OP | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -



17

「サボくん!また勝手な行動して!!」


あの後、騒動を聞きつけてきた海兵たちによって証拠を押さえられ、ハイアット家は武器密輸の疑いで身柄を拘束された。
この島で調査をしていたハック、そしてコアラと合流したサボは勝手な行動をこってり怒られた。


「私を呼んでくれたらナマエも怪我しなかったかもしれないのに!」
「う…それはすまん。」
「いえ!私が鈍臭いのがいけないんです!」


コアラの説教はいつも話半分に聞いているサボだが、ナマエの怪我のことに関しては素直に謝った。
ナマエからしてみれば足の怪我は自業自得だ。そのことでサボが責められるのは本意ではなかった。


「…そろそろ呪いの解き方について話していいか?」
「「!」」


そのやりとりを傍観していたディルが口を開いた。
大分寄り道をしたが、最初の目的はエト族の特異体質に関する情報だったのだ。
ナマエはもちろん、サボとコアラもディルの言葉に耳を傾けた。


「…具体的な方法はわかんねーが、エトの物憑き12人を集める必要があるらしい。」
「!!」
「おれはそいつらを探す旅に出る。」


動物に変身できるエト族は12人。
その全員を集めるなんて途方もない話だ。エト族が居住区を追いやられたのはナマエが生まれる前のこと。
他のエト族の名前も知らないし、会ったこともない。
この広いグランドラインで息を潜めているであろう彼らを見つけるのは至難の業だ。


「とりあえずの手がかりならある。情報屋のじいさんによると、最近おれと同じことを聞いてきたやつがいたらしい。」
「!」
「そいつはササナキ島に向かったらしい。とりあえずそこに行く。」


ディルの言った手がかりは確かに比較的有力なものだった。
エト族の呪いを解く方法を知りたがる者なんて、本人以外には考えにくい。


「おれと一緒に来るか?」
「…はい。」


ここまでの情報が揃っていて迷う余地はなかった。
呪いを解きたいのはナマエも同じだし、何よりそれにはナマエの存在が必要不可欠だからだ。


「…サボさん!今まで本当にありがとうございました…!」


少し形は違えど、これでサボ達とはお別れだ。
ナマエは今までの感謝の気持ちを込めて深く深く頭を下げた。
堪えきれなかった涙が重力を受けて地面にポタポタと落ちる。
そんなナマエの様子を見てサボは頭をかいた。


「あー…別れを惜しんでもらってて悪いんだけどさ……俺達の次の目的地もそこなんだ。」
「へ…」
「やったねナマエ!まだ一緒にいられるよ!」
「ほ、本当ですか!?嬉しいです!」


コアラの高らかな声によってようやく理解した。
どうやら今回の密輸の取引相手がササナキ島にいるらしいのだ。
どのみちディルにもナマエにも次の島まで行く船も航海術もなかったのだが。


「話は聞かせて頂きました。」
「なっ…ミリア!?」


今後の予定がかたまったところでガサガサと茂みから顔を出したのはミリアだった。
今までの会話を聞かれていたらしい。気付いてなかったのはディルとナマエだけだったようだが。


「どうしても行くというのですね…。」
「…ああ。胸くそわりー奴も捕まったし…これで安心して行ける。」
「……」


ディルはこの島を出る…つまり、離れ離れになってしまうということ。
今までの会話を聞いていたのなら理解できただろう。俯いて肩を震わせてるのが何よりの証拠である。


「…っ」
「なっ…!?」


ディルが何と声をかけようか迷っていると、ミリアは意を決した表情で顔を上げ、ディルに突進……否、抱きついた。


ボフン!


煙が上がったとともにディルの体が変化する。
逞しい四肢に茶色の縞模様。そして鋭い牙と爪……立派な虎だった。
今まで隠し続けてきた秘密がバレてしまった。
不安と恐怖でミリアと距離をとろうとするが、腕をがっちりと首に回されて離れられない。
それどころか、ミリアはぎゅっと腕に力を入れて更に密着してくる。


「こんなことで、私があなたから離れていくと思ったのですか…!」
「!」


ずっと怖くて触れることすらできなかった。
それなのに、ミリアはこうも簡単にディルの特異体質を受け入れてくれた。
どうしようもなく愛しい感情がディルに溢れてきた。


「愛してるわ、ディル。」
「…あー、くそっ…!」


ミリアは優しく笑って虎となったディルの鼻先にキスをした。
ディルはそっぽを向いたが、その毛でおおわれた顔は誰が見ても赤くなっていた。





■■
虎編、ひと段落です。





next≫≫
≪≪prev