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「それでは風のリング、名字絆VS.名字名前…バトル開始!!」












「…んじゃ、始めるか…名前。」
「……」


中庭に施された仕掛けを物珍しそうに見ていた絆が、開始の合図を聞くと名前に向き直って言った。名前はまっすぐ絆を見つめて頷く。
真剣…というか緊張している名前に対して、絆は平然としていて欠伸までする始末。その様子からはあまりやる気は伺えない。


「うしし、楽しみ。どのくらいやるんだろ。」
「兄妹だったのか…。」
「あ、それオレもビックリ。絆一言もそんなこと言わねーんだもん。ボスは知ってた?」
「……」


試合を見に来たベルとレヴィとザンザスのヴァリアー側ではこんな会話がされていた。
絆はヴァリアーの誰一人にも、名前と兄妹だなんてことは言ってなかったらしい。
ベルの問いに答えなかったが、ザンザスもそのことについては一切知らなかったのだ。


「そうだな……10分。10分で終わらすぞ…」


コートを脱いで、ネクタイを緩めながら絆が言った。


「サスペンスが見たい。」


強気な発言だと思ったら、理由はテレビが見たいから。なんともふざけているがこれが絆だ。


「私も……エンタが見たい。」


名前も名前で、実はお気に入りのお笑い番組を見たいから早く終わってほしいなんてことを考えていたらしい。
やはり兄妹と言おうか、趣向は違えども考えてることは同じだった。
2人とも早く終わらすことに依存はないということで、お互いに武器を手にとった。
名前は右ホルスターの白い針銃を。絆は腰のホルスターから普通の黒い銃を1丁。


ドンッ


「!」


先に撃ったのは絆の方だった。楽な姿勢で、何の緊張感もなく撃った。
名前はそれを冷静にかわし、針を絆に撃ち返す。


キンッキンッ


「な…!」
「懐かしーなー、それ。」


ミリ秒という単位の間隔で連射された針を、絆は全て銃のフォルムで弾いたりかわしたりして避けてみせた。
リボーンにも劣らない射撃の腕を見せた名前はもちろん、それを避けた絆の実力も相当なことがここまでで充分にわかる。
モニター越しにその様子を見ているツナたちは唖然としていた。


「名前が俺のおさがり使ってくれてたなんて…嬉しいねー。」
「!?」


絆のおさがり…ということを聞いて、名前が大きく目を見開いた。


「それ、俺が名前のために作ったんだぜ。」
「!」
「それで俺に撃たれたの…覚えてねーか?」
「…!!」


絆に言われて名前はそのときの光景を鮮明に思い出した。
確かにあのとき母が倒れて、そのうしろにいた兄はこの白い銃を自分に向けていた。
その後は眠っていて、その後アルビトロファミリーのアジトで目覚めたときにはもうその銃は隣にあったのだ。


「推測するに…そっちの黒いのは親父のか。」
「……そうよ。」


一方左ホルスターに入ってる黒い方の銃は父の形見で使っていた。
これはアルビトロファミリーに所属して数ヶ月したあと、事故現場となったパーティー会場を訪れたときに見つけたものだった。


「…その親父の銃で、何人殺した?」
「!!」


絆の鋭い目が名前を貫いた。


「俺は名前には殺しをしてほしくないって思って針銃を残したのに。兄ちゃんショックだぞー。」
「よくそんなことが…!」


普段は温厚な名前が珍しく、表情に怒りを露にした。絆に向かってまた何発も針銃を撃った。
しかし絆は薄く笑いながら難なくそれをかわしていく。


「そう怒んなよ。」
「ッ…!」


そして言葉と同じように軽々しく銃弾を撃つ。
名前は紙一重でそれを避けて、その銃弾は多数設置されているカメラの1つに当たった。
名前が絆に向けて撃った針もまた、絆が避けたり弾いたりしてあらゆるところのカメラに当たっていた。


「ああ!あっちも消えた!」
「どんどん消えてくぞ!」


フィールド外では、校舎の壁や屋上に設置されたモニターの画面がザーっとなって次々と消えていった。
2人の銃撃戦の凄まじさが嫌でも伝わってくる。ツナを始めとして獄寺や山本、ディーノ、犬や千種……誰もが息をのんで名前を見守っていた。


カチ…

ドォォオンッ


「!!」
「おーっと危ねー忘れてた!」


名前の針を避ける中で絆が仕掛けられたボタンを押してしまったようだ。
天井がチカチカ光ったと思った次の瞬間、名前と絆の間に雷が落ちた。
雷戦のときのものより規模は小さいが、当たれば確実に命の危機にさらされるのには変わりない。


