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20

偶然にもナマエが話しかけた女性はエト族で、牛の物憑きであった。
幸い周囲に人はおらず、変身を見られた心配はない。
3人は目につかない物陰に移動し、話を続けた。


「あなた達もエト族だったのですね…。なんて幸運なんでしょう…。」


女性は変身を見られた相手が自分と同じエト族であることに安堵の息をついた。


「ご迷惑をおかけしました。生まれつき体が弱くて……ひどい時は変身してしまうんです…。」


人間の姿に戻った女性は深々と2人に頭を下げた。
エト族が動物に変身するのは異性に抱きつかれた時だが、体が弱った時にも稀に変身してしまうことがある。


「大丈夫ですか?」
「はい…、だいぶ楽になりました。」
「もしかしてあんたが捜してるのって…」
「…ええ、同じエト族…犬のロジー…!」


ということは、ディルが手に入れた情報…エト族の2人組がこの島に来ているというのはこの女性ともう一人のことだったのだ。


「何で別行動を?」


そうであればエト族である2人が別行動をとるのは危険だ。
ディルが尋ねると女性は表情を暗くした。


「あの子は今、身動きがとれない状況にいます…。」
「!!」
「とらわれているのか!?」
「可哀想に……怯えてるに違いないわ…。」
「どこにいる!?」
「え…多分、公園に…」
「私達が助けに行きます!あなたはここで待っててください!」
「でも…」
「行くぞナマエ!」
「うん!」


どうやらもう一人は公園に囚われているようだ。
戦闘になるかもしれない場所に病弱な女性を一緒に連れていくことはできない。
ディルとナマエは覚悟を決めて公園に向かった。










公園にたどり着いたはいいものの特別変わった様子は見られない。
子ども達が遊具で遊び、それを母親たちが見守っている…平穏な光景だ。ただひとつだけ注目することがあるとすれば…


「やーだーーー!犬飼いたいぃーーー!!」
「ダメよ!元いた場所に戻してきなさい!」
「やだやだやだーー!!」


ある少女が犬を飼いたいと駄々をこねていることだろうか。
犬の首根っこをぎゅーっと抱きしめて離さない少女を母親が諫める……そこまで珍しくもない光景だ。
犬の方はというと、ブルブルと震えて少女の腕の中にいる。
ナマエはその犬になんとなく違和感を感じた。


「……ロジー…?」
「!?」


捜し人の名前を呟いてみると、犬はピンを耳をたててこちらを向いた。


「…思ってたのとだいぶ状況が違うんだけど。」
「うん…でも、無事で良かった。」


てっきりエト族を狙う輩に攫われたのだとばかり思っていた。
しかし確かに女性が言っていた通り、ロジーは「身動きがとれない状況」で「怯えてる」ことには間違いなかった。


「このわんちゃん、お姉ちゃんの…?」
「そうなの。見つけてくれてありがとう。」
「…うん。」
「すみませんでした!ほら、帰るわよ。」
「はあい…。」


ナマエが近づくと、少女は渋々ロジーを解放してくれた。
母親に手を引かれてその場を離れるが、何度もこちらを振り返っては名残惜しそうにした。


「クゥン…」


残された犬はくりくりとした瞳で不安そうにナマエを見上げた。
少女からは解放されたが、ロジーにとってナマエは見ず知らずの人。状況についていけていないのだろう。


「…大丈夫、私達もエト族です。」
「!」






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