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12:敬語

「六道くんって誰に対しても敬語だよね。」
「そうですね。」
「何で?」
「…何でだと思います?」


生徒会室で今読んでる漫画に敬語キャラが出てきて、六道くんみたいだって思って聞いてみたら質問で返された。めんどくさい。
敬語っていうのはそもそも尊敬する相手に使う言葉だけど、現代において本当に相手を敬ってその言葉を遣う人は多くないと思う。
もしそうだとしたら六道くんは私を尊敬してるってことになる。うん、ありえない。


「壁を作るため?」
「……君はたまに鋭いことを言いますね。」


私が出した答えはなかなかいい線いってたみたいだ。


「ねえねえ、ちょっとタメ口で喋ってみてよ。」
「…それは僕との間に壁を感じたくないということですか?」
「ううんただの好奇心。」
「じゃあ嫌です。」
「ケチ。」


タメ口で喋る骸くんとか想像できないなってことでリクエストしたのにあっさり断られてしまった。
まあいいや。多分背筋がぞっとして終わるだけだもん。


「…もう少し粘ったらどうですか。」
「え、嫌なんですよね?だったら別にいいです。」
「何なんですか。敬語やめてください。」


自分で嫌だって言ったくせに。今更もう遅いんですからね。敬語で壁を作られる苦しみを味わうがいい。


「六道さんは私と壁を作りたいんですよね、わかります。」
「……拗ねてるんですか?」
「拗ねてませーん。」


本当はちょっと拗ねてるのかもしれない。
だってこんなに顔を合わせててお喋りだってするのに、一方的に壁を作られるなんて心外だ。同い年なのに。だから私も壁を作って二重の壁にしてやるんだ。


「クフフ……可愛い人だ。」
「!」


ふーんと口を尖らせてそっぽを向いたら、その尖った口に柔らかいものを押し付けられた。


「これで機嫌を直して。ね?」
「……甘い。」
「たまにはいいでしょう。」


押し付けられたマシュマロをそのまま口の中に入れると甘い味が口いっぱいに広がった。
うん、たまには悪くないかな。






■■
これが最大限の甘さです。





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