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11:六道くんのこと

「珍しい、六道くんがお菓子持ってる。」


いつもは私がお菓子を机の上に広げてるけど、今日は六道くんの手元にお菓子の箱が置いてあった。


「知らない女生徒から貰いました。」
「あ!これ駅前にできたチョコレート専門店のやつだ。」
「そうなんですか?欲しいのならあげますよ。」
「…いらない。これ甘いやつだもん。」
「そうでしたね。」


ちょっとオシャレな箱に入ってる感じ、小腹を満たすために買ってくる私のお菓子達とは格が違う。
六道くんはなんでもないように言ったけど私には見える。このチョコレートに込められたその女の子の熱意が。確かあのお店はそんなに安くはないはずだ。それをこの男は簡単にあげると言いましたよクズですね。まあビターチョコだったら喜んで貰ったけれども。


「しかし僕がチョコレート好きだという情報はそこから漏れたんでしょうね。」
「え、言っちゃダメだった?」
「……君ですか。」
「最近よくみんなに六道くんのこと聞かれるんだよね。好きなものとか。」



何を隠そう、その女生徒に私は心当たりがあった。今日「骸様にチョコレート渡すんだ」って意気込んでたみっちゃんに違いない。そしてそのみっちゃんに六道くんの好物を教えたのはこの私だ。


「でもみんなに聞かれて思ったんだけどさ、私って六道くんのことあまりよく知らないんだよね。」
「…そうですか。」
「他にもいろいろ聞かれたけどチョコレートが好きなことくらいしか答えられなかったっけ。」


誕生日はいつだとか、血液型は何型だとかだったかな。
普通の学生だったらクラス替えで初めて会って、会話のきっかけとして序盤に聞くような情報だと思う。
なんだかんだ六道くんとは出会って半年以上経つし、けっこう多く顔を合わせてる方だ。もう少しいろいろ聞いとけばよかったなって後悔した。


「君になら教えてあげますよ。ほら、何を知りたいんですか?」
「え?」


しかしいざこうやって言われると困る。誕生日を聞いたとしても別にプレゼントをあげるわけでもないし、ていうかその前に忘れるだろうし。血液型こそ聞いてどうするって感じだ。血液型占いとかは信じない。


「えー…じゃあ……目玉焼きには醤油派?ソース派?」
「……塩胡椒です。」
「あ、私と一緒だね。」
「君は本当……はあ。」


溜息をつかれた。




■■
恋愛っぽくならないのはほぼほぼヒロインのせい。





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