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42:ロンシャン来る


「ん?名前、肩んとこ怪我したのか?」
「え!?う、うん。高いとこのもの取ろうとしたら落としちゃって…」
「10代目…そんな時はおれを呼んでください!」
「うん、今度からそうするね。」


私の肩には今ガーゼが貼られている。後から鏡で見てぞっとしたけど、この下には雲雀さんに咬みつかれた跡がある。絆創膏なんかじゃ全然カバーできなかった。
何で雲雀さんがあんな行動をとったのかはわからないけど……今思い返してみても恐ろしいし恥ずかしい。しばらく雲雀さんとは目を合わせられない気がする…。
…その事実を武と獄寺くんに言えるはずもなく、私は苦し紛れの言い訳をした。
騙してる気がして悪いけど、こんなこと2人に言ったら余計な心配をかけてしまう。さっきの出来事は墓場まで持っていくと決めた。


「暇だなー…釣りでもするか?」
「うん。」
「釣り?僕もやりたーい!」


今は比較的天候も安定しているみたい。出来る時に食料は確保しておかないとね。
初めて釣りをするフゥ太に武が丁寧にやり方を教えてる。ふふ、兄弟みたい。


「………ん!?」
「どうした名前?」


微笑ましい2人を横目になんとなく海を眺めてみたら、真っ青な水面に浮かぶ赤いものを見つけた。


「あ、あれ…!」
「ん?……人か!?」


よーく目をこらして見てみると、それは人だった。木片に手をかけて波に身を任せている。動く様子がないから気を失っているのかもしれない。


「もう死んでたりしてな。」
「怖いこと言わないでよ!」


リボーンが物騒なことを言った。確かに、その可能性もあるけど……もし生きていたら、このままじゃ危険だ。
ここはグランドライン…いつ天気が荒れるかわからないし、海底には獰猛な魚や海王類なんかもいる。


「おれが見てくるから、待ってな。」
「うん…!」


ハラハラと見つめることしかできない私の頭に武が手を置いた。
ここは素直に武にお願いしよう。泳げない私が飛び込んだところで迷惑になるだけだ。












「んあれ!?ここどこ!?天国!?召されちゃった?おれ召されちゃった!?」
「「「……」」」


引き上げた人はただ気を失っているだけで安心したんだけど……目が覚めた瞬間ものすごく煩かった。


「あ!女の子はっけーん!天使?天使なの?」
「え、いや、違います…」
「テメー10代目に近づくんじゃねェ!」


なんか……すごくテンションの高い人だ。さっきまで死にかけていたのに…。


「んんん?ここはもしや船の上……ってことは…」
「……」
「わかんねー!!」
「「「……」」」


きっとみんな思ってることは同じだ……ものすごく疲れる…!


「あの、あなた海の上で気を失ってたんです。」
「へっそうなの?じゃあおれ生きてる!?イェーーイ生きてるって素晴らしーー!!」
「何で…」
「じゃあ君が助けてくれた感じ!?命の恩人な感じ!?」
「いや、助けたのは私じゃなくて…」
「超ありがとう!マジ感謝!」
「テメー10代目に触るんじゃねェ!!」


マイペースすぎて会話が成立しない…!
この人、いったい何者なんだろう…。見た感じ歳は私を同じくらい。海…しかもグランドラインにいるってことはそれなりの理由がありそうなんだけど……


「あ、おれ内藤ロンシャンね!よろしく!トマゾ海賊団の8代目船長やってまーす!ピースピース!」
「「「!?」」」


不意打ちであっさり私達が知りたかったことを教えてくれた。
しかも海賊の船長だなんて…!私もしかして、とんでもない人を助けちゃった…!?


「トマゾ海賊団っつったらボンゴレとは敵対勢力だな。」
「そうなの!?」
「2代目の時大きな戦闘があったらしいぞ。」


よりによって思いっきり敵側の人!?


「大丈夫っス10代目!トマゾなんて今や弱小海賊団。こいつ海に突き落として壊滅させてやりましょう!」
「何怖いこと言ってるの!?ダメだよ!」


いい笑顔でとんでもないことを言い出す獄寺くんと慌てて止めた。
そんな2代目の時仲が悪かったからって、そんなの私たちには関係ないと思うんだけど…


「あららもしかして皆さんボンゴレの人?やっべー!会ったらとりあえず殺せって教えられたあのボンゴレ!?」
「えええ!?」


なんか向こうでもめちゃくちゃ恨まれてる!そんな代々受け継がれるほど険悪だったの!?


「どーしよどーしよ!?始末しないとマングスタに怒られる〜〜」
「し、始末って…」
「10代目、下がってください。」
「ん〜…」


相変わらずのテンションで始末とか物騒なことを言われて獄寺くんが私を庇うように前に出た。
まさか、こんな船の上で戦闘騒ぎになっちゃうの!?


「ま、いっか!!」
「は…」
「俺たちは俺たちで仲良くしちゃおーよ!10代目ってことは君が船長!?」
「いや…」
「そーだ!テメーなんかと対等に喋っていい方じゃねーんだよ!!」
「あらまあらま!女の子が船長とかサイコーじゃん!?おれ女の子大好きだから超歓迎!なおさら仲良くしちゃおー!」
「だから近づくんじゃねーよ!!」
「はは、面白い奴だなー。」


もうテンションが高すぎて口を挟む隙がない。けど…昔の因縁とか関係なく仲良くしようって考え方には賛成かな。
…まあそもそも、私は海賊の船長になんてなるつもりないんだけど。


「でも、船はどうしたの?一人で海に浮かんでたんだけど…」
「いやー、海軍の襲撃受けちゃってー!」
「え!?じゃ、じゃあ他の仲間は…」
「逃げ切った後足滑らして落ちちゃったんすよーー!!」


深刻な状況なのかと思ったら単なるドジだった…!


「てなわけでしばらくここに置いてよ!ヨロシク!」
「は!?」


…なんか気づいたらロンシャンが居候することになった。






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