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22:京子来る


「このアイスおいしいですね。」
「うん!ランボはブドウ味?」
「はい!」
「一口ちょーだい。」
「えっ…」
「私のも一口あげるから。」
「あ…は、はい。」


新しい島に到着し、名前はランボと町を歩いていた。
リボーン、シャマル、ビアンキはいつものようにどこかえ消え、獄寺はダイナマイトの火薬を仕入れに行き、山本は船番、雲雀は…謎だ。


「は、放してください…!」
「!」


ランボと並んでアイスを食べる……そんな穏やかな時間が流れる中で、何やらトラブルを感じさせる声が聞こえた。


「いいじゃんちょっとくらいよ〜。」
「どーせ一人なんだろ?」
「い、嫌です…!」


路地裏を覗いてみると、一人の女性がガラの悪い男達に絡まれてるのが見えた。どう考えてもお友達のようには見えなかった。


「ど、どうしよう!?」
「ランボは誰か呼んできて。」
「え、名前さ…!」


名前はランボに指示だけ残して路地裏に入っていってしまった。いつも気弱なくせに、誰かのピンチとなると自分の身も顧みずに進んでいく。そんな名前に惹かれていたランボは唇をかみしめて指示通りにこの場を離れた。


「海兵さんこっちです!!」
「「!?」」
「行こう!」
「あ…」


路地裏に入った名前は大声を出した。そして「海兵」というワードに怯んだ男達の隙をついて囲まれていた女性の腕を引いた。もちろん海兵なんて来ていない。名前は女性の手を引いて全速力で走った。


「はぁ、はぁ…」
「あの…ありがとう。」
「あ……ど、どういたしまして!」


少し離れたところで止まって呼吸を整える。運動神経が並以下の名前にとって、この程度の全力疾走でもかなり疲れるのだ。
お礼を言われて初めて女性の顔を見てドキっとした。何故ならものすごく可愛かったから。この容姿なら男に絡まれるのも納得してしまう。


「いたぞ!!」
「逃がすな!」
「ひっ…に、逃げよう!」


一息ついたのもつかの間、海兵がいないことに気付いた男達が追ってきた。名前は再び女性の手を引いて走る。


「よくも騙してくれたなァ!」
「お前も一緒に可愛がってやんよ!」


しかし名前の運動神経では成人男性の足に敵うわけがなかった。どんどんと距離が縮められていく。こんなことだったらもう少し運動しておけばよかった、と名前は後悔した。


「だったら死ぬ気で逃げてみろ。」
「リボーン!」


走り抜ける視界の隅に写ったのはリボーン。助けてくれるのかと思いきや、その銃口は名前に向けられている……いつものパターンだ。


ズガン!


「死ぬ気で逃げる!!」
「え…わっ!?」


死ぬ気の炎を帯びた名前は女性を横抱きにし、猛スピードで走って行ってしまった。あまりもの速さに男達は唖然として、ただただその後姿を見ることしかできなかった。


「あのスピード……ただ者ではない…!!」


ガラの悪い男達の他に、名前の後ろ姿を嬉々とした表情で見つめる男が一人いた。














「ここのケーキすごく美味しいの!」
「わ〜…迷っちゃうなあ。」
「だよねー。」


名前が助けた女性は笹川京子。この町に住む普通の女の子だ。
京子は助けてくれた名前に対してお礼がしたいと言い、名前をオススメのケーキ屋さんへと連れてきた。
ショーケースに並ぶケーキひとつひとつをしっかり見て、名前はミルフィーユを、京子はショートケーキを選んで席についた。


「ごめんね、連れまわしちゃったのに…ケーキまで。」
「ううん!私絶叫系好きだよ。」
「そ、そっか。」


京子は少し天然が入ってるのかもしれない。普通の感覚なら知らない人に抱えられてありえないスピードで連れまわされたら驚いたり怖がったりするだろうに。
死ぬ気の姿を見たにも関わらず自分を普通の女の子として接してくれる京子は、名前にとって天使のように見えた。


「ん…おいしい!」
「でしょ?ここのケーキはどれも美味しいの。」


今思うと、名前の育った島には同い年の女友達はいなかった。
こうやって自然体で甘い物を食べて笑いあう……そんな普通のことが名前にとってはすごく特別なことのように思えた。


(幸せだな…)


込みあがってくる温かい気持ちをケーキと一緒に噛みしめた。








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