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32:船での日常


京子ちゃんとハルちゃんと涙ながらにお別れして2日目……信じたくないけれど、この船はグランドラインに向かって進んでいるらしい。グランドラインってめちゃくちゃ怖いところじゃん……そんなの聞いてない……


「9代目はグランドラインにいるからな。会いたがってたぞ。」
「私はあまり会いたくないんだけど…。」


リボーンの話に度々出てくる「9代目」。正直、私を10代目候補にあげた張本人だからあまりいい印象ないんだよなあ。
…ちなみに、リボーンが私の心の声に反応するのはよくあることだ。もう気にしないようにしている。
優雅にエスプレッソコーヒーの入ったカップに口をつけ、隣に美女(ビアンキ)を侍らすリボーンは悔しいけど絵になる程かっこいい。船長は私だって言ってくるけど、実質この船で1番の権力者はリボーンだ。


「おはようございます10代目!」
「おはよう、獄寺くん。」


私のことを「10代目」と呼ぶのは獄寺くんしかいない。まあ…慕ってもらえて悪い気はしないんだけど、私はそんな大層な人間じゃないし10代目になるつもりもないからその呼び方も敬語もやめてほしい。……と思ってるけど怖くて言えない。


「リボーンさん、次に目指す島はここでいいんスよね?」
「ああ。順調か?」
「はい。明日の夜には着くはずです。」


獄寺くんはこう見えて…って言うと失礼かもしれないけど、頭が良い。航海術の知識も当たり前のように備えていて、この船の航海士的なことをやってくれている。
航海術なんて普通の子供は教わらないはずなのに……もしかしたら獄寺くんってお金持ちの家の子なのかもしれない。シャマルが家の主治医って言ってたし…。


「島に寄るの?」
「ああ。グランドラインの航海は今以上に厳しいからな。船の設備を整えるぞ。」
「へ、へーえ…」


聞かなきゃよかった。今でも十分立派なこの船でも耐えられないかもしれない航海になるってことじゃん…!このまま目的地に着かなければいいのに…。


「それより名前、今日の筋トレはもう終わったのか?」
「え?あはは…」


ぎくり。実はリボーンから毎日やれと渡された筋トレのメニューがある。まずは手始めに腹筋と腕立て500回ずつ、らしい。全然手始めじゃない…!


「この前の鬼ごっこ大会で筋肉痛が酷くて…」
「知るか。今からやれ。」
「ひいっ!」


言い訳をしたら問答無用で銃口を向けられた。理不尽だ!


「まーまー。おれも付き合うぜ、名前!」
「おれも一緒にやるぞ!」


後ろから私の肩に手を置いたのは武と了平さんだった。
2人ともうっすら汗が滲んでる。きっと今の今まで筋トレしていたに違いない。更に腹筋と腕立て500回ずつやる気になれるなんて…すごいなあ…。


「しかし500回では足りん!1000回やるぞ沢田!」
「むむむ無理ですよ!」


特に了平さんは私とは正反対の精神構造をしているらしい。1000回なんて言い出したらリボーンが「それいいな」とか言っちゃうじゃん!とばっちりくらうのはごめんだ…!


「名前さーん!それ取ってくださーい!」
「へ…わっ!」


イーピンの声が聞こえて振り向くと目の前に何かが覆いかぶさった。…シーツだ。洗剤のいい匂いがする。


「ごめんなさい、風で飛ばされちゃって…。」
「ううん。洗濯してくれてるんだね、ありがとうイーピン。」


イーピンはすごくいい子だ。船に乗ると「何か手伝えることありますか」って聞いてくれて、洗濯を進んでやるようになってくれた。今までは私がやってたからすごく助かる。
風で乱れた短い前髪を整えてあげると嬉しそうに笑った。可愛いな。妹ができたみたい。


「名前さん!おれ、トイレ掃除頑張りました!」
「ランボも、ありがとう。」


もう一人、可愛い子がやってきた。スッポン片手に駆け寄ってきたのはランボだ。いつの間にかお掃除担当みたいな感じになってきた。こうやっていちいち報告してくるのが本当可愛くて、ランボの頭をよしよしと撫でた。


「ランボ、まだお風呂掃除終わってないでしょ?」
「これからやるところだもん。イーピンこそ早く洗濯終わらせなよ。」
「むむむ…!」
「ふーんだ。」


ランボとイーピンは同い年ということもあって、もうすっかり打ち解けているみたい。こうした些細な口喧嘩も傍から見れば可愛らしいものだ。


「ねえ。」
「!?」


そんな2人を見てほのぼのしていたらいつの間にか背後に雲雀さん……し、心臓に悪すぎる…!


「お腹空いたんだけど。」
「え…あ、はい。」


雲雀さんは基本的に船では自室で過ごすことが多い。何故なら群れたくないから。でもお腹は空くみたいで、ご飯の時だけは台所に赴く。
そういえば今日はまだ朝ご飯作ってなかった。台所にご飯が用意されてなくてここまで来たんだろう。とても不機嫌でいらっしゃる…!
でもこうやってご飯をねだりに来るなんてちょっと可愛いな、なんて思ってしまたり…


「…ハンバーグにして。」
「えええ!?」


くすりと笑ってしまったのが気に入らなかったのか、すごく手間のかかるリクエストがきた。ていうか朝っぱらからそんな重たいもの食べられるんですか!?


「名前、おれのコーヒーも頼む。」


…私は船長なんかじゃない、雑用だ。







■■
仲間も増えてきたのでちょっと整理するつもりで。
各々の船での過ごし方は以下の通り。

名前→雑用、リボーンからの課題
リボーン→名前の教育、新聞片手にコーヒータイム
獄寺→進路のチェック、武器の手入れ
山本→釣り、筋トレ
ランボ→掃除担当
雲雀→部屋で読書か昼寝
ビアンキ→リボーンのそば
シャマル→酒飲むか寝てる
了平→筋トレ
イーピン→洗濯担当

次はキッド海賊団と絡ませます。





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