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雲雀と恋人E


「……」


3月14日……これほど人を待ち遠しく思ったのは初めてだ。

今の時間は12時20分。もう今日はこれで何回時計を見たかわからない。
いつもなら5分前にはいる名前がまだ来ない。どうしたんだろうか……今日来てないのかな…それとも、何か事件が…


バンッ


「ごめ…ッ日本史の、ノートとってて…!」


…来た。いつもドアは静かに開けてって言ってるのに…急いでるとすぐに忘れるんだから。まあいいけど。
名前は日本史のノートを大事そうに抱えて、僕の隣に座った。


「ねえ雲雀知ってた?織田信長は明智光秀に殺されるときいちごパンツをはいてたんだって!」
「……」


嬉しそうに今日教わったことを僕に話してくる名前。
目を輝かせて僕のコメントを期待してる名前には悪いけど、とても反応しづらい。何それ?


「名前、君に渡したいものがあるんだ。」
「いちごパンツは…」


まだいちごパンツ…いや織田信長?の話をしたそうな名前はあえて無視して、僕は自分の用件を進めることにした。
テーブルの上に用意してあった細長い箱を名前に差し出す。
名前はキョトンとそれを見て、それから僕を見た。どうやら今日が何の日かわかってないみたいだね…。


「バレンタインのお返しだよ。」
「…! あっありがとう…!」


そう言うと名前はやっと気づいたみたいで、はにかんだ笑顔で箱を受け取った。
なにその顔、反則なんだけど。キスしたいと思う僕の気持ちなんて知らずに、名前は無邪気に「開けていい?」と聞いてきた。
そんないちいち聞かなくてもいいのにって思ったけど、丁度1ヶ月前、僕も同じことを言った気がする。
ラッピングのリボンを解く名前の顔は新しいおもちゃを買ってもらった小さな子供みたいに純粋で無垢だった。
ここでキスしたらどんな顔になるかな。


「わぁ…!」


紅茶を一口飲んだあと、名前を見てみたら箱の中身を広げてまじまじとそれを見ていた。
そんなにじっくり見られると恥ずかしいんだけど…。でも、多分喜んでくれたかな……よかった。
実は内心、ドキドキしてた。こうした形で人にものをあげるのは初めてだったし、相手は名前……恋人だ。
僕は心の中で安堵のため息く。チラリと名前に目をやれば、名前はまだ僕があげたネックレスをキラキラした目で見つめていた。


「ありがとう!大事に…する、ね。」


そして照れながらそう言った。
まったく君は…。僕がそういう反応に弱いって知ってるのかな。
名前があからさまに赤面するからこっちまで熱くなってくるよ。


「…貸して。」
「え?」


その熱を名前に知られたくなくて、僕は名前の手の中にあったネックレスを、半ば無理矢理奪い取った。


「つけてあげる。」
「! う、うん…!」


名前は「なんで?」って顔をしたけど「つけてあげる」って言ったら嬉しそうに頷いた。
ああもうだから…!…最近名前の表情1つ1つに心を乱されている。末期、というやつだろうか。


「あ、ちょっと待って!」
「?」


急に名前が止めたと思ったら、何を思ったのか、両サイドの髪を後ろにはらって、それから…制服のリボンをとってシャツのボタンを上から2つ目まで外し始めた。
多分つけやすいように気を遣ったんだと思うけど……君は…!これは、やばいだろ。無自覚でやってるって言うなら、怒るよ。


「どうぞ。」
「……」


まぁ…もちろん名前にそんな気がないということはわかってたけど。そんなことされたら誰だって期待するだろ、バカ。
僕はとりあえず今は諦めて、名前の後ろ髪と首の間に手を回した。
ネックレスの金属が肌に当たったせいか、美空がビクッとして目を瞑った。
…だからダメだよ、そういう反応は。まだ我慢だ…。これつけ終わったら思いっきりキスしてやる。


「…できたよ。」
「…ありがとう!」


僕が言うと名前は目をゆっくり開けて、自分の胸元に光るネックレスを見て、また笑った。
気に入ってくれたみたいで安心した。今日、可愛すぎだよ、君。


「名前…」


さっき心の中で誓ったようにキスしようと、名前の髪を撫でた。
そうすると名前もそれを感じとったみたいで、恥ずかしそうにゆっくり瞼を閉じる。
今日はやけに素直だ。嬉しいけど…これはこれで理性を保つのが大変だな…。


「ん…」


いつもより深めに口付ければ、名前の口から小さく息が漏れた。
ああもうダメだ。名前が悪い。


「んっ…!?」


僕はもっともっと深く押し付けて、名前をソファに押し倒した。
キスの最中に口開けてるなんて無防備にも程がある。その隙間から舌を滑り込ませて、名前の舌を自分のに絡ませた。


「ふぁ…あっ…」


名前は往生際悪く逃げようとするけど、そんなの僕にとって逆効果だ。もっといじめたくなる。
前歯の歯茎の裏を舌でなぞれば、名前の肩がビクッとして背筋がピンとなったのがわかった。
キスだけでこんなに反応してくれるんだったら、この先はどうなっちゃうのかな。
そんな好奇心がわいてきて、音をたてて名前の唇を解放したあと、ネックレスを指に絡めながら舌を名前の首筋に這わせた。


「ちょ、雲雀!?」


荒い息遣いで名前が抗議する。だからそんなの逆効果なんだよ。


「あぅっ…」


一回肩の方まで行って、それから今度は耳の方までのぼった。
耳にたどり着いたとたんに名前の声が大きくなった。へぇ、耳弱いんだ。
わざと音をたてて耳たぶを咬んだり吸ったりしてみると、名前は今までよりも著しく反応を見せる。


「や…だめ…」


名前の抗議する声もだんだん力を失ってきた。
…これ以上する気はなかったんだけど……もっとしたい。
僕が名前のシャツに手をかけたその時。


「委員長大変です!隣町の生徒とうちの生徒が校庭でケンカ……を………」


僕の行為は突然入ってきたヤツによって止められてしまった。
風紀委員みたいだけど顔も名前も知らないな。
まあ、明日から来れないだろうから覚える必要はないんだけど…


「あああ雲雀だめだってばーー!」





■■
ここでこの連載の話は終了です。
ありがとうございました。






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