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「おはようございます、綱吉さん!」
「お、おはようございます…。」


朝、学校に行こうと玄関を出たら門のところに名前さんが寄りかかっていた。
俺を確認するなり笑顔で挨拶してくれる名前さん。
だけど俺は昨日のことがあって、なんだか名前さんの目を直視できない…。
名前さんのお兄さんは本当は生きてて、でも名前さんはそのことを知らなくて……


「昨晩はよく眠れましたか?」
「はっはい…まあ…!」


お兄さんが生きてることを名前さんが知ったら、すごく安心すると思う。
こんな嬉しいこと、このまま知らずに過ごすなんて可哀想だよ…。
俺としては一刻も早く名前さんに知らせたいんだけど……言ったら俺の恋路一生邪魔されるんだよなあ…。
今頃奈良(もしくは京都)に行ってる人がどうやって恋路邪魔できるかはわからないけど、なんかあの人なら本当にやりそうだ…!
リボーンに相談しても「黙ってりゃいいじゃねーか。」って、なんか適当だし…


「おはようございます10代目!」
「よっ、ツナ!」
「あ、おはよー隼人、山本くん。」
「何でテメーがいるんだよ名前!」
「いちゃ悪いの?」
「まーまー落ち着けって。」


まあ………とりあえずは、今のままでいい…かな…。

















「バジル!っと……ランチアさんも!」
「名前!」
「……」


授業が終わると名前は真っ先に学校を出て、空港までの道を走っていると途中でバジルとランチアの姿を発見した。
どうやら2人は今からイタリアに帰ってしまうらしい。
名前は放課後の風紀委員の仕事もほったらかして2人を見送りに来たのだ。


「な、何で…」
「家光さんから聞いたの!もう、何で言ってくれないの?」
「皆さん忙しそうだったので…。」
「見送りくらいさせてよ。寂しいでしょ?」
「! は、はい…!」


名前の言葉に、赤面するバジル。
そんな二人の様子を無言で見ていたランチアはフっと笑った。


「お前が魅了するのは骸だけではないんだな。」
「え?」
「いや、何でもない。」


名前にはランチアの言葉がよくわからなかったが、穏やかなランチアの表情を見て自分もにこっと笑う。


「バジルくん!ランチアさん!」
「綱吉さん!リボーンも!」


その時、ツナがリボーンを背中に乗せて走ってきた。


「な……何も言わないで…イタリアに帰っちゃうなんて…」
「すいません!急な召集がかかったんです。みなさんお忙しいと思いまして…」
「オレは湿っぽいのは苦手でな。」


ツナは3人に追いつくと息を切らして途切れ途切れに言った。
どうやら名前と同様、学校が終わってすぐに駆けつけたらしい。2人の帰国をリボーンにでも聞いたのだろうか。


「すみません、綱吉さん。私が一声かければ良かったですね…」
「いやそんな!こっちHR長引いちゃったし…」


名前とツナが同じクラスであれば2人一緒に来たはずだ。
しかし、今年に入って名前のクラスは雲雀の陰謀によって1−Aから3−Aへ。名前は今一度雲雀を憎らしく思った。


「名前、中学校に通ってるんですか!?」
「うん。すごく楽しいよ!」


名前が制服らしきものを着ているからどうも変だとは思っていたが、バジルは初めて知る事実に驚いた。そして改めて名前の制服姿を見て赤面する。
ランチアの方はそれ程驚いていないようだ。まあ、自分も似たようなことをしていたからだろう。


「に、似合ってますね、制服。」
「ありがとう!」


バジルなりに精一杯言ってみた。目線は名前を直視できないようだが。


「ランチア、クロームに聞いたんだが、おまえが骸に呼ばれてきたってのは本当か?」
「え!?」
「そういえば凪ちゃんが言ってたような…」


ツナの背中から降りたリボーンがずっと黙っていたランチアに聞いた。


「いいや…骸とはあれ以来一切接触がない。ただ、大空戦の前日に妙な虫の知らせがあったのは確かだ…。」
「虫の知らせ…?」
「奴に長時間憑依されていたために他の人間よりも奴の考えを感じとりやすくなっていたとしたら、皮肉だな。」
「ランチアさん……」
「気にするな。骸を許す気はないがこれでおまえの役に立てたのならば本望だ。」


なんとも言えないような表情で語るランチアを見て、名前は切ない気持ちになった。
ランチアと骸との関係は事件のあと、リボーンから聞いていた。
やはり和解は無理なのだろうか。確かに骸がしたことは簡単に許されることではない。
それでも名前はランチアの「許す気はない」という言葉に胸が痛くなった。
ランチアはイタリアに帰った後、例の事件で亡くなったファミリーに家をまわるそうだ。
本当は「骸くんを許してあげて」と伝えたかった。しかしここまで覚悟を決めてるランチアにそんなこと、言えるはずがなかった。


「そうだ、こいつをおまえにやろう。」
「え?」


そう言ってランチアがツナに手渡したのは1つの指輪だった。なんでもランチアのボスの形見らしい。
ツナはそんな大事なもの受け取れないと言ったが、ランチアに押し切られて結局受け取ってしまった。
ランチアのあとにはバジルからも何かを握らされた。それを見て名前が「あ」と呟く。


「忘れてた!2人にお土産があって…」


名前は慌てて自分の鞄の中を漁って、その中から2つの袋を取り出すと2人の手の上に「はい!」と渡した。


「おせんべいの詰め合わせ!すごく美味しいんだよ!」
「わあ…これがあの“センベイ”ですか!?」
「そうなの!私のオススメはおばあちゃんのイラストが描かれたやつでね…」


日本好きなバジルは憧れの“センベイ”にテンションが上がったようで、それを見て名前もテンションが上がった。
ランチアも一瞬キョトンとしたが、すぐにフっと笑って名前にお礼を言った。


「…あれ?」
「ランボさんもピクニックいく!!」
「な!?」


和やかな空気が流れたところで、どこからかやってきたランボがその空気をぶち壊した。
何を勘違いしたのか、これからピクニックに行くものと思ってるらしい。無邪気に走るランボをツナが角を掴んで慌てて止めた。


「気をつけて!」
「バイバイ!」
「バイブゥ〜!!」


煩いランボはツナが抱っこして、4人はバジルとランチアの後姿が見えなくなるまで見送った。
その背後に動く人影には誰も気づいていない。







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