59:再戦
「ひゃっ…地面が……!?」
「ちっ。目ェ覚ませ名前。」
「痛ッ!」
ついに始まった六道骸との戦闘。六道輪廻の能力を使う骸に名前は圧倒されていた。
第四の能力に続き第一の能力、地獄道による幻覚にどっぷりハマってしまっていた名前の頬をリボーンが叩いて目を覚まさせた。
途端にさっきまで崩れていた床や壁が元に戻る。
「クフフフやりますね。見破るとはさすがアルコバレーノ。」
「あるこばれーの…?」
骸は聞きなれない名称でリボーンのことを呼んだ。名前は疑問に思うがリボーンは何も言わなかった。
「クフフフ。アルコバレーノはボンゴレ10代目のお目付け役ってわけですか。」
「…おれは名前の教育係だ。」
「クフフなるほど。しかしあまり悠長にしていると……大事な生徒が死んでしまいますよ?」
ボト…ボト…
「な……蛇!?」
骸の右目に「三」の文字が刻まれると、何もないところから無数の蛇が落ちてきて名前を取り囲んだ。
「こ、これも幻覚…!?」
「いえ、正真正銘の毒蛇ですよ。なんなら咬まれてみますか?」
「ええ!?」
この能力は地獄道の幻覚とはまた別のもの。人を死に至らしめる生物の召喚を可能とする畜生道の能力だ。
「さあ、生徒の命の危機ですよ。いいんですか?」
「あまり図に乗るなよ骸。」
「ひっ…」
骸は名前を危険な目に合わせてリボーンを挑発しているようだ。しかし相変わらずリボーンに動く気配はない。
「…!」
キンッ
「ト、トンファー…!」
「10代目、伏せてください!!」
「!」
骸に向かって飛んできて弾かれたのはトンファーだった。
そして言われるがままに伏せるとダイナマイトが名前の周りの毒蛇を吹き飛ばした。
「雲雀さん!獄寺くん!」
名前の窮地を救ったのは雲雀と獄寺だった。
「よかった…!」
2人ともかなりの深手を負っているらしいが生きている……その事実に名前は安心した。
「2人とも体は大丈夫なの…?」
「大丈夫っス!10代目もご無事で何より…!」
どうやら雲雀の加勢もあってか、眼鏡の男との闘いには勝利したようだ。
座り込む獄寺に対して雲雀はフラフラとした足取りで骸に向かってトンファーを構えた。
「覚悟はいいかい?」
「これはこれは…怖いですねぇ。」
先の骸との戦闘によって既に体はボロボロのはずだ。それでも彼を突き動かすのは一度負けたという悔しさと高いプライドだろう。
「だが今は僕とボンゴレの邪魔をしないで下さい。」
「…アレは僕が咬み殺すから、君にはあげないって言ったはずだけど。」
「クフフ……どうやら君もあのか弱い船長を大事に思ってるようですね。」
「戯言には耳を貸さない。」
「クフフフ…仕方ない、君から片付けましょう。」
少し言葉を交わした後に骸も雲雀に対して戦闘態勢をとった。右目に「四」の数字が浮かび上がる。戦闘能力の修羅道だ。
「一瞬で終わりますよ。」
「雲雀さん…!」
お互いに駆け出し、骸の槍と雲雀のトンファーが激しくぶつかり合う。
亜未の心配をよそに怪我を負っているはずの雲雀の動きは骸に引けを取らない。
「や、やっぱり雲雀さん強い…!」
「クフフ……時間のムダです。手っ取り早く済ませましょう。」
骸の右目に「一」の数字が刻まれた途端、雲雀の右腕に海楼石の手錠が現れた。
「海楼石…っ、まさか雲雀さんの病気を利用して…!」
「クフフ。さあ、また跪いてもらいましょう。」
雲雀は悪魔の実の能力者ではない。しかし以前シャマルのトランデントモスキートを受け、能力者と同様海が苦手な体質になってしまったのだ。
悪魔の実の能力者は海に嫌われ、一生カナヅチになってしまう。その成分を含む海楼石には触れただけで力が抜けてしまう。骸と最初に闘った時もこの病気を利用されて防戦一方になってしまったのだった。
「雲雀さん…!」
バキッ
「!!」
一瞬足元がフラついたと思われたが、雲雀はそのまま骸の懐に入り強烈な一撃を食らわせた。
「へへ…甘かったな。」
座り込む獄寺の手には雲雀にかけられた病気の処方箋。基地に乗り込む前にシャマルから貰ってきたらしい。
つまり今の雲雀に海楼石は無意味。雲雀は一気に攻撃を畳みかけて骸を吹っ飛ばした。
「……おいしいとこ全部もってきやがって。」
「あ…。」
「ついにやったな。」
骸は床に倒れたまま動かない。
雲雀のおかげでなんだかあっさりと骸を倒してしまったが、これで全てが終わった……名前は安堵の息をついた。
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