RE! | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -



雲雀と恋人A



こんにちは!あと3分というタイムリミットの中で並中に急いでいる名字名前です!
もうちょっと具体的に言うと、並中の応接室に急いでいます。
えーと…その理由というのはあの……並中風紀委員長の雲雀と…、つい2日前からお付き合いしていまして……。
昨日はっきりと恋人なんだなぁって実感して、お弁当作ってきてって頼まれて………届けに向かっているわけです。
いやそれ以前に風紀の朝のお仕事を手伝いに行くのは前々から日課なんですけどね。…けっこうサボってたけど…。
でもまともに仕事任されたことってないような…。だ、だって風紀の書類って難しい漢字がいっぱいなんだもん!
って話ズレましたごめんなさい!とにかく今私は雲雀のところに急いでいます。










バンッ


「おはよう…!」
「…ドアは静かに開けてって何回言えばわかるかな。」
「あ…。」


またやってしまった…!だって急いでくるとなんか…ノリで…ね!


「…おはよう。」


また雲雀は昨日みたいに呆れたようにため息をついてから、挨拶を返してくれた。
そうやって呆れても絶対返事してくれるんだよなぁ、雲雀………って今の色ボケじゃないですから!ただ感心というか何というか……


「名前。」


雲雀があたしの名前を呼んで自分の隣をポンポン、って叩いた。
主語も述語もなくて文章になってないけど、雲雀が言いたいのは「ここにおいで」。
この動作、もう恒例になってきてるからわかる……って色ボケじゃないですからー!!


「あ、お弁当作ってきたよ!」


じゃーんと、自分で効果音おつけてみたりして、2つのお弁当をテーブルの上に出した。
オレンジの方があたしので、青い方が雲雀の。
いつもより20分も早く起きてがんばったんだから!


「…ありがとう。」


雲雀は少しの間お弁当を見つめてからまた書類に目を戻した。
……も、もしかして照れてる…?だとしたらものすごく可愛いのですが!


「名前、この名簿草壁に渡してくれる?昇降口にいるから。」
「あ、うん、わかった。」


雲雀の顔をまじまじと見てみたい衝動と戦ってたら雲雀から名簿を渡された。
その紙の1番上には「2月4日遅刻チェック」の文字が……なるほど、今日は遅刻チェックの日だったんだ。
…久しぶり…っていうか初めて?まともに仕事を任された気がする!


「行ってきます!」
「…うん。」














「……」


名前が元気よく応接室を出て行った後、もう1度テーブルの上のお弁当を見てみた。
…やっぱりある。いや、そりゃあ名前がここに置いたんだから当たり前なんだけど……本当に作ってきてくれたんだ。
多分オレンジの方が名前ので、青い方が僕のだ。
ああ、今の僕はどうしようもないくらいはしゃいでしまっている。頬が緩むのを止められない。
丁度名前に頼めることがあってよかった……こんな顔、名前には見られたくない。
朝のうちにその日の書類に目を通さなければいけないのに、どうしても目がそっちにいってしまう。
このお弁当を名前はどんな顔をして、どんなことを思って作ったんだろう、だとか、そんなことばかり考えてしまう。
早く昼休みにならないかな。さっき朝ごはんを食べた今でも全部食べれる自信あるのに。


ガチャ


「!」
「届けて来たよ。」


そんなことを考えているところに名前が戻って来て、僕はあわてて視線を書類に戻した。
今度はちゃんと静かにドアを開けたけど、これはこれで心臓に悪い。


「早かったね。」
「ねえ、他に仕事ない?」


そんな僕の気持ちなんて知らず、名前はやけに上機嫌でソファ越しに僕の持つ書類を覗いてきた。
まったく……その行動でどれだけ僕が心拍を乱しているか、君は全然知らないんだろうね。知っててやってるとしたら相当な悪女だよ。


「ないよ。また昼休みにおいで。」
「ちぇー。えっと…はやべん?しちゃだめだからね!」
「…しないよ。」


名前は冗談のつもりで言ったんだろうけど、僕にとってはあまり洒落になってない。正直ドキってした。
だいたい昨日はあんなに緊張していたのに何なんだ、この変わりようは。僕だけ意識してるみたいでかっこ悪い。


「……」


気づいたらまた名前が置いていったお弁当を見ていた。
…昼休みがこれほど待ち遠しいと思ったのは初めてだ。











キーンコーンカーンコーン…


あっという間に時間が過ぎてもうお昼休み。今日もあんまり授業集中できなかったな。
だって雲雀にお弁当食べてもらうのが楽しみで…ちょっとだけ怖くもあって。
色どりにはけっこう気をつかったけど雲雀の苦手なもの入ってないかなとか、ちょっと少なかったかなとか、玉子焼き甘すぎたかなとか…。
…雲雀の反応がすごく気になります。
でもやっぱり自分が作ったお弁当を人に食べてもらうっていうのは嬉しいもので…。
自然と応接室に向かう足が速まった。


ガチャ


「…やあ。」


雲雀に言われたようにドアを静かにあけると、いつもの場所に雲雀はいなくて、流しのところでお茶をいれていた。


「そろそろ来る頃だと思ったよ。」


そしてテーブルの上に2つのコップを置く。あ、私の分もいれてくれたんだ!雲雀のいれるお茶って美味しいんだよなぁ。
「ありがとう」ってお礼を言ってから、私はいつもの場所に座った。


「…開けていい?」


すぐに雲雀も私の隣に腰を下ろして……なんて可愛いことを聞いてきますか…!!


「い、いいに決まってるよ!」


そんな、だめって言う理由がないから!むしろ雲雀のために作ってきたんだよ!
雲雀は綺麗な指で包みをほどいて、パカッとお弁当のふたを開けた。
中身を見つめたまま動かない雲雀を、あたしはドキドキしながら見つめた。ど、どうでしょうか…!


「…いただきます。」


そしたら雲雀がこっちを見てそう言ったので、なんだか嬉しくなってきちゃってあたしも自分のお弁当を開けた。
お弁当を手に持ちながらチラリと、横目で雲雀を見てみると、雲雀はまず玉子焼きをおはしで挟んでいた。早速不安なところを…!
何のタメもなく一口でパクっといって、もぐもぐと口を動かす雲雀。


「おいしいよ。」
「!」


いつの間にか雲雀を凝視していた私に雲雀は笑って言ってくれた。
い、今のは反則だ…!!













「ごちそうさま。」
「お、おそまつさまです…!」


それから15分くらいして、雲雀がお弁当をテーブルの上に置いた。
わあ、見事に空っぽだ…!ご飯粒1つも残さず綺麗に食べてくれたよ!嬉しいなあ。


「明日からはもう一まわり大きくしていいよ。」
「あ、うん。」


やっぱり私と同じサイズのお弁当じゃ小さかったかぁ。
それでもいっぱい入れたつもりだったんだけど……男の子ってすごい。


「ごちそうさまでした。」


雲雀がお弁当をふきんに包み終わったところで私も完食です!
よし、明日はハンバーグを入れよう。


「名前。」


お弁当をふきんに包もうとしたところを雲雀にぐいっと引っ張られた。
急なことで一瞬何がなんだかわかんなかったけど、だ、抱き寄せられてるんだ…!
私の頭が雲雀の肩の上に乗った。


「ひ、雲雀…?」
「ん?」


いや、「ん?」じゃなくて…!す、すごい恥ずかしいよこの状態…!
確かにお付き合いしてますけど……雲雀が近い………このにおい、好きだなぁ……ってあたしは変態か!
…でも純粋に、こうしてもらうと落ち着くんだよなあ…。


「名前。」
「…なに?」
「キスしていい?」
「!」


思わずびくって反応してしまった。多分雲雀も肩を通じてわかったんだろうな。
だっていきなりキス……って…!いや、何も変なことじゃないよね!その、こ…恋人……なんだから…!


「う、うん…。」


大丈夫なのに、何で私はこうもどもっちゃうかな…!
だって雲雀の方を見上げたら直で雲雀と目が合って恥ずかしくて…なんて思ってるうちに雲雀の手が私のほっぺに触れた。


「……」


それを合図に目を閉じる。
そしたらすぐ後に、唇に柔らかい感触。1,2秒くらいで離れるくらいのキス。
それなのに私の頭はクラクラしてきて、私は雲雀の顔を見る前に雲雀の肩におでこを埋めた。
恥ずかしくて直視できない。
雲雀は何も言わず私の頭を撫でてくれた。






next≫≫
≪≪prev