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05

【エト族】
新世界のジュニ島で生活する少数民族。
特定の動物に対しての信仰が篤い。
その動物は鼠、牛、虎、兎、龍、蛇、馬、羊、猿、鳥、犬、猪の12匹。
そして、嘘か真か橙その動物の姿に変身できる者が12人現れるという。
その者は動物の能力を持ち、見た目にもその特徴を受け継ぐ。
特に動物本来の透き通るような瞳はコレクターの間では有名で、熱心に集める者もいるという。
オークションでの相場は1億〜3億…


「っ…」


そこまで読んでサボは本を乱暴に閉じた。
エト族の人間が動物に変身するところを目の当たりにしたものの、エト族に関する知識はあやふやで、それが嫌で今日も図書館を訪れたのだった。
そこで手にした文献に書かれている情報は十分で、ナマエが頑なに瞳を隠していたのにも納得した。
それと同時に、自分の無神経な振る舞いを反省する。


(一言謝ろう。)


謝られる程のことではないと言われるかもしれないが、このままでは後味が悪い。
それにせっかく図書館にいるのだからと、サボはナマエの姿を探した。


「…いねェ。」


しかし館内のどこを探してもナマエの姿は見つからない。
もやもやとした不安がサボの胸に込みあがってくる。


「なぁ、ナマエは今日はいないのか?」
「え!?ああ、あの子なら今日は来ていませんよ。」
「連絡は?」
「連絡はきてないんだけど、昨日体調悪いって帰ったらしいじゃない。こっちからも特に確認はしてないけど…」
「…ありがとう。」


カウンターにいる女性によると今日は来ていないらしい。
引っかかるのは連絡がないということ。体調不良ではないことは知っている。
会って間もないが、無断欠勤するような性格には思えなかった。嫌な予感がどんどん大きくなっていく。
サボは足早に図書館を後にした。








「くそッ!」


開けっ放しの鍵に飲みかけのコーヒー。それに、散乱した新聞。
家にナマエの姿はなかった。嫌な予感は的中してしまったらしい。
そもそもサボがこの島に来たのは人身売買の情報を耳に入れたからだ。昨日の道中、どこかで見ている者がいてナマエがエト族だとバレた可能性が高い。
サボは改めて自分の軽率な行動を後悔した。事実として知らなくても、想像はできたはずだ。特異体質の人間が周りからどういう扱いを受けるかなんて。


プルプルプル


「コアラか。」


サボの子電伝虫に連絡を入れたのは一緒に島に上陸した仲間、コアラだった。彼女は今、人攫いチームの情報を得るために別行動している。


「人攫いチームのアジトがわかったよ。」
「! どこだ!?」
「街の西の外れにある酒場…」
「わかった、すぐ突入する。」
「はぁ!?ちょっと待っ…!」


コアラの言葉を最後まで聞かずにサボは電伝虫の通信を切った。要件が終わると一方的に話を終わらせてしまうのはサボの悪い癖だ。
革命軍No.2の勝手な行動に、通信の向こうでコアラが憤慨してるのは間違いなかった。






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