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雲雀と恋人@



名字名前、22歳。
ボンゴレ専属スパイとして家光の下で働いていた彼女は、2年前、ツナの教育と護衛のためイタリアから日本にやってきた。
穏和でおっとりしている名前はマフィアでありながら戦うことを嫌った。
それ故、初めて会った時トンファーで攻撃してきた雲雀の印象は最悪だったとのこと。



雲雀恭弥、年齢不明。
彼は波盛中風紀委員長にして不良の頂点に立つ男。
人と群れるのを何よりも嫌い、群れている人間を見つければ容赦なくトンファーでめった打ちにする。
その雲雀の権力は相当なもので、この町で雲雀に逆らう者は誰もいない。…ただ1人、名字名前を除いては。



そんな2人が付き合い始めたのは、昨日の事。














「ん…」


朝の7時45分。
いつもならとっくに起きて学校の応接室にいるはずの名前は、家のベッドの上で寝返りをうっていた。


「ん…雲雀……………!?」


寝言で雲雀の名前を呼んだかと思ったらいきなりガバッと起き上がった。寝起きにしては顔に熱を帯びている。


「な、なんて夢を…!」


頬を押さえながら名前が呟いた。どうやら雲雀とイチャイチャする夢を見てしまったらしい。


ミードーリータナービクー♪


「!」


一生懸命熱を冷ましている名前の脇で並中校歌ヒバードバージョン携帯から流れ出した。
目覚ましアラームではない。それは名前が夢の中にいながら手探りで止めてしまっていたから。これは雲雀からの着信音だ。


「もっももも、もしもし名字名前です!」
『…知ってるよそんなの。それより遅刻だよ。まさか忘れてたんじゃないよね?』
「あ…」


忘れてた…というより純粋に寝過ごしただけなのだが、夢の事で頭がいっぱいでそれどころじゃなかったのは確かだ。
そんな名前に雲雀は電話越しに深いため息をついた。


「ご、ごめんなさいね!今すぐ行けばいいんでしょ!!」
『うん、待ってるから。』
「!」


雲雀の「待ってるから」にまた名前は赤面して、携帯をベッドの上に落としてしまった。
そのとき既に通話は切られていたが、名前はそんな事も気にせずひたすら1人で恥ずかしがっていた。


「…ッ行かなきゃ…!」


数分して正常な思考が戻ってきた名前は早く学校に行かなければと、クローゼットの中の制服に手を伸ばした。












バンッ


「おっ、おはよう…!」
「また君は乱暴に開けて……まあいいや。おはよう。」


急ぎに急いで15分後、名前が応接室にたどり着いた。
中にはやっぱり雲雀がソファに腰をかけていて、名前を呆れて見た次には少し笑って挨拶を返す……そんないつもの動作にも、名前は過剰に反応して赤面してしまった。


「何してるの、早くおいでよ。」
「! …う、うん。」


いつまで経ってもドアから離れようとしない名前を不思議そうに見つめて自分の隣を軽く叩いた。
名前はやはり緊張しながらその示された場所にる。
…が、いつもより少し距離があいている気がする。それに視線も逸らしがちだ。


「…それあげる。」
「へ…?」


もちろんそんな変化を雲雀が見落とすはずがないが、今はまだ様子を見ることにしたようだ。
雲雀が「あげる」と言って目で促したのはテーブルの上に置いてあったコンビニの袋。
中には暖まったカルボナーラが入っていた。


「どうせ朝ご飯食べてきてないんでしょ?」
「!」


図星だった。名前は朝ごはんを食べることさえも忘れる程、急いでここに来たのだから。


「雲雀は食べたの?」
「食べたよ。それいらないから。」
「…ありがとう。」
「……」


雲雀の気遣いに素直に喜んで笑った名前に、今度は雲雀が少しだけ頬を染めた。
いつもポーカーフェイスの雲雀だが、彼も彼で名前との関係の発展に少なからず緊張しているのかもしれない。


「コーヒーと紅茶、どっちがいい?」
「うーん……紅茶!」


雲雀は赤い顔を名前に見せないように立ち上がった。
雲雀が自分以外に紅茶を淹れるのも、名前だけだ。


「はい。」
「ありがと。」


名前の分はテーブルの上に置いて、自分の分は座る際に一口飲んでから置いた。
さりげなくさっきより距離が縮まっていることに、美味しそうにカルボナーラを頬張る名前は気づいていない。













「ごちそうさまでした!」


雲雀が今日の分の書類に一通り目を通したところで、名前がカルボナーラを完食した。
残ったものは全部プラごみだったので、名前はそれを捨てやすいようにビニール袋に一まとめにして、袋の口を縛った。
その様子を見ていた雲雀の目が、ふと、ある一点でとまった。


「名前…」
「ん?」
「ついてるよ。」
「えっ、うそ!!」


どうやら食べる際にクリームソースが飛んでしまったらしい。
雲雀が自分の頬を指差して教えてやるが、名前はソースがついている方とは逆の頬ばかりを必死に拭いていた。


「こっちだよ。」


そんな名前がなんだか面白くて、雲雀は名前の頬に手を伸ばしてそれをふき取ってやった。


「ありが………!!」
「!」


普通にお礼を言おうとした名前だが、よくよく今の状況を見てみると急に恥ずかしくなってきたらしく、誰が見てもわかるくらいに赤面した。
雲雀もまた、名前が急に顔を赤くするものだから今自分していることが恥ずかしく思えてきて、名前程ではないがいつもの彼では考えられないくらいに赤面した。
お互いに緊張しているのを感じとった2人はどちらからともなく視線を逸らして、微妙な空気が応接室内に漂った。


「…あっ、あの…!」


その状況を最初に打破しようと動いたのは名前の方だった。


「私、日本史の授業、受けてくる、ね…!お昼休みにまた来るから…!」


…打破というよりも逃亡に近い。
名前は赤い顔のまま応接室を逃げるようにして出て行ってしまった。


「……(情けない…。)」


雲雀は名前が出て行った後、緊張して動けなかった自分に呆れながら、指についていたソースを舐めとった。













授業開始まであと1分…というところで教室に飛び込んだはいいが、ここにきて今日手ぶらで来てしまったことに気づく名前。


(雲雀も顔、赤かったな…。)


いつもは先生を好奇心旺盛な目でガン見して授業を受けている名前だが、今は雲雀のことで頭がいっぱいであまり先生の言葉は耳に入らなかった。
さっきの状況を思い出しては頭を抱えたり、赤面する名前を先生は本気で心配したそうだ。














ガチャ…


「雲雀…?」


残りの数学、理科、国語の授業も半放心状態で聞いて昼休み。
名前は購買で買ったパンを片手に恐る恐る応接室のドアを開けた。
中には朝と同様に雲雀がソファに腰をかけて書類を整理していた。


「遅かったね。」
「あ、うん。購買が混んでて。」
「僕に言えばそんな群れ消してあげるのに。」
「だめだよそんなの!」


思ったよりいつもの雲雀で名前は安心して、雲雀の隣に座った。


「って…雲雀またコンビニ?栄養偏っちゃうよ。」


ふと雲雀が手に持つものを見てみると、それはコンビニのおにぎり。おかか味だ。
テーブルの上にもう2つ、違う味のおにぎりが置いてある。


「名前だって購買だよ。」
「今日は時間がなくて……いつもはちゃんと作ってくるもん。」
「ふぅん……じゃ、明日から僕の分も作ってきてよ。」
「へっ!?」


まさかそうくるとは思ってなかった名前は自然と間抜けな声をあげてしまった。
別にいやなわけではない。ただ、雲雀にお弁当を作るという行為が名前にはたまらなく恥ずかしく感じられたのだ。


「いいでしょ?恋人なんだから。」
「!!」


そして雲雀のこの一言で名前の顔が火がついたように赤くなった。


「こ、こいびと…」


名前はゆっくりとその単語を口にした。


「うん。僕が名前が好きで、名前も僕が好きなんだ。これで恋人じゃないって言ったらおかしいよね?」


確かに昨日、お互いに想いを告白したが直接「付き合おう」とか、そういうことは一切言わなかった。
だから今まで変にギクシャクしていたのかもしれない。


「そ、そっか…。」


その事実を今日、やっとかみしめるように名前が呟いた。
自分は雲雀と付き合っているんだ、と。


「…で、お弁当は作ってくれるの?」
「…うん。」


今度は恥ずかしいというよりも幸せという気持ちが強かった。
まだ熱を帯びた顔で、名前は少し控えめににっこりと笑った。








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