「…ん?」


雷の閃光が走って絆が名前から目を離した一瞬の間に、名前が絆の後ろに回った。
こちらを振り向く絆の首元を狙ってトリガーにかけた人差し指に力を込める。
名前の針にはしびれ薬が塗ってある……これが当たれば勝負は決まったも同然だ。


ガッ


「あッ!」
「今のはいい動きだった。」


しかし、名前が引き金を引くよりも早く絆は振り向き際に回し蹴りの要領で名前の銃を蹴り飛ばした。
あまりにも速い身のこなしに名前は対応できずに、針銃は数メートル先に飛んでいってしまった。


「そ、そんな…!」
「名前さん…!」


名前は針銃を取りに行こうとするが、絆がそれを許すはずがない。
名前が動けないように名前の額に銃を向けた。


「…まだそっちがあるだろ?」
「…!」


「そっち」…と言って絆が目で促したのは、名前の左ホルスターの中のもの……父の形見の銃だ。
名前は左ホルスターに目を向けたがなかなか抜こうとはしなかった。
日本に来てからこっちの銃は使っていない。イタリアにいたときだって……最後に使ったのはアルビトロファミリーを抜けるときだった。
絆が言ったとおり、この銃で何人もの人間を殺したのは事実だ。だからこそ名前はこの銃を抜くのを恐れた。


「どーした?待っててやるから早く抜けよ。」
「……」


絆はからかうようにおどけて名前に向けた銃を下ろした。
名前は少し俯いていたが、やがて決心したかのように絆を見上げて黒い銃を抜いた。
ただし、それを持つのは右手だ。


「左手で撃てば1発で終わるんだろ?」
「!?」
「…お前のことについてはけっこー調べてあんだぜ。」
「っ!」
「お前はあの後、当時力をつけてきていたアルビトロファミリーに拾われ、スパイとして養成された。」
「……」
「エストラーネオの潜入捜査では研究施設を崩壊させて…」
「……」
「すぐ後に自分のファミリー…アルビトロファミリーも壊滅に追い込んだ。」
「……」


絆は話しながら名前に向けって銃を撃ち続け、名前はそれを聞きながら銃弾を避けていた。


「…訂正はあるか?」
「つッ…!」


少し体力が落ちてきたのだろうか。1つの弾丸が名前の足を掠めた。


「名前さん!!」
「リボーンさん!アイツが言ってることは本当なんスか!?」
「……間違っちゃいねーぞ。」
「な…あの名前さんが!?」


観客席からモニター越しに絆の話を聞いていたツナたちは、その情報に驚きを隠せなかった。
ツナたちの知っている名前は優しくて絶対に人を傷つけたりはしない。
そんな名前が1つのファミリーを壊滅に追い込んだなんて、簡単に信じられるはずがないのだ。
しかし名前もリボーンも否定はしないまま黙っている。


「ちげーびょん!!」
「「「「!」」」」


それを否定したのは、ツナたちとは離れた場所にいる犬だった。大声で叫んで言った。


「名前さんはオレらを守るために…!」
「犬、落ち着きなよ。」
「らって!!」


ツナたちのことは別にどーでもよくてむしろ嫌いに入るが、名前が悪く思われるのは耐えられなかったのだろう。
それに、誤解されて名前が嫌われたらきっと名前は悲しむと思ったのかもしれない。


「…ま、そーだろーな!」
「…そういうヤツっスからね。」
「…うん。」


詳しいことまでは言わなかったが、それだけでツナたちには充分通じたようだ。


「それにしても残るモニターは1つだぞ!極限に見にくい!」
「確かに…」
「おかしーな…」
「え…」


ザァァア


「今度は雨か…」
「名前さん!!」


リボーンの呟いたことが気になったが、急にモニターから雨の音が聞こえてきた。どちらかがボタンを押したのだろう。
そのモニターには絆の背中と、座り込んでいる名前の姿が映っている。壁際に追い詰められてしまった。
雨でよく聞こえないが、2人が会話をしているのはわかった。名前の表情が驚いたり、泣きそうになったりしているのが見える。


「やめて!!」


ドォンッ


やがて名前は何かが切れたかのように右手で持っていた銃を構えて、絆に発砲した。
その銃弾は絆を通り越して、最後のカメラのレンズに当たった。


ザーーーッ


観覧席からは何も見えなくなった。






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