RE! | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -



02:獄寺来る

海賊の船長―――…海の支配者。
何人もの信頼できる仲間を片手で動かし、仲間のためならみずから命をはることも厭わない。
船長のまわりには信望と尊敬の念が取り巻き、救われた者たちはヒーローとあがめたてる……


「へぇ、そうなのか。」
「あなたが無理矢理読ませてるんでしょ!!」
「毎朝読めよ。おまえはボンゴレの10代目船長になる女なんだからな。」









リボーンと名乗ったスーツの男は名前の抵抗を無視し、知らない間に住み込みの家庭教師となっていた。
毎朝7時に起こされ、こうして読みたくもない海賊に関する本や、知りたくもない航海術などを教えてくる。
リボーンの目的は冒頭で宣言したとおり、名前をボンゴレ海賊団の10代目船長にすることだ。


「だいたい、何なの?その……ボンゴレ海賊団って。」
「……お前そんなことも知らねーのか。」
「海賊なんかに興味ないからね!」


今まで海賊に関する情報は意識的に見ないようにしてきた名前は全くの無知だった。
さすがに海賊王、ゴールド・ロジャーは知っていたが、大海賊時代の今を生きる数々の海賊に関しては名前さえも知らなかった。


「ボンゴレ海賊団は300年以上の歴史を持つ由緒正しい海賊だ。」
「300年…!?」
「そーだ。おれはボンゴレ海賊団の9代目船長の依頼で、おまえを10代目船長に教育するためにこの島に来た。」
「な、何で私なの?私一般人だし、女だよ?」
「他にも候補はいたんだけどな。全員暗殺されたり海の藻屑になったり……写真見るか?」
「いいいいいよ!!」
「そんで10代目候補として残ったのがお前だけになっちまったんだ。」
「ええええ!?」
「ボンゴレ海賊団の初代船長は早々に引退してこの島に渡ったんだ。それが名前のひいひいひいじいさんだ。つまりおまえはボンゴレ海賊団の血を受け継ぐ列記としたボス候補なんだ。」
「そ、そんな話聞いたことないよ!」


実際、ボンゴレ海賊団は名前が知らないだけで今の時代では一般教養とも呼べる程有名な名前だった。
一般人にとっては歴史の教科書や新聞で聞くだけの馴染みのない存在だが、海賊や海軍にとっては違う。
海賊の場合、ボンゴレ海賊団の存在をきっかけに海へ出る者もいれば、そのクルーに懸けられている多額の懸賞金を狙う輩もいる。
海軍も大きな勢力を誇るボンゴレ海賊団を警戒しているものの、その力の大きさ故になかなか手が出せないでいるというのが現状だ。
…こんな田舎に住む平凡な少女がそんな海賊団の船長になるなんて、とんでもない話だった。


「心配するな。おれが立派な船長にしてやる。」
「ちょ、ふざけないで!私は絶対ならないって言ったでしょ!?」
「まずは仲間をつくらなきゃな。」










「はあ……。」


ボンゴレ海賊団の歴史やら大海賊時代云々を延々と聞かされて名前は頭が爆発しそうになった。
そんな名前の様子を見かねてリボーンは1時間の休憩を言い渡し、少しでも現実から逃げたい亜未は町を歩いていた。
考えるのはどうやってあの家庭教師から逃げるか、だ。
いくら自分が由緒正しい血を継いでいたとしても、海賊になるのなんてご免だ。
しかしそれを言ったところでリボーンは簡単に納得してくれる相手ではないだろう。


どんっ


「あっ、ごめんなさ……」
「いてーなァ。」
「大丈夫っすか?」


頭を抱えて歩いていると向かいから歩いてくる男に気付かず、肩がぶつかってしまった。
反射的に謝ったものの、男の顔を見る限り謝って許してくれるような相手ではないようだ。


「おーいてェ。骨折しちまったかも。」
「おい女、どうしてくれんだ?」
「ひっ……」
「まァ待て。おれは寛大だからよ、一晩付き合えば許してやるよ。」
「さすがっす先輩!」
「ごっ…ごめんなさいいいい!!」


男達の手が伸びてくる前に名前は全速力で走り出した。


「はぁっ、はぁ……」


名前が無意識に向かったのは森。小さい頃の遊び場だったこの森は、今でも名前の心を落ち着かせてくれる。
あの時は仲良しだった幼馴染も今はすっかり疎遠になってしまった。一人で訪れる森は名前に孤独を感じさせる。
ろくに友達もいない弱い自分に、仲間なんてできるはずがない。
名前は自嘲的に笑い、今日はこのままサボってしまおうと考えた。


