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08

サボに助けられ、次の島まで一緒に船に乗せてもらうことになったエト族のナマエ。
エト族であることが原因で島を出ることになったのはこれが初めてではなかった。
実際ライシン島で過ごしたのは1年にも満たない。
だから愛着と言っていい程の未練はないのだが、自分がエト族でなければ普通の生活ができたのか…とどうしようもないことを考えてしまう。
きらきらと太陽を反射する穏やかな波を見ているとその思考はどんどん深まっていく。


「何してんの?」
「っ!?」


急に後ろから声をかけられ過剰に反応してしまった。
追われる生活が長いためか、ナマエは背後を取られることが苦手だった。
くるっと勢いよく振り返り、サボの姿を確認したところで肩の力を抜いた。


「海を見てました。綺麗ですね。」
「…そうだな。」


その場しのぎの言葉だったが、改めてちゃんと見ると本当に綺麗だと思った。
遠目に見えていたライシン島もすっかり見えなくなってしまい、海のど真ん中にいることを思い知らされる。


「あの島は長かったのか?」
「いえ、1年も過ごしてないんです。だからこれといって愛着もないんですけど…」
「……」
「やっぱり…ちょっと寂しいですね。」


「寂しい」という言葉だけでは単純に表現できない心境だったが、ナマエはこの言葉を選んだ。


「次の島は中心街まで行けば治安は悪くないそうだ。」
「そうなんですね。次はバレないように気を付けます。」
「……」


気丈に振舞ってみせたが、正直少しどんくさいナマエのその言葉は信用ならなかった。


「あ!信じてませんね!?私こう見えて……!!」
「…どうした?」


話の途中でナマエが急にそわそわと辺りを見回し始めた。
サボもその視線を追うが、特別変わった様子は見られない。


「なんか…嫌な気配がします…ッ!」
「!」


そう言った矢先、船が大きく揺れる。


「ふあっ…」
「っ!」


ボフン!


あまりもの衝撃でナマエが海に投げ出されそうになったところをサボが掴んで引き寄せる。
その力に身を任せた結果、サボの胸に飛び込むこととなりナマエの姿がウサギに変わった。


「わ、悪い…」
「いえ、ありがとうございます…。」


バレないように気を付けると言った矢先に変身してしまい、お互いいたたまれない気持ちになる。


「…海王類か。」


どうやらこの衝撃の原因は海王類だったようだ。
ちょうど海から顔を出したすぐ隣にこの船があったらしい。


「こっちに気づいた…!」
「心配すんな。」


海王類の大きな目が船を捉えると、口を開けて向かってくる。
真っ青になって怯えるナマエを落とさないようにぎゅっと抱いて、サボは余裕のある笑みを見せた。


ドゴォ!


そして次の瞬間、何十メートルもある海王類の巨体が吹っ飛んだ。
その衝撃でまた船は大きく揺れ、水しぶきが飛んでくる。


「どうしたの?」
「食料ゲットだ。」
「あれ食べられるんですか…?」
「食えるだろ。」


あまりもの騒がしさに船内にいたコアラも甲板に出てきた。
が、このくらいの騒動には慣れているのかあまり慌ててはいない。


「! そのウサギ…もしかしてナマエ!?」
「はい。」
「やーん可愛いーー!」


しかしサボが抱えてるウサギ…ナマエを見た瞬間目を輝かせてその体をサボから奪い取った。


「こんな可愛いウサギになれるんだね!すごいよナマエ!」
「う…コアラさん…」
「おいコアラ、苦しがってる。」
「ご、ごめん!」


ボフン!


サボに注意されて腕の力を緩めた瞬間、変身がとけてウサギから人間の姿に戻ったナマエ。
…もちろん、裸である。


「…サボくんの変態!!」
「不可抗力!!」


コアラは思わずサボの顔面を殴った。






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