランちゃんとおそろいで買っちゃったし!
なんでもこの島の有名なデザイナーさんがデザインした服とかで。他のナースさん達もセクシーな服を買ってた。
買い物が終わるとナースさん達は紙袋を両手に船へ戻っていってしまいました。「疲れた」だそうで。
私はまだまだこの島を冒険し足りなかったから、一人でぶらぶらしてるってわけです。
そしたらこんな素敵なアイスを見つけたんだもんなー!
うーん…誰かに見せたいけど早く食べないと溶けちゃうしなあ……でもやっぱりこの喜びを共感したいなあ…。
エース隊長とか、すごくわかってくれそうな気がする。どっかにエース隊長いないかなー。


どんっ

べちょ


「――――!!?」
「………」


……アイス、なくなりました。








「あーあー…」
「ごっ…ごごごごごめんなさいーーー!!!」


エース隊長いないかなーなんてキョロキョロしながら歩いてたら……これだよ…!
人にぶつかってしまいました。そしてその人の服にアイスがべっとりついてしまいました。更に残りのアイスは地面に落ちました。
もう、本当自分のとろさが嫌になる…!
見ず知らずの人にぶつかった挙句アイスを服にべっとりプレゼントなんて……お、怒ってらっしゃるに決まってるよね…。


「………」


恐る恐る見上げ…ようとしたら、なかなか顔まで辿りつかなくて思ったより時間がかかった。
この人………でかい…!!これ、私の倍くらいあるんではないだろうか……。最後まで見上げたらガッチリと目が合った。
無表情だからよくわかんないけど、とりあえず大きいってだけで私にとってはものすごい威圧感でして……嫌な汗がダラダラと出てくる。


「悪いね、お嬢ちゃん。視界に入ってなかった。」
「ほ…?」


ゲンコツでも降ってくるのだろうかと思って目を瞑ったら、大きな手で頭をぽんぽん、と撫でられた。
や…優しい人だああ…!!


「悪いのは私です!!純白の服を汚してしまってごめんなさい!!」
「いーのいーの。洗えばとれるし。」
「精一杯拭かせていただきます!!」
「………」


とりあえず私はバッグからポケットティッシュを取り出して、服にべっとりついたバナナとイチゴアイスの部分をふき取ることにした。
本当は「洗濯して返します」って言いたいところだけど、出航が明日だからそれはできない…。


「あの、何かお詫びをしたいんですけど、私にできることありますか…?」
「ん?じゃあ……今夜どう?」
「今夜?……あ!晩御飯を奢ればいいんですね!わかりました!」
「……いや、やっぱいい。おれが悪かった…。」
「?」


よくわかんないけど謝られてしまった。悪いのは私なのに…。
こうなったら何が何でもお詫びしないと私の気が納まらない!


「…そうだ!アイス買ってきますね!」
「いや別に…」
「待っててくださいね!」
「…あらら、行っちゃった。」







ということで、アイスを片手に公園に戻ってくると、噴水の前にあの人が座ってるのが見えた。
座っても大きい人だなあ…見つけやすくて助かる。
本当は奇跡の4段アイスをご馳走させたかったんだけど、その…私のお財布の都合で1段だけです。
アイス屋さんについてから味聞くの忘れてたことに気付いたからとりあえず無難なバニラにしといた。
大丈夫、バニラ味が嫌いな人に、私はまだ会ったことがない!


「うわあああん!」
「……?」


噴水に向かっていると、子どもの泣き声。
キョロキョロ見渡してみると、アスレチックの天辺のところにしがみつく男の子の姿。
下にはそれを心配そうに見つめてる女の子。…この状況からして、降りれなくなっちゃったのかな?
こうしちゃいられん!私は噴水に向かっていた足を90度方向転換した。


「どうしたの?」
「お、弟が…、降りれなくなっちゃった…!」


女の子は大きな瞳から涙をボロボロと零して答えた。
きっと心配でたまらないんだろうな。でも助けられなくて…不安なんだ。


「私に任せて!」


私は女の子に持っていたアイスを預けて、アスレチックを登ることにした。
子ども用の遊具は私にとって少し窮屈だけど、私木登りは得意だからね!なめちゃいかんよ!
ほら、あっという間にもうこんな近くまで来た!


