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22

「ヒャッハー!金目の物をよこせー!」
「よこせー!」


山が山賊の住処になっているのは本当らしく、山に入った途端にやたらと山賊が出てくる。勢いはいいものの全員が下っ端で、あっという間にサボとディルに倒されていくのだが。


「チッ、女とガキを狙え!」
「ロジー危ない!」
「ひっ…」


サボとディルには敵わないと悟った山賊が弱そうなナマエとロジーに標的を移した。
恐怖で体が動かないロジーの手をナマエが引っ張って間一髪で山賊の攻撃を避ける。


「お前も戦え男だろ!」
「むむむ無理だよ…」
「に、逃げましょう!」


まだ若いということもあってか、ロジーはナマエよりも気が弱いようだ。


「あ!あそこに小屋があります!いったん身を隠しましょう!」
「わかった。」


今追ってきてる山賊を倒して、ナマエ達は小屋で一時身を隠すことにした。
入る前に一応ノックはしたが返事はなかった。鍵が開いていたので中に入ってみると、そこは確かに人が生活していたであろう痕跡があった。


「もしかしてここにいたのかもな。エト族について知ってる奴。」
「!」
「私、奥の部屋見てきますね。」
「ぼ、僕も行く…」


確かにその可能性は十分にあり得る。
しかし…だとするとこの現状は少し違和感を感じた。入れっぱなしのお茶。開けっ放しの窓。そして、広げられたまま床に落ちている新聞。鍵も開いていたし、出かけているにしては不用心すぎる。


「ロジー!!」
「「!?」」


サボが部屋の様子を分析していると、奥の部屋を見に行ったナマエの慌てた声が聞こえた。


「動くな!」


急いでかけつけると、男に刃物を突き付けられているロジーとそれを不安そうに見つめるナマエがいた。
さっきまで追ってきていた山賊達と恰好が同じことからこの男も山賊であることが窺える。しかしサボ達が小屋に入った後、人がこの小屋に入ってきた気配はなかった。否、この男は最初から奥の部屋にいたのだ。


「お前ら…あのジジイの知り合いかァ?」
「じじい…?」
「おい!薬はどこにある!?」
「何を…」
「あのジジイ、捕まえたはいいがボケてて話が通じねェ!」


どんなものかはわからないが、男はこの部屋で薬を探していたらしい。


「…そうだ!お前らおれの代わりに薬を探してこい!」
「はあ?」
「おおっと口答えすんなよ!?こいつがどうなってもいいのか?へへっ。」
「う…」


薬を探せと言われてもサボ達には全く関係のない話だ。しかし山賊の腕の中には怯えたロジーが捕らえられている。


「…わかった、お前の言う通りにする。何の薬を探せばいいんだ?」
「そんなん知らねーよ!」
「は…」
「うちのお頭は珍しもの好きでね!珍しけりゃ何でもいーんだよ!」
「わかんねーもんをどうやって探すんだよ…こいつアホか?」
「ああん!?」
「ひっ…」
「ディル!」


いつもの調子で煽るようなことを言うディルをナマエが諫めた。確かに理不尽な要求だが今はロジーの安全が最優先だ。


「明日の昼にまたここに来る。それまでに探しておけよ!こいつは人質として預かっておく。」
「ま、待って!」
「あ?」


ロジーを連れて行こうとした山賊をナマエが呼び止めた。


「人質は私にしてください。」
「!」
「ナマエ、何を…」


ナマエはロジーの代わりに自分が人質になると言い出した。


「んんん…確かに人質といえば女が定石か……わかった、お前を人質にしよう!」
「ナマエ…っ」
「…大丈夫だよ。」


泣きそうな顔をするロジーをナマエがぎゅっと抱きしめた。それを最後にナマエは山賊に連れられて行ってしまった。


「おいおい…どーすんだよ。」
「うう…」
「お前も泣きべそばっかかいてんじゃねーよ男だろ。」
「うっ…でも…」


残された男三人。ディルの気遣いのない言葉は今のロジーには逆効果だ。


「ロジー。何でナマエがお前をここに残したかわかるか?」


今にも泣きだしそうなロジーにサボが優しく問いかけた。


「お前にできることは何だ?」
「……!」


ロジーははっとして、零れそうな涙を拭いた。


「ナマエの居場所…、においでわかるよ…!」





■■
犬ですからね!
サボは泣き虫の扱いうまそう。






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