「目に余るやわさだぜ。」
「!?」


急な声に振り返ると、タバコを吸う男が立っていた。
先ほどの男たちではないようだ。この町では見かけないし、名前と同い年のように見える。
銀色の髪の毛は太陽の光を反射してギラギラと輝き、眉間に皺を深く刻んで釣りあがった目で名前を睨む。
正直、さっきの不良達の数倍は怖い。


「おまえみたいな軟弱な奴を10代目にしちまったらボンゴレ海賊団も終わりだな。」
「えっ……」
「おれはお前を認めねェ。10代目にふさわしいのはこのおれだ!!」


男の口からは最近聞きなれた海賊団の名前が出て来た。
話を聞く限り、彼はボンゴレ海賊団の10代目になりたいらしい。それならば喜んで差し出すというのに。


「あの……」
「目障りだ。ここで果てろ。」
「なっ…爆弾!?」


男は名前の話を聞く気なんて毛頭ないらしく、懐から2本のダイナマイトを取り出した。
そして自分が吸っている煙草を火種にして導火線に点火すると、それを名前の方に投げつける。
まるで缶ジュースを渡すかのような軽い感じで、だ。
名前は状況についていけず、まさか本物なわけがないと自分に言い聞かすも、ダイナマイトが近づいてくるにつれてそのリアリティは増すばかり。


ズキュウウ!


「ひっ…」
「チッ…」


名前がもうダメだと目を瞑ったら銃声が響き、ダイナマイトが地面に落ちた音が聞こえた。
爆発しなかったのは導火線が切られたから。切ったのは……


「よォ。」
「リボーン!」
「思ったより早かったな、獄寺。」


名前の視線の先にはいつの間にか現れたリボーンが立っていた。
その手に持つ拳銃でダイナマイトの導火線を打ち抜いてくれたんだろう。
導火線程細い紐に銃弾を当てるなんてにわかには信じがたいが、さすが自身を超一流のヒットマンと自負するだけのことはある。
とりあえず助かったようだが疑問は絶えない。リボーンはどうやらこの少年を知っているようなのだ。


「こいつを殺ればオレが10代目内定だというのは本当だろうな。」
「ええ!?何言って…」
「ああ本当だぞ。んじゃ殺し再開な。」
「いやいやちょっと待ってよ!そんなことしなくてもこの人が10代目になればいいじゃん!私海賊なんて嫌だもん!」
「いいからさっさと戦え。」
「た、戦うって…」
「いくぜ…」
「わっ!?」


名前の肩を持つように見えたリボーンは、別に戦いを止めたわけではないらしい。
むしろこの戦闘をけしかけたのはリボーンであるかのように思える。
一歩引き下がった名前の前に獄寺と呼ばれた少年が立ちはだかり、両手一杯のダイナマイトに火をつけて構え出した。


「獄寺は体のいたる所にダイナマイトを隠し持った人間爆撃機だって話だぞ。又の名を“スモーキン・ボム”隼人。」
「はあ!?何それ…!」
「果てろ!」
「ひゃあっ」


ドンドンッ


獄寺が投げつけたダイナマイトが大きな音を立てて爆発した。
森の地面がえぐれて粉塵がまきおこる様子を見て名前は顔を青くする。
数日前に読んだアクション小説と同じような状況が今、自分の目の前に広がっている。
小さい頃から名前を支えてくれていたこの森が、こういった形で傷を負うことに名前の心が痛んだ。


「これで終わりだ…」
「!?」
「死ぬ気になるのは今だぞ、名前。」


ズガン


「!!」


名前が気づいた時にはもうハヤトのダイナマイトが迫ってきていて、もうダメだと目を瞑ったところで名前の額に衝撃が走った。
その衝撃は紛れもない銃弾で、軌跡の先ではリボーンがニヒルな笑みを浮かべていた。
撃たれた名前はというと、倒れもせずにそのまま立ちすくんでいる。


「……死ぬ気で、この森を守る!!」


ゆっくりと上げた名前の瞳はさっきまでとは違い、強く、堅い信念を持った色に変わっていた。





■■
下着姿にはなりません。





next≫≫
≪≪prev