「ううう…」


…けど、男の子がいるのは塔の天辺みたいな形をしてて、とても私が入るスペースはない。
あんなところに登るとは、この男の子もなかなか木登りのセンスがあるよね!


「おーい!」
「ふぇっ…?」
「おいで!!」


私は下から男の子に声をかけて両手を広げた。
私は行けないし、だったら来てもらわないと。


「で、でも…」
「大丈夫!絶対受けとめるから!!」


ごくり、と男の子が息をのむのがわかった。
そして次の瞬間。


「うわあああ」
「よしこーい!」


私に向かって男の子が飛び込んできた。私もがっちり男の子を胸の中に抱き締める。
これにて一件落着…


「あ…」


とはいかず、私は男の子を受けとめた衝撃でそのまま後ろに傾いた。
あ、あれ、後ろには、何も、ない…ってことは…


「いやああああ」
「ぎゃああああ」


落ちますよねー!!
私は男の子ごと重力に逆らわず、まっ逆さま。ごめんね、大丈夫って言ったくせに私…!
この子だけは守らないと…!そう思って、男の子を抱き締める腕に力を入れた。


ぽすっ


「……?」


あ…あれ?痛くない…?


「まったく…危ないじゃないの。」
「!!」


無意識に瞑っていた目を開けたら、さっきまで噴水の前にいたでかい人が呆れた顔で私を見つめていた。
…どうやら、男の子ごと私を受けとめてくれたらしいです。


「あっありがとうございます!!」
「…どういたしまして。」


精一杯お礼を言う私を、でかい人はゆっくり地面に下ろしてくれた。
私も腕に抱いていた男の子を下ろして、服についた汚れをはらってあげた。


「あ…ありがとうっお姉ちゃん!」
「ありがとう!」


男の子は涙を浮かべながら満面の笑みを私に向けてくれた。
女の子も男の子な隣に駆け寄って同じような笑顔。も、ものすごく可愛い…!


「どういたしまして!」


私もへらっと笑顔を返した。








「あの、本当にありがとうございます、何から何まで…」


可愛い姉弟に手を振って今、私はでかい人と向かい合っています。
アイスべっとりつけてしまったというのに、落下の危機から救ってくれるなんて…いい人すぎる!!
更にお詫びしなきゃいけない要素があるというのに、さっき買ってきたアイスは女の子にあげちゃって…つまり、私、何も持ってません。


「えーっと…」
「ちょっとごめんね。」
「ほっ!?」


めくられた。
Tシャツの裾を。
思いっきり。


「ななな何をー!?」


そんなところ捲られたら、私のお腹が丸見えじゃないですか!
そして目の前のでかい人はわざわざ腰を折り曲げて私のお腹をガン見です。
私のお腹なんて見たって何も面白くないのに……あ、いや、最近太ったからな…面白いのかもしれない…
でもでもでもっ!今日会ったばっかの人にお腹見られるってどういう状況!?


「お嬢ちゃん…」
「ナマエ!伏せろ!!」
「ほっ!?」


でかい人の言葉を遮って聞きなれた声が聞こえたからその通りにすると、私とでかい人の間に炎が立ち上った。
そして急に背後からお腹に腕を回されて引き寄せられる。
びっくりしたけど、エース隊長だってわかったから恐くはなかった。けど、何で?
斜め後ろのエース隊長の顔を見上げてみると、表情は険しくて真っすぐ目の前…でかい人を睨んでいた。


「あらら…火拳のエースってことは……」
「……コイツに何をした…!?」


も、もしかしてエース隊長勘違いしてる!?
確かにお腹を見るというよくわからない行動をしたけど、とっても優しい人なんですよ!


「エース隊長!この人、私の恩人なんです!!」
「は?」
「アスレチックから落ちそうになったところを助けてもらって…!」
「アスレチックって……お前、その歳で……」
「ぎゃーー違います!私男の子を助けようとして…」


また別に勘違いされたーーー!
そんな、いくら私でも子ども用の遊具で遊ぶなんて……そりゃ、大人用の遊具があれば喜んで遊びますけど…!


「…なるほどねェ……その刺繍は本物ってわけか。」
「?」


刺繍………ああ!オヤジ様のマーク!
なるほど、お腹を見てたんじゃなくて、お腹にあるマークを見てたんだ。


「おれ達を捕まえるか?」
「え?」


捕まえるって……何で?
……も、もしかしてアイスをべっとりつけちゃったこと相当根にもってらっしゃる…!?
いやでも何でそのくだりをエース隊長が知ってるんだ?


「……いや、あいにく今日はオフなんでね。」
「そりゃ賢明な判断だ。お前の能力じゃおれには勝てねェ。」
「?」


私、完全に置いてけぼりです。
何だろう、この様子からすると、エース隊長とこのでかい人は知り合い…?


「行くぞ、ナマエ!」
「ひゃっ」


ぐっとお腹に回された腕に力が入って、私はエース隊長の脇にかかえられてしまった。
そしてどんどんでかい人が小さくなっていく……えええどこ行くんですか!?私まだちゃんとしたお詫びしてないのに…!


「あっあの!ごめんなさい!!そしてありがとうございましたーー!!」
「………」


とりあえず、エース隊長に担がれながら精一杯大声で謝罪とお礼を述べた。









「ナマエ…何であいつと一緒にいたんだ?」


公園から結構離れたところで、やっと私をおろしてくれたエース隊長にそう聞かれた。


「えっと……私、あの人の服にアイスをべっとりつけちゃいまして……更にアスレチックから降りられなくなった男の子を助けようとしたら落ちそうになって、それを助けていただいて……」
「………プハハハハ!そりゃなんつーか…ナマエらしいな!」


そんな笑いごとじゃないのに!エース隊長のせいでお詫びできなかったんですよ!
…あ、いや……どうせお金無いから何もできなかったんだけど……


「エース隊長、あの人のこと知ってるんですか?」
「………」


聞いてみると、エース隊長は少し吃驚したように私を見つめた。
表情が「お前それまじって言ってるのか」って言ってる気がしたから、私も「まじで言ってるんです」って表情で訴えた。


「知ってるも何も……あいつは海軍本部の三大将の一人、青キジだよ。」
「……!?」


海軍……し、しかも大将って、めめめちゃくちゃ偉い人なんじゃ…!!
私そんなすごいお方にアイスを!?べっとり!?こ……殺される…!!


「海賊ならこれくらい知っとけ。」
「は、はい…。」


ぽん、とエース隊長の手が私の頭の上に乗った。
エース隊長が助けてくれなかったら今ごろ私は牢屋行きだったかもしれない。


「それよりナマエ!お前に見せたいモンがあるんだ。」
「え、何ですか?」


私の頭から手をどかしたエース隊長は、くるっと向きを変えてスタスタと歩いていく。
私はちょっとぐしゃぐしゃになった髪を手で整えながらその背中を追う。
エース隊長はあるお店の前で立ち止まって、そこを指差して振り向いた。


「5段アイス。」
「!!」


そのお店の看板には、『期間限定 5段アイス』という文字がでかでかと…!
5段アイスって……私4段でものすごい感動してたってのに更にその上を行くとは……やっぱりエース隊長ってすごい!!


「で、でも私お金が…」
「買ってやるよこんくらい。味はどうする?」


そして優しすぎる!!


「桃と、バナナと、イチゴと、メロンと……オレンジで!」





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