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16

「ここが父の書斎です。」
「ありがとう。」


屋敷から抜け出す途中、ナマエはミリアに案内してもらって書斎に忍び込んでいた。
サボもディルも、ハイアット家が武器の密輸に関与している決定的な証拠を掴んでいないと言っていた。
ここなら何か情報を手に入れられるかもしれない。


「これは…!」


立派な机の引き出しを開けてみると、早速取引の契約書らしき書類が出てきた。
これをサボに渡せばきっと調査の役に立つはずだ。


パァン!


「っ…!」
「ナマエさん!」


そう思った瞬間、銃声が書斎に鳴り響いた。
危険を察知したナマエが避けようとしたため致命傷は免れたが、その銃弾はナマエのくるぶしを掠っていた。


「図書館で…勉強するんじゃなかったのか?」
「お父様…!」


銃弾の元を辿ると、そこにはミリアの父親が家臣を引き連れて立っていた。
先程すれ違った時には見えなかった威圧感に、ナマエもミリアも恐怖を感じた。


「ミリア…お前は本当に悪い子だ。」
「私は…ただ、自由に…ッ!」
「あんな男にたぶらかされたうえに…何をしようとしてる!?」
「うぅっ!」
「ミリアさん!」


父親は怯えるミリアに一歩ずつ近付き、手にしていた拳銃でミリアの顔を殴った。
その勢いでミリアは床に倒れこみ、口の中を切ったのか口の端から血が垂れた。


「私は!お前を!そんな親不孝者に育てた覚えはない!!」
「うっ…」


父親は段々と激しさを増していき、倒れこんだミリアに容赦なく暴力をふるった。
癇癪と言っていい程の激高っぷりだった。
きっとミリアはこのような暴力を定期的に受けていたのだろう。
ぎゅっと口を結んでひたすらその暴力に耐えている。


「やめてください!!」
「うるさい!!」


ナマエが止めようとするも簡単に振り払われてしまう。


「どこの回し者かは知らんが…それを見られたからには生きて帰すことはできない。」
「……」


そして再び銃口がナマエに向けられる。
逃げ場はない。足の怪我によって避けることもおそらく無理だろう。
第一、ミリアを置いて逃げるという選択肢はナマエにはなかった。


ドゴォッ


絶体絶命な状況の中、急に目の前の男が吹っ飛んだ。


「ミリア!」
「!」


登場したのはディルだった。
ディルはミリアの父親に強烈な蹴りを入れた後、真っ先に倒れているミリアに駆け寄った。
怪我を負って気絶はしているが命に別状がないことを確認すると安堵の息をついた。


「大丈夫か、ナマエ。」
「サボさん!」


気付けば周りにいた家臣たちも床に倒れている。
サボの姿を確認したナマエは安心して力が抜けたのか、その場に座り込んだ。


「! 撃たれたのか!?」
「はい…少し掠っただけです。」
「立てるか?」
「えと…腰、抜けちゃいました。」


足の怪我自体は歩くのに問題ないのだが、緊張から一気に解放されたことによって腰を抜かしてしまったらしい。
その小さな体はまだ震えている。
今すぐ抱き上げてその震えを止めてあげたい衝動に駆られるが、ディルに制止された。


「待て。お前が抱くと変身しちまうだろ。お前はミリアを頼む。」
「…わかった。」


抱きしめたいのに抱きしめられない…そのもどかしさを感じているのはディルも同じようだ。
この時サボは、何故ディルが自分のことを「物憑き」と卑下して呪いを解こうとしているのかがわかったような気がした。






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