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56:六道骸

「あなたは…そんな悪い人じゃない。」
「!?」


鉄球に潰されたと思われた名前の声が聞こえてきた。どうやら間一髪で直撃は免れていたようだ。


「本心では暴力を嫌っている…」
「…本心だと…?おれのことをわかったような口をきくな!」


ランチアは否定したが明らかにその表情は強張っていて、困惑の色が窺える。今まで冷静だったのに声を荒げたのがいい証拠だ。


「殺しはおれの本心だ!!」
「うそだ!!」


まるで雑念を振り払うかのように勢いに身を任せて向かってくる。
迷いが顕著に現れたその拳を避けるのは、今の名前にとって簡単なことだった。


「う…ぐ…!」


名前の攻撃が鳩尾に入り、ランチアは膝をついて倒れた。


「攻撃する時必ず目を閉じるのも、鋼球を使わなきゃとどめをさせないのも、あなたの心の中に罪悪感……迷いがあるから…。」
「な…!」
「あなたを最初に見た時からおかしいと思ってた。あったかくて、怖い感じがしなかったから。」
「!」


そう…名前はずっと違和感を感じながら闘っていた。ランチアにはM・Mやバーズに感じたような恐怖感や嫌悪感がなかった。むしろそれとは真逆の温かさがあったのだ。


「……完敗だ。お前がボンゴレ10代目と聞いた時は信じられなかったが……今なんとなく理由がわかった気がする。」
「え……」


負けを認めたランチアはどこか清々しい表情をしていた。


「だが……悪いことは言わない。六道骸とは闘うな。」
「六道…骸……?」
「どういうことだ。他に黒幕がいるっつーのか?」


名前達が海軍に狙われた一連の騒動は大佐であるランチアが指揮を執っていると思っていたが、また新たな名前が出てきて困惑した。
リボーンの問いにランチアは静かに頷いた。


「おれは表の顔にすぎない。今回の事件は全て六道骸が企んだことだ。」
「なッ…!」
「骸……」


つまり、ランチアを裏で操っていたのが「六道骸」という人物ということになる。
名前はその名前に聞き覚えがあるような気がしたがいまいち思い出せない。


「その六道骸っつーのは何者なんだ?」
「……あいつは…おれの全てを奪った男だ。」
「!」
「5年前……おれはこの町で一端の海兵だった。」


ランチアは元々みなしごで、当時の大佐であった男に拾われて海軍で育てられた。
ランチアは大佐を慕い、面倒を見てくれた海兵達に恩を感じ立派な海兵になろうと毎日修行に励んでいた。
そんな中大佐がまたみなしごを拾ってきた。それが、六道骸だという。ランチアは自分がしてもらったように六道骸を本当の家族のようにかわいがっていたそうだ。


「ところが間もなく、事件が起きた。」


事件が起きたのはランチアの少佐就任祝いで居酒屋をまるまる貸し切ったパーティーを開催した日だった。
ランチアが少し席を外して戻ってきた時に、仲間達が全員殺されていたのだ。


「おれは犯人への怒りに燃えた。だが違ったんだ……おれが、殺ったんだ…!」
「!」
「ど、どういうことですか…?」
「…それから、目を覚ます度に身に覚えのない屍の前に何度も立っていた…。」
「え!?」


もちろんランチア自身に殺している自覚も記憶もない。
ランチアは自分がおかしくなってしまったのだと思い自殺を決意したが、それもできなかった。


「そう…全て、六道骸に操られていたんだ…!!」


原因は大佐が拾ってきた子供……六道骸だった。骸は自分の手は一切汚さず、ランチアに全て罪を負わせていたのだ。


「そんな……酷い…!」
「あいつはおれなんかよりずっとヤバい。よく聞けボンゴレ…骸の本当の目的は……っ、どけ!!」
「えっ…!?」


言葉の途中で何かに気付いたランチアは傍で話を聞く名前を突き飛ばした。
そして次の瞬間、名前を庇うように前に出たランチアの体に無数の針が刺さった。
獄寺はこの攻撃に覚えがあった。眼鏡の海兵のヨーヨーによるものだ。しかし既に周囲に敵の姿はなかった。目的は口封じだったようだ。


「そんな……ッランチアさん大丈夫ですか!?」


獄寺が受けたように、この針には毒が塗ってある。
力なく床に倒れたランチアに名前が駆け寄った。


「しっかりしてください…!」
「……今日初めて会ったおれのために涙を流せるんだな…。」


薄れていく視界の中で涙する名前を見て、ランチアは穏やかな笑みを浮かべた。


「最後にお前に会えて良かった……。」
「そんな……ランチアさん…!!」


そしてそのままランチアは目を閉じてしまった。


「さんざん利用しといて不要になった途端…。クソッ、これがあいつらのやり方かよ!」
「人を何だと思っているの…六道骸…。」
「……どうする?名前。」
「…行こう、骸のところへ。」


ランチアには危険だと止められたが、こんなことをされてそのまま帰れるわけがなかった。


「ランチアを操る程のヤツだぞ。」
「うん……でも、骸を何とかしないとまた犠牲者が出る。」


ランチア程の男を操ったのだ……実力は計り知れない。
しかし骸がランチアにしてきたこと、名前の仲間にしてきたことを考えると放っておくことはできなかった。
リボーンは初めて強い意志を見せた教え子に笑みを浮かべた。







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