02
ライシン島に調査に入って2日目。
特に収穫もなくサボは街を歩いていた。
相変わらずのどかで、良い意味で平和ボケした街だ。
「あー!メガネだー!」
「きゃはは!変なメガネー!」
「あっ、ちょっと…!」
賑やかな子供の声の方に目を向けると、昨日の図書館にいた女性が子供たちに囲まれていた。
どうやらその特徴的な眼鏡をからかわれているらしい。
比較的身長の高い一人の少年が手を伸ばしてその眼鏡をとってしまった。
女性はオロオロとうろたえている。
「こら、困ってんだろ。」
「あーー!」
少しいきすぎたイタズラをサボが注意し、子供がかけて遊んでいた眼鏡を取り返す。
自分もそうであったが、この年の男児はやんちゃがすぎることがしばしばある。
「ありがとうございます…。」
「!」
眼鏡を返す時に女性の瞳がチラリと見えた。
それはすぐに隠されてしまったが、一瞬だけ見えた漆黒の瞳がやけに印象的だった。
「ちぇー、つまんないのー!」
「鬼ごっこしよーぜ!」
オモチャを取り上げられてしまった子供たちは不服そうに頬を膨らまして走り去っていった。
「あの、本当にありがとうございました。…失礼します。」
「あ…」
相変わらず目を合わせずに簡潔にお礼だけ述べて、まるで逃げるかのように去る女性。
間近で見てわかったことだが、あの眼鏡は度が入っていなかった。
視力矯正でもないのに、何故わざわざあんな眼鏡をかけているのか…。
それを聞こうとする前に行ってしまったということは、聞かれたくないことなのかもしれない。
会って間もない彼女に無理に話を聞こうとは思わなかったが、眼鏡の下の瞳がサボはどうしても忘れられなかった。
「…綺麗だったな。」
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