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12

「アイツ…なかなか派手にやったらしいな。」
「みたいですね…。」


ディルと別れ街を歩くサボとナマエ。
建物の外壁には至る所にディルの手配書が貼られていて、海兵が多く歩いている。
貴族を殴ったと言っていたが、それにしては大袈裟だと思った。
これだけの人数を動かしてるとなると、ディルが手を出した貴族はかなりの権力者なのかもしれない。


「それにしても人が多いな…。」
「はい……わッ!」


街はなかなかに栄えていて人も多い。
さっきから行きかう人をビクビクと避けるナマエが危なっかしくてしょうがない。
もしこんな街のど真ん中で変身してしまったら大事だ。


「あー…手は繋いでも大丈夫だよな?」
「は、はい!」


見かねたサボはナマエの手を握り誘導することにした。
これでサボが盾になることができるし、万が一何かあったとしてもすぐ異変に気付くことができる。
触れた手が少しだけ厚くなるのを感じながら、人が少ない方へと向かった。


「ここなら落ち着けるな。」


裏通りに入るとだいぶ人もまばらになり、サボはナマエの手を放した。
人が多い街ではあるが、海軍基地も近いため治安は比較的良いようだ。
ここならばナマエも生活しやすいだろう。
サボの手が離れた時、ここでお別れなのだとナマエは実感した。


プルプルプル


「…仲間からだ。ちょっと待ってくれ。」
「はい。」


その時サボの子電伝虫が鳴った。


「ハックか。どうだ?」
「この町はハイアット家という貴族の権力のもとにある。表向きはいいが裏では武器の密売に携わっているという噂だ。」
「取引相手は?」
「まだ掴めていない。」


相手はこの町で合流するはずの仲間のようだ。
ナマエはなんとなくその会話を自分が聞いてはいけないような気がして少し距離をとった。


ドン!


「!」
「ご、ごめんなさい…!」


その時に丁度路地から走ってきた女性と方がぶつかった。
女性は急いでいるようで、ナマエに一言だけ謝ってそのまま行ってしまった。
男性ではなく女性でよかった…そう思うと同時に、ナマエは先程の女性が少し気になった。
見間違いでなければ、彼女の瞳には涙が浮かんでいたのだ。


「お待たせ。」
「あ、もういいんですか?」


走り去る女性の背中を見ていると、話を終えたサボが隣に立っていた。
「要件人間」と呼ばれるサボの電話は基本的に短い。


「お仲間と合流するんですよね。」
「…まだ少し時間がかかりそうだ。今日は宿を探そう。」
「え…」
「明日はアイツの話を聞かなきゃだしな。」
「!」


てっきりここでお別れしなければいけないと思っていたが、そうではないらしい。
サボとまだ一緒にいられることに対して喜んでる自分に気づき、ナマエは恥ずかしくなった。
散々助けてもらっておいて、まだ一緒にいてほしいだなんて図々しいにも程がある。


「あー…聞かれたくないならやめとくけど…」
「いえ!むしろごめんなさい、巻き込んでしまって…」


恩人であるサボなら、エト族に関して今更何を知られても問題はない。
ただ、自分の問題に心優しいサボを巻き込んでしまっていることが申し訳なかった。


「おれが勝手に割り込んでるだけだ、気にすんな。」
「! えへへ。サボさんと一緒にいられて嬉しいです。」
「なっ…!」


サボが優しい言葉と共にナマエの頭をぽんぽんと撫でるものだから、ナマエは嬉しさがこみ上げてきて素直な言葉を漏らす。
ナマエの純粋でストレートな言葉に思わず赤面したサボはハットを深く被って踵を返した。






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