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19

「ついたー!」


1週間ほどの航海を終え、サボ達は目的の島、ササナキ島に到着した。


「なんだか、のどかな雰囲気ですね。」


ササナキ島は酪農がさかんな島。広い土地には牧草がしげ渡り、乳牛たちがのびのびと歩いていた。


「よーし探すぞ!」
「探すっつっても……どうやって?」
「それっぽいの見りゃわかるだろ!」
「……」


ナマエとディルの目的はこの島でエト族を探し出すこと。
…といっても、この広い島で特定の人物…しかも見た目の情報が何もない者を捜すなんて雲を掴むような話だ。
何か検討でもつけているのかと思えば、ディルから出てきた楽観的な言葉に溜息をつくサボ。
サボ達にも別の目的があるため、それを達成せずにナマエ達の手伝いはできない。


「大丈夫か…?」
「あはは…。でもなんとなくわかるのは本当なんです。動物の本能…ですかね。」
「…ならいいけど。おいディル、ナマエを一人にするなよ。」
「はいはいわかったよ。」


のどかな島だからといって危険が全くないとは言い切れない。自分がそばにいられないとなると、ナマエの身の安全はディルにかかっている。
サボは強く念を押しておいた。


「サボさん…」
「一旦お別れだ。また合流しよう。」
「…はい!」


サボ達と別れることに寂しさを見せたナマエだが、サボが頭を撫でて再会を約束すると嬉しそうに頷いた。


「…コアラ、早く終わらせよう。」
「はいはい。」


ナマエのことが気がかりでしょうがないであろうサボにコアラが呆れたように笑った。









「ディルは他のエト族に会ったことある?」
「親以外はねェな。」
「私も。」


放牧地帯をあるくナマエとディルだが、乳牛や羊ばかりで人の姿は見当たらない。
エト族が居住区を追いやられたのはナマエ達が生まれる何年も前のこと。
ナマエがそうであったように、追手から逃げて散り散りになったエト族は各地で素性を隠してひっそりと暮らしているだろう。そう簡単に目撃情報が出てくるとは考えにくかった。


「ま、見た目でなんとなくわかるだろ。特に物憑きはその動物の特徴が身体的に現れるからな。」
「え、そうなの?」
「個人差あるらしいけどな。おれはほら、犬歯。」
「ほんとだ。でも私は特にうさぎっぽいとこないと思うんだけど…」
「頭撫でられるとアホみたいに喜ぶじゃねーか。」
「アホみたいってなに!?」


ここ数日で、だいぶディルとナマエは打ち解けたようだ。サボやコアラには見せないタメ口がその証拠だ。


「ん…?」
「どうした?」
「女の人が…」


放牧地帯を歩いていると、木陰で女性が疲れた様子で座り込んでいるのをナマエが見つけた。
苦しそうに肩で息をしている。周りに人の姿はない。
ナマエは駆け寄って女性に声をかけた。


「あの、大丈夫ですか?」
「……ええ、少し…歩き疲れてしまって…。」
(巨乳だ…)


女性はつばの広い帽子にサングラスを身に着けていて表情はよく見えないが、口元のほくろが女性らしさを醸し出していて印象的だった。ディルはその豊満な胸に釘付けになっている。


「お水とかいりますか?持って来ましょうか?」
「いえ…、お心遣いありがとうございます。でも、大丈夫…。」


女性はナマエの厚意を丁寧に断った。その言葉遣いから女性の品の良さが窺える。


「でも…こんなところでいったいどうして?」
「友人を、捜しているんです…。あの、茶髪でくせっ毛で…目がくりくりした少年を見かけませんでしたか…?」
「いや、見てねーな。」
「そうですか…。」


女性は友人を捜していると言ったが、その特徴を聞く限り女性が友人と呼ぶには不釣り合いに思えた。


「うっ…!」
「!」
「どうしました!?」


すると、急に女性が胸を押さえて苦しみだした。息も荒い。
深刻な様子にナマエはしゃがんで女性の背中に手をあてた。


「ああ…っ、いけない…!お願いです、今すぐこの場から…、離れて…くださっ…」
「!?」


ボフン!


女性が言い終える前に煙が立ち上がり、女性が座り込んでいた場所に現れたのは……牛だった。


「エト族…!?」






■■
牛と犬はまとめてやります。
牛だから巨乳です。




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