OP | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -



23

「ここで大人しくしてろよ!」
「そのジジイはボケてるから話しかけても無駄だぜ〜。」


山賊のアジトに連れて来られたナマエは地下の牢屋に入れられた。
牢屋には先客がいた。山賊が話していた老人だ。おそらく小屋に住んでいたのもこの老人だろう。


「あ、あの!私ナマエっていいます。エト族のこと、何か知っていますか?」
「……」
「山の小屋に住んでますよね?山賊達が薬を探してると言っていました。」
「……」


気を遣って大きな声で話しかけてみるが老人から返事はない。やはり山賊が言った通り会話はできないのだろうか。


「…お嬢さん、エト族だね。」
「! は、はい!」


…と思ったが、思いのほかはっきりとした言葉が老人から出てきた。


「あの、あなたがエト族について知ってると聞いて来ました。」
「呪いの解き方を知りたいのかい?」
「はい…!」


とんとんと話が進む。ボケてるなんてとんでもない、老人はしっかりナマエを見据えて言葉を紡いでいる。


「その前に…エト族の呪いの起源について話そう。」
「!」
「エト族が信仰していたのは元々動物ではなく、神だった。」
「神様…?」
「どんなもんかはわからんが、確かに実在したそうだ。だがね、その神も永遠ではない。」
「……」
「寿命が近いことを悟った神は村の者に自分の力を分け与えることにしたのさ。」
「もしかして、それが…」
「そう、12人のエト族。与えられたのはそれぞれ動物の力。その力によって12人は島を治め、民から神に代わる者として敬われた。」
「……」


エト族に関してナマエが知っていたのは文献に書かれているようなおおまかな話だけ。ここまで詳しい話を聞くのは初めてだった。


「…力をもらう時、彼らは神の血を飲んだという。」
「!」
「だったら、その逆のことをすればいいと思わんかい?」
「…血を……?」
「ああ。血の掟は血によって洗う……古いやり方だが血判だよ。」
「血判……」
「もちろんワシも試したわけじゃない。確証はできないし血判を集めた後どうすればいいのか具体的な方法もわからない。」


今聞いた話が本当であれば、確かに試してみる価値はありそうだ。血判で済むのなら全員を集めなくて済む。


「何で…そんなことまで知ってるんですか?あなたはエト族ではないんですよね?」


しかし何故エト族でもないこの老人が、エト族に関してこんなに詳しいのかがわからなかった。


「…昔愛した女がエト族だった……それだけのことさ。」


その問いに対して老人は遠くを見つめながら答えた。なんとなく、これ以上深く聞いてはいけない気がした。


「…エト族を探すんだったら確かな情報をひとつやろう。」
「!」
「四皇…赤髪海賊団にジャンっつー龍のエト族がいる。そいつはきっと快く協力してくれるだろうよ。」
「よ、四皇のところに!?」


呪いを解く方法だけでなく他のエト族の居場所まで教えてくれた。
協力してくれると言われても、ナマエにとっては四皇に近づくという時点で不可能に思えてしまったのだが。


「あの……いろいろ教えてくれてありがとうございました。」
「いいってことよ。そんじゃあそろそろ出るかね。」
「……え?」
「お嬢さんはこっちの袋持ってくれ。」


よっこいしょ、と立ち上がった老人に小さな袋を渡される。ジャラジャラと音がするその中身は宝石だった。
何故こんなものを…それを聞く前に、老人はあっさりと牢屋の外に出ていた。


「…えええ!?」






next≫≫
≪≪prev