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全部のモニターが消えちゃったあと、チェルベッロが新しいカメラを準備するって言ってから5分以上が経っていた。
「大丈夫かな…」
「なんも聞こえねーな…」
ドォォオンッ
「「「「「!?」」」」」
何も聞こえなくなって静かなグラウンドに突然爆発音が響いた。
どこからかはすぐにわかった。…中庭だ。
「名前さん!!」
オレは気づいたら中庭に向かって走っていて、それはみんなも同じだった。
「名前さん!!」
中庭についてまず、隅っこに名前さんが座り込んでいるのを見つけた。お兄さんの姿は……どこにもない。
名前さんは泣いていた。うつむいてて表情はわからないけど、何故かオレにはすぐにわかった。
何が起きたのかまだよくわかんないけど勝負がついてないかもしれないし、フィールド内には入らないようにした。
本当はすぐにでも名前さんのところにかけつけたいのに。獄寺くんや山本……あのヒバリさんも、我慢してるみたいだった。
そしたらどこからかチェルベッロの2人がおりてきて、煙の立ち上る場所に着地した。
黒い砂…灰…かな。それを手にとって、それから2人顔を合わせて頷いた。
「名字絆は死亡したとみなし、この勝負の勝者は名字名前とします。」
「「「「「!?」」」」」
いつもと変わらない口調のチェルベッロの言葉に、オレたちはすごい衝撃を受けた。
名前さんのお兄さんが……死んだ…?だとしたら、さっきの爆発音で……?
名前さんは相変わらずうつむいたままで何も動かなかった。
「名前さん…」
気づいたらオレは名前さんに駆け寄ってて、でも何て言ったらいいのかわかんなくてとにかく名前を呼んだ。
名前さんはゆっくり顔を動かして、オレを見上げた。名前さん…泣いてる…。
「綱吉さん…私…」
「……」
「!」
こんなに弱弱しい名前さんの声を聞いたのは初めてだ。
表情は何かにおびえているかのように歪んでいる。ちょっとでも触れたら壊れてしまいそうだった。
それでもオレは名前さんの前にしゃがんで、名前さんの手を握った。
何でそうしたかは自分でもわかんないけど、とにかく名前さんの不安を少しでも解消してあげたかったんだ。
「っ…」
そうしたら名前さんもオレの手をぎゅって握り返してきて、またうつむいて泣いてしまった。
オレの手の甲に何滴も名前さんの涙が落ちてきた。
「名前さん…」
「……」
「大丈夫ですよ……みんないます。」
「…!」
オレがそう言うと名前さんはバっと顔をあげた。驚いたような目でオレを見てから、うしろのみんなを1人ずつ見た。
多分みんなは笑いかけたり頷いたり、してくれてるんだと思う。名前さんの目からまた涙が流れていった。
「ありがとう、ございます…!」
「!」
名前さんは振り絞ったような声でそう言ったあと、オレにしがみついて泣き出した。
いつもは落ち着いててしっかりしてて…たまに抜けてるところもあるけど、すごく大人なのに今だけはすごく小さく見えた。
オレが守ってあげたい、って……思った。
子供をあやすように名前さんの頭を撫でてると、やがて名前さんの肩の力が抜けてきた。
「……」
名前さんはオレに体を預けたまま動かなくなった。
「…名前さん?」
「大丈夫だ。疲れて寝ちまったみてーだな。」
「……」
全然動かないから心配になったけど…よかった、寝ちゃっただけなんだ。
「足を怪我してるな……」
「ディーノ、名前を病院につれてってくれ。」
「ああ。…ありがとな、ツナ。」
「え?あ、はい…」
リボーンに言われて、ディーノさんがオレに寄りかかる名前さんの肩を優しく抱き寄せた。
「ありがとな」って……そんなお礼を言われること、オレはしてないのに。
「うわー、あの絆が黒コゲかよ。跡形も残ってねーじゃん。」
「なかなかやるヤツだったがな…。」
「!!」
いつの間にか灰のところにヴァリアーの人たちが立っていた。ヴァリアーの人たちって言っても、3人しかいないけど…。
もちろんザンザスもその中にいて、じっと灰が積もった地面を見ている。
「勝負は4対3で沢田氏側が勝ち越していますがリングは偶数なので引き続き争奪戦を行います。」
「明日はいよいよ争奪戦守護者対決最後のカード、雲の守護者の対決です。」
雲の守護者……ヒバリさんだ。相手はあの大きな人か……強そう…だけど、ヒバリさんなら負ける気がしないや。
「おいXANXUS、どーするんだ?次にヒバリが勝てばリングの数の上では5対3となり、すでにお前が大空のリングを手にいれているとはいえツナ達の勝利は決定するぞ。」
「え……?」
そーいえば……そうだよな…。大空のリングは取られちゃったけど、全体的な数では勝ってるんだ…!
「そん時は約束通り負けを認め、後継者としての全ての権利を放棄するんだろーな。」
「…あたりめーだ。ボンゴレの精神を尊重し、決闘の約束は守る。雲の対決でモスカが負けるようなことがあれば、全てをてめーらにくれてやる。」
「!!」
ヒバリさんが勝てば争奪戦が終わる…!なんか、少し希望が見えてきたぞ。
だってあのヒバリさん…最強のヒバリさんがディーノさんに指導…かどうかはわかんないけど、一緒に修行してるんだ。
「そいつは甘いぜ、コラ。」
「え。」
「あのXANXUSがここまで言い切るということは…あのモスカって奴が、絶対に勝つという確信があるからだ。」
「………それって…ヒバリさんが……」
負けるかもしれないってこと…?
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