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「ううん……」


夜、寝苦しくて目が覚めた。3時くらいかな。月明かりが部屋に差し込んでちょっと明るい…ってカーテン閉め忘れてるよ俺!
俺はまだ少し気だるい体を起こしてカーテンを閉めた。立ち上がったついでにちょっと飲み物でも飲もうかな。
なんか今までの戦いがウソみたいだ。今日…っていうか昨日だって、山本んちでパーティー開いて……すごく楽しかった。
これからまた、普通の日常が始まるのかと思うと、今までどうでもよかった学校生活も楽しみになってくる。


「…あれ?」


そんなことを考えながら階段を下りてたら、台所が明るい。母さんかな?リボーンは寝てたし……


「…よォ。」
「何でいんのーーーー!?」


俺が台所で見たのは……名前さんのお兄さんがうちの緑茶をうちのコップに注いでいる姿。


「ツナきちだっけ?」
「つ、綱吉です…」
「ジャッポーネの茶はうまいな。」
「いいい生きてたんですか!?」


いろいろとつっこみたいところは山ほどあるけど(名前間違えてるとか勝手に人んち上がってお茶飲んでるとか)、まずはそこだ。
だってお兄さん、名前さんとの戦闘中に…死んじゃったんじゃ……


「当たり前だろ。俺の死に場所は女の胸の中って決まってんだ。」
「……」


どうしよう、真顔でこんなこと言われたらどう反応していいのかわかんない…。
俺が反応に困ってると、絆さんはフッと笑った。


「まずはおめでとう、ボンゴレ10代目。」
「いやマフィアになんかなんないし!」
「……そーなの?」
「ちげーぞ。謙遜してるだけだ。」
「リボーン!いつの間に!?」


さっきまで確かに寝てたのに……流石リボーンだ。
絆さんも当たり前のようにリボーンの存在に気付くなんて、やっぱりすごい人なんだ。


「まーそこはどっちでもいいんだけどさ。」
「はあ…。」


どっちでもいいんだ…。俺にとっては人生が180度変わる事態なのに…。


「設置されたカメラが戦闘中に全て壊れたのはお前の計算だな。」
「ええ!?」
「…ま、名前の腕があってこそだ。」


そういえば名前さんの試合、カメラが全部壊れちゃって途中から様子が全くわかんなかったんだよなぁ。
あれ絆さんの計算だったの!?それって名前さんの銃を避けながらカメラに当たるように動いてたってこと…?す、すげー…!
確かに絆さんが死んだところを直接見た人、いないもんな…。


「で、何しに来たんだ?」
「ああ、ツナきちに頼みがあって来たんだよ。」
「頼み…?」


絆さんが俺に頼みって……何だろう。ていうかまた名前間違えてるし…。


「名前のこと、頼むよ。」
「!」


そう言った絆さんは俺を真っ直ぐ見つめていて、紛れも無く「兄」の顔だった。
俺は兄弟いないからよくわかんないんだけど……例えば京子ちゃんのお兄さんとかと同じような雰囲気を、確かにその時感じた。


「最初はボンゴレやめさせようと思ってたけど………大丈夫そうだし。」
「……」
「…ツナきちには言うけど名前の親は…」
「あ、その……名前さんから聞きました…。」
「!」


名前さんの親の話は風のリングの戦いのあと、名前さん本人から聞いた。
名前さんが今まで親だと思ってきた人たちが実は親じゃなかったんだよな…。
そう話してくれた名前さんはすごく困惑しててこっちも困ったけど、同時に俺は弱みを見せてくれたことが嬉しかった。
名前さんはいつもみんなに心配させないようにがんばってたから。


「…そーか。名前はアンタのこと信頼してんだな。」
「いやそんな信頼っていうか…」


信頼…っていうのは大袈裟な気がする。
俺はただ、名前さんとは友達……っていうか、仲間でいたいだけで……


「…俺は名前が傷つくのを承知で親のことを話した。」
「……」
「正直、立ち直れるとは思ってなかった。一人で思いつめて、ボンゴレをやめる決心でもしてくれれば将来絶対幸せになれる……」
「……」
「………そう思ってたけど、とんだ勘違いだな。」
「……」
「名前にはボンゴレが必要だ。」
「!」


やっぱり絆さんは名前さんのお兄さんだ。
きっとファミリーを惨殺したのも、死を装ったのも、全部名前さんのため。絆さんは名前さんの幸せを一番に考えてたんだ。


「とりあえず名前のことはツナきちに任せる。」
「あっ、あの!」
「ん?」
「あなたは……どうするんですか…?」


絆さんが家族を殺したっていう事実は変わらないけど……誤解は解けたんだ。
絆さんが生きてるって名前さんが知ったら、絶対喜ぶ。このまま名前さんが何も知らないでいるのは可哀想だよ…。


「一応死んだっつーことになってるし、見つかるといろいろ面倒だから……そうだな、京都にでも行くかな。」
「(京都!?)」
「鹿にせんべい食わせたい。」
「(鹿せんべいは京都じゃなくて奈良ーーー!!)」


やっぱり絆さんと名前さんって似ているのかもしれない……じゃなくて!俺が言いたいのはそういうことじゃ……


「……坊主、お前はわかってると思うけど………名前を泣かせたら許さねーから。」
「自分が泣かせてるくせによく言うな。」
「うるせー。」
「名前さんには言わないんですか!?」
「何を?」
「お兄さんが生きてるってことです!きっと名前さん安心して…」
「名前には黙っとけよ。」
「な、何でですか!?名前さん本当にお兄さんのこと…」
「もしバラしたら一生お前の恋路を邪魔してやる。」
「えーーー!?」
「じゃ、そーいうことだから。」


軽く手を振って絆さんは窓から出ていってしまった。
追いかけようにもなんか気が抜けちゃって……絆さんってよくわからない。
どうして名前さんに何も言わないんだろう…。絶対名前さん喜ぶのに……それで、また前みたいな兄妹になれるはずなのに…。


「リボーン…」
「寝るぞ。」
「なあッ!?」





■■
「ツナきち」って呼ばせたかった。





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