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28:風邪


「っくしゅん!」
「情けねーな。あの程度で風邪ひくとは。」
「川に落とされたり温泉壊されたりしたらそりゃひくよ!げほっ…」
「まーまー。」


翌日。鬼ごっこ大会まであと1日というところで名前は風邪をひいてしまった。
本人の言った通り、川に落とされてびしょ濡れになったり温泉を壊されて思いっきり湯冷めしたりしたら風邪をひくのも納得できる。


「そんじゃ俺はブラブラしてくるから…名前の看病は頼んだぞ、山本。」
「おう、任せとけ!」


船の中で安静にする名前の看病を買って出たのは山本だった。
獄寺は昨日の一件があったからか、名前と顔を合わせずらいようだ。肝心の医者であるシャマルは行方不明。


「げほっ…ごめんね、武。」
「気にすんなって!それより明日の…鬼ごっこ大会だっけ?どーすんだ?」
「う、うん…」


名前が総大将を任された町全体の鬼ごっこ大会はいよいよ明日だ。
確かに元々名前が望んだことではないし風邪で休めたら…なんてことも考えていたが、実際こうやって風邪をひいてみると自分を信じて任せてくれた了平、心から応援してくれる京子やハルに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


「今日はゆっくり休んで…ちゃんと、出ようと思う。」


もちろん今でも総大将を自分がやるなんておかしいと思っている。
それでも信じて応援してくれる人がいるのだから、精一杯期待に応えたいと思うようになったのだ。


「…ん!なんつーか…名前、変わったな。」
「え…?」
「頼もしくなった。」
「……そう、だね。昔の私だったら…きっと逃げてた。」


山本の言う通り、昔の名前だったら今頃逃げていただろう。
こうやって困難に立ち向かえるようになったのは、認めたくはないが突然現れたハチャメチャな教育係のおかげなのかもしれない。


「…ま、無理はすんなよ。名前を護るのはおれの役目だって思ってっから。」
「! 確かに、小さい時から武には助けられてばっかりだったね…。」


山本が名前の額を撫でると、名前は嬉しそうに目を細めた。
思い出すのは小さい頃の記憶。いつだって山本は名前の傍にいてくれた。


「そういえば、こんなこと小さい頃にもあったね。」
「?」
「武が風邪ひいた時…」
「…ああ、名前が看病してくれたな。」
「私、武が死んじゃうんじゃないかって…怖くてずっと泣いてた。」
「はは、そーいやそーだった。」
「そしたら武さ…、」
「おれもう一生風邪ひかない。名前を一人にしないよ。」
「!」
「…覚えてるぜ。」


山本は名前の額を撫でたまま目を細めた。
大きくなって山本は漁に出ることが多くなってしまって、名前は勝手に幼馴染が疎遠になってしまったと思っていた。
しかし山本の中で名前はいつも大切は女の子で、それは今も変わらない。果たしてどのくらいの気持ちが伝わってるかはわからないが。


「武…一緒にいてくれて、ありがとう…」
「!」


名前の屈託のない笑顔とともに言われた素直な言葉に、山本はすぐに返事ができなかった。
普段滅多なことでペースを乱さない山本だが、この女の子はいとも簡単にそれを崩してくる。


「はは、敵わねーな。」


山本がそう呟いた時、名前は静かな寝息をたてて眠りに落ちていた。







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