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30:鬼ごっこ大会A


「待てェーーー!!」
「紅組の総大将を捕まえろーーー!!」
「ひいい!!」
「させるか!」
「名前には指一本触れさせねーぜ。」


町民総出の鬼ごっこ大会は大いに盛り上がっていた。
大乱闘になったスタート地点を離れて、名前は必死に逃げていた。援護をするのは獄寺と山本と了平。3人のおかげで名前は遅い足ながらも無事でいられた。


「よし、雲雀という奴を捜すぞ沢田!」
「ええ!?そんなわざわざやられに行くようなこと…!」
「相手のハチマキを取らなきゃ勝てんのだ!極限必勝だぞ!」


そう、了平の言う通りこの大会はどちらかの総大将のハチマキが奪われた時点で終了するのだ。
あの雲雀からハチマキを奪う……名前にはとてもイメージができなかった。


「僕ならここにいるよ。」
「ひ、雲雀さん…!」
「おお、捜す手間が省けたな!」


気が付けば雲雀はすぐ後ろにまで迫ってきていた。3人は立ち止まって応戦するつもりだ。


「そういえば他の人達は…」
「全員咬み殺したよ。」
「ええーー!?」


後ろを振り返って気付いたが、さっきまで追ってきていた町民達がいない。
よく見てみると雲雀が通ってきたと思われる道中には点々と人が倒れていた。
本人の言う通り全員咬み殺してきたらしい。敵味方関係なく、だ。
やはり雲雀はこの大会のルールをよくわかっていない。というか、彼にとってそんなのどうでもよかったのだ。


「うぃ〜…っく。何してんだお前ら?」


雲雀を前に動けないでいると、今までどこに行ったかわからなかったシャマルがフラフラと現れた。真昼間から酔っぱらっている。


「おかしいんだよ、今日は女が見当たらねェ。」
「酔いどれうぜー!早く消えろ!」
「シャマル、危ないから…!」
「んん? お。お前姉ちゃんいる?」
「うざい。」
「のへーーー!!」
「あああ!!」


恐れていたことが起きてしまった。不用意に雲雀に近づいた何も知らないシャマルがあっという間に吹っ飛ばされてしまった。


「ど、どうしよう…」
「やるしかねーだろ。」
「リボーン!」


ジリジリと迫ってくる雲雀に後ずさる名前の背中を押したのはリボーンだった。


「名前、武器を貸してやる。」
「え…グローブ!?」


リボーンから渡されたのはボクシングで使うようなグローブだった。


「グローブとは…沢田、さてはお前我がジムに入りたいのだな!?」
「ち、違います!リボーンっ、こんなのもらったって効くわけないよ!」
「やってみなきゃわかんねーだろ。死ぬ気になってから言え。」
「ひっ…」


何度も言うが名前は普通の女の子。今までボクシングなんてやったことも見たこともない。
できるわけがないと抵抗しても、この教育係には無駄なのだが。結果、問答無用で死ぬ気弾を撃たれた。


「死ぬ気でハチマキを奪う!!」


死ぬ気になった名前は両手にグローブをはめて雲雀に向かった。


「…いいね。今の君は咬み殺しがいがあるよ。」


そんな名前を見て雲雀は好戦的な笑みを浮かべて応戦する。
死ぬ気にはなったものの、名前のパンチは雲雀に余裕でかわされてしまう。
しかし、名前のグローブが雲雀の頬を掠めた瞬間。


「!?」
「…!」


雲雀の体がふらつき、2発目がもろに腹部に命中した。
そしてなんと、雲雀は力なく地に膝をついてしまったのだった。
確かに当たりはしたが、雲雀にとって大したダメージになる程の威力ではないはずだ。雲雀自身も不思議そうにしている。


「これはいったい…」
「ヤツの仕業だ。」
「ヤツ…?」
「おー、いてて……ったく、年上は労われってんだ…」
「シャマル!?」


「ヤツ」とリボーンが示したのは先程雲雀に吹っ飛ばされたシャマルだった。


「シャマルは雲雀に吹っ飛ばされる時にトライデントモスキートを発動したんだ。」
「な…!雲雀に病気をかけたってことスか!?」


トライデントモスキート…蚊を媒体に相手を病気にかけてしまう、シャマル特有の技だ。


「悪いが潜り抜けてきた死線の数が違うのよ。坊主にかけたのは悪魔の実病……海や海楼石が苦手になる病気だ。」
「そしてそのグローブには海楼石の成分が入ってる。」
「それで…」


雲雀にかけた「悪魔の実病」とは、能力者でないにも関わらずカナヅチになってしまうという病気だった。
そのため能力者が苦手である海楼石に触れると力が抜けてしまう。リボーンから渡されたグローブにはその成分が入っていたため、それに触れた雲雀は力が抜けて膝をついてしまったというわけだ。


「そのグローブで押さえればあの雲雀だって抵抗できねーはずだぞ。」
「そ、そんなことできないよ!シャマル、雲雀さんの病気治して!」
「は?そいつ敵なんじゃねーの?」
「だ、大丈夫ですか雲雀さん…」
「………」


ハチマキを取ることよりも雲雀の身の方が心配になった名前からは、死ぬ気の炎が消えていた。不安げな表情で雲雀に駆け寄った。


「…本当君はわからないね。あの貧相な体からは想像できないような力を持ってるみたいだけど…まだ使いこなせていないみたいだ。」
「なっ…」
「雲雀テメェ…!」


「貧相な体」と言われて、名前は裸を雲雀に見られたことを思い出してしまった。
途端に真っ赤になり固まってしまう名前を見て雲雀は笑みを浮かべた。


「…でも勝つのは僕だ。」
「あっ…!」


そして動けなくなった名前のハチマキをいとも簡単に取ってみせた。
…一応、ハチマキを奪うというルールは理解していたらしい。






■■
サクラはOPの世界じゃどこにでもあるわけじゃないのでやめときました。
少し無理矢理ですが、これで黒曜編での辻褄を合わせときます。






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