112
「ところでバジルに何もらったんだ?」
「え、そういえば…!」
バジルとランチアと別れたあと、バジルに握らされたものを見ると小さなビン。その中には丸い錠剤みたいなものが入っている。どこかで見たことがあるような…とツナは考え込んだ。
「死ぬ気丸だ!!」
それはリング争奪戦の修行の時にバジルが使っていた死ぬ気丸。死ぬ気弾を撃ってもらわなくても飲めば死ぬ気になれるという優れもの。
「こ…これもらっても使い道ないよ!!」
「そんなことありませんよ。リボーンがいなくても死ぬ気になれるんですよ?」
「そうだぞ。これからおまえ、どんどん狙われるだろーしな。」
「じょ、冗談じゃないよ!!」
ツナとしては自ら死ぬ気になるつもりなんて無いのだが、リング争奪戦に勝利し正式に10代目と認められた今、マフィア関係者から命を狙われることは避けて通れない道だ。
「ちょうだい。」
「ダメだランボ!!食べると死ぬ気になっちゃうぞ!!死ぬ気って死ぬ程つらいんだぞ!!」
「それに死ぬほどうざくなるぞ。」
何一つわかっていないランボが死ぬ気丸をアメ玉だと思い、ツナにねだったがもちろんあげられるわけがない。
「あらリボーン!今のコチンときた!」
「それを言うならコツンだよ、ランボくん。」
「いや、カチンです…。」
「チンコ?」
「ちがう!!」
「?」
サラっと言ったリボーンの一言にいちいち反応するランボ。しかし日本語が間違っている。親切心で訂正した名前も間違っている。
「やっぱうぜーな。暴蛇烈覇!!!」
「ぐぴゃ!」
それにイラっとしたリボーンは鉄球に変身したレオンでランボをぶっ飛ばした。ランチアの技だ。ツナに抱っこされていたランボは地面に落ち、案の定大声で泣き始めてしまった。
「だ、大丈夫ランボくん!?」
「何やってんだよリボーン!」
「堪忍袋の緒が切れた。」
「リボーンのバカ者が〜!!タレマユのクセに!!」
そう泣き喚きながらランボは自分に向かって10年バズーカを構えた。
一方リボーンの方はというと「タレマユ」という単語にかすかに反応したと思ったら、無言で地面の石を手に取り、容赦なくランボに投げつけた。
「星になれ。」
「ぐぴゃっ!!!」
石は見事に命中し、10年バズーカごとまたランボが吹っ飛ばされる。
シュルルルル
「!」
その拍子に10年バズーカが発射されてしまったらしく、宙に放たれた弾がUターンして丁度リボーン達の方に向かってきた。
「と…飛んできたぞ!リボーン!!」
「ん……?」
いつもならこんなもの軽い身のこなしで避けるリボーンが、なかなか避けようとしない。
「やべーな。動けねえ。」
「え?」
「リボーン?」
動かないのではない……動けなかったのだ。
ドンッ
「「!!」」
ツナと名前がよく理解をしないまま、弾はそのままリボーンに直撃した。
目の前が煙に包まれていく中、ツナと名前は思考を巡らした。
「えっ、ちょっ、うそっ……」
「これはつまり……まさか……」
「「10年後のリボーン!!?」」
10年バズーカにリボーンが当たったのだから、そういうことになる。
煙が晴れていくなか、名前とツナの心拍数はどんどん上がっていった。あの謎だらけなリボーンの10年後の姿……気にならないわけがない。
「あれ……っ」
「リボーン……?」
しかし煙が晴れてもリボーンの姿は見当たらなかった。前後左右、どこを見ても誰もいない。
「き……消えた…?」
「ど、どどどういうことなんでしょうか!?」
10年バズーカに当たった者は10年後の自分と5分間入れ替わることができる。それでもここに誰も来ないということは……
「つ、綱吉さん……」
「よくわかんないけど……5分後には帰ってきますよ!」
ツナは考えてもわからなかったために楽観的な答えを出したが、名前の方はある考えが一瞬頭をよぎって不安になった。
「ドキドキしたのに損した気分だ…。」
「リボーンの10年後なんて、想像つきませんよね。」
いつもと変わらない綱吉に合わせて名前も笑顔を作る。それでも不安は名前に残り続けた。
「とりあえず今日はもう帰りましょうか。」
「へ……あ、そうですね!」
何か嫌な予感がする。その考えを振り払うかのように頭を振って、名前は家へと向かった。
≪≪prev