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05:テスト


「ん……」
「10代目!」
「名前!」
「やっと気がついたか。」
「………ん!?」


名前が目を覚ましてまず視界に映ったのは青い空、白い雲。そして両サイドに山本と獄寺の心配そうな顔。
覚醒しきらない意識でとりあえず体を動かすと、目の前に広がったのは真っ青な海と軽く弧を描く地平線。鼻先をくすぐるのは潮のにおい。髪を撫でるのは心地よい風。
名前はようやく自分がいる場所を理解した。


「……えええええ!?」












「リボーン!!あなたの仕業ね…!?」
「ママンにはちゃんと断ったぞ。定期的に手紙書いてやれよ。」
「なっ…」


どうやら名前は気を失っているうちに海に連れだされてしまったらしい。犯人は目の前の男、リボーン。
目的は出会った当初から言っているように、名前をボンゴレ海賊団の船長にするためなんだろう。
まさか勝手に連れ出されるとは…。これでは誘拐も同然だ。


「それにしても意外だなー…名前が海賊になりたかったなんてな!」
「違う違う違う!!…っていうか、何で武が…!?」
「名前が船長なんだろ?だったら、おれが守んなきゃな。」
「ふっざけんなテメー!10代目をお守りするのはこのおれだ!!」
「ご、獄寺くん…」


どこで調達したかは知らない立派な船に乗っているのは名前とリボーンの他に山本と獄寺……見知った顔だ。
獄寺についてはリボーンが勝手に仲間ゲットとか言っていたが、山本まで巻き込まれてることは意味がわからない。
無理矢理連れてこられたのかと思えば、本人は意外とノリノリだ。


「リボーンさん!おれは反対です、コイツがボンゴレに入るのは!」


しかし獄寺は山本が一味に入ることに納得がいかないらしく、不満を漏らした。


「…じゃーテストでもやるか。」
「テスト?」
「ルールは簡単だ。とにかく攻撃をかわせ。」
「ちょっ、リボーン!船の上でそんなことしたら沈んじゃうよ!!」


そんな獄寺を納得させるためにリボーンがとった方法は、テストである。
攻撃をかわすというのがルールらしいが、この船の上でどうやって逃げろと言うのか。
いくら立派な船だと言っても範囲は限られているし、何より船上で攻撃をしかけられたらひとたまりもない。


「海があるじゃねーか。」
「へっ……」
「はははっ、泳ぎは得意だぜ!」


それはつまり海を泳いで逃げろ、と。予想の遥か上にいくリボーンのスパルタぶりに名前は言葉が出なかった。
一方、当人の山本はやっぱりノリノリで、もう上着を脱いで準備運動をしている。


「ま、待ってよリボーン!武を殺す気!?」
「船長として名前も見本を見せてやれ。」
「は…あああ!?」


名前が危険を察知した時にはもう遅く、リボーンに押されて海へと真っ逆さまに落ちていった。


ドボーン!


「あぷっ、ちょ、私泳げな…っ…!」
「大丈夫か、名前!」
「あ、ありがとう…」


カナヅチの名前に続いて、山本が華麗なフォームで海に飛び込んだ。
そして必死に手足を動かす名前を支え、名前も山本の腕に捕まることでようやく体を安定させることができた。


「まずは見習いの殺し屋レベルだ。」
「ひいいっ!?」
「ははは!」


海に浮かぶ2人に飛んできたのは鋭いナイフ。もちろん本物だ。
山本は名前を引っ張りながらスイスイと泳いで、その攻撃をかわしていく。
いつ死んでもおかしくない状況だというのに、山本はどこか楽しそうだ。
その後もリボーンの攻撃はどんどんレベルアップしていき、最終的にはサブマシンガンを構え出した。


「獄寺、お前もぶっ放せ。」
「え……」


攻撃に参加することはつまり名前に向けて攻撃しなきゃいけないことになる……しかし、同時に山本を潰すチャンスである。
一瞬迷ったものの、獄寺は「リボーンさんが言うなら…」と理由をつけてダイナマイトを取り出した。


「10代目!!」
「…?」
「(避けてくださいね!)」
「へ……」


しっかりと名前だけに危険を伝えたつもりだが、通じていない。
まあ名前からしてみれば伝えようが伝えまいが避けられないことには変わりないのだが。
名前からしてみればサブマシンガンとダイナマイトが同時に飛んでくる光景は、死を予感させた。


「おいおい…」
「ひいいいっ!!」
「っ、名前!!」
「!!」


ドガアン!


恐怖で動けなくなった名前を山本が引っ張って、その後、辺りは煙に包まれた。


「じゅ…10代目〜〜〜!?」


そこでやっと事の重大さに気付く獄寺。海に向かって懸命に叫ぶが、煙が晴れるには少し時間がかかる。


「っぷはぁ!」
「あ、ありがとう武……」


煙が晴れると揺れる波間から2つの頭が浮かび上がった。どうやら無事らしい。
水中で自由に動けない名前を抱えて、山本が船に上がった。


「10代目、ご無事で…」
「っバカ!!」
「えっ…」


甲板まで上がって膝をつく名前に慌てて駆け寄る獄寺に、名前は思いっきり叫んだ。


「わ、私、死ぬかと思ったんだから…!」
「す…すいません!!」


それは当然の主張だ。もし山本がいなかたら名前は死んでいたかもしれない。
しかし涙目で顔を赤くして見上げられても正直可愛いだけだった。獄寺は不謹慎だと自覚しつつも頬を軽く染めた。


「武にも謝って!」
「……」


名前には土下座だって何だってしていいと思ってるが、山本に謝るのは非常に癪だ。
しかし名前から言われたからには断ることはできない。それに、名前がこうして無事なのも悔しいが山本のおかげなのだ。


「よくやった。」
「!」
「10代目を守ったんだ。仲間と認めねーわけにはいかねえ。」
「いや…」


獄寺にとってあくまで優先すべきは10代目である名前。
やはり謝るのは癪だが、仲間としては認めていいだろうと結論に至った。
名前としては仲間どうこうの問題ではないのだが…。


「でも10代目の右腕はおれだからな。おまえはケンコー骨だ。」
「け…ケンコー骨!?」


ただ、上下関係ははっきりとしたいらしい。
仲間とは認めても、あくまでも自分の方が優位であると獄寺は主張した。


「前から思ってたけど獄寺って面白ぇー奴な!」


しかしそこは流石の山本。いつもの天然でスルー…


「だが名前の右腕を譲る気はないね。おまえは耳たぶってことで。」
「ええ!?」


…と思いきや、思いのほか張り合ってきた。
それが発端となって「お前は髪の毛」だの「お前は睫毛」だの、口喧嘩に発展してしまった。
右腕でも耳たぶでも髪の毛でもなくて、普通に友人として接して欲しいだけなのに、と名前は深くため息をついた。





■■
航海術は獄寺くんが心得てます